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第16章 「奮起せよ、第2支局の防人乙女!」

 その一方、お猿の大将は怒り心頭だったの。

「おのれ、人類防衛機構の小娘共!よくもワシを虚仮にしてくれたな!だがイエティ毛髪分身を封じたからといって、このワシに勝ったと思うなよ!」

 ワナワナと身を震わせると、激しく胸板を叩き始めたんだ。

 焼夷弾で大火傷を負って皮膚がズル剥けなのに、ドラミングなんかやって痛くないのかな?

 ああして審判獣に改造されちゃうと、獣としての本能が前面に出てきてしまうんだろうね。

 カルト宗教を妄信して人の道を踏み外したばかりか、ああして人間性を失ってしまうだなんて、情けないったらありしゃしないよ。

「1人残らず地獄に叩き落としてやるわ!かかれ、我が子猿共よ!」

 敗北寸前に追い込まれた三下悪党の模範回答みたいな台詞を喚きながら、無支奇イエティが子猿怪人達に命令を下している。

 全く…往生際が悪いんだからウンザリしちゃうなぁ。

「キキーッ!キキッ!」

「ウキッ、ウキキッ!」

 同胞の大半を虐殺され、司令塔であるボス猿までもが満身創痍に成り果てたというのに、生き残りの子猿怪人達は雄叫びをあげながら、完全武装の特命機動隊江坂分隊に向かっていく。

 全くと言って良い程に恐怖を感じていないね。

 もしかしたら制御しやすいように知能を低く抑えられているのかも。

 あのクローン子猿達も、思えば哀れな存在だよね。


 だって、もう次の瞬間にはアサルトライフルの銃声が鳴り響き、猿達が事切れているんだから。

「ギッ…!」

「ウギッ、ギャアッ!」

 眉間を撃ち抜かれた2頭の猿が、穿たれた風穴から血を噴き出して倒れていったよ。

「1人残らず地獄に叩き落としてやる?バカね!それは私達の台詞よ!中学生と思って甘く見ないで!」

 三点バーストで猿怪人の顔面をザクロみたいに吹き飛ばしながら、東淀川瑞光(ひがしよどがわみずき)三曹が勇ましく啖呵を切っている。

 御子柴中学2年生の瑞光(みずき)ちゃんは、御年13歳。

 江坂分隊の最年少曹士だから、隊内では妹みたいに可愛がられているけど、子供扱いされて侮られるのは我慢ならない子なんだ。

「高校生だって、負けていられるもんですか!特命機動隊江坂分隊の強さと恐ろしさ、存分に思い知らせてあげますよ!」

 私と同じ県立御子柴高等学校1年A組に在籍している北加賀屋住江(きたかがやすみえ)一曹もまた、隊内最年少の三曹が見せた気迫に負けじとばかりに、猿達の喉笛を銃剣で果敢に突き刺しているよ。

 こんな頼れる勇敢な部下を同級生に持つ事が出来て、私も英里奈ちゃんもホントに幸福者だよね。

 だけど気合と闘志が充分なのは、何も中高生のティーン達に限った話じゃないんだよ。

「私大3回生の力と技、とくと御覧下さいませ!」

 私立鹿鳴館大学3回生にして、御年21歳の横堤(よこつづみ)ツバキ曹長。

 大学卒業後も人類防衛機構に留まる決意をされているだけあり、その気迫と闘志は目を見張る物があるね。

 そんな女子大生の曹長に負けず劣らず、この御二人の士気も物凄かったよ。

「ここは我々にお任せ下さい!生駒英里奈少佐、和歌浦マリナ少佐!」

「この猿共は、我々が御引き受け致します!まだまだ暴れ足りないのは、我々江坂分隊とて同じ事でありますので!」

 分隊長である江坂芳乃(えさかよしの)准尉に、その忠実な副官である天王寺ハルカ上級曹長。

 彼女達の勇猛な戦い振りもまた、洗練された機能美に満ちているね。

 アドオングレネードや銃剣を換装する手際の良さに、アサルトライフルを構える姿勢の美しさ。

 何処を取っても無駄がないね。

 流石は経験豊富なベテラン曹士の御姉様方だよ。

 私もこの御二方みたいに、若年者の模範となる頼もしいベテラン士官になりたい所だね。

「貴官の御言葉に甘えさせて頂きます、江坂芳乃准尉!英里、今回は私とツープラトンだ。連携攻撃で審判獣を仕留めるよ!」

「心得ました、マリナさん!」

 実弾式の大型拳銃とレーザーランス。

 まるで方向性の異なる兵器だけど、それを個人兵装として操る2人の防人乙女に関しては、素晴らしく息の合った連携だね。

 同期の桜は会心の友。

 同じ元化22年に正式配属された戦友達の絆は、どんな武器より強いんだよ。

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― 新着の感想 ―
[一言] もはや敵は戦力差が分からないくらい怒り心頭のようですね。 いやまぁカルト宗教はもはや麻薬ですから神経麻痺とか起きてもある意味納得かもですが。 しかしこれがね、酔っ払い並みに厄介でもある。
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