第12章 「唸れランス、吠えよライフル!」
かくして満身創痍の蛇型怪人に止めを刺すべく、私達二人は合体攻撃を発動させたんだ。
それにしても、今回は英里奈ちゃんと合体攻撃を発動させられる訳だから何かと安心だよ。
その場の状況や居合わせた人員によって臨機応変に連携の出来る私達だけど、やっぱり気心の知れ合った者同士の方が色々とやりやすいんだよね。
だからと言って、気を抜いて良い訳じゃないんだけど。
ビシッと気を引き締めて、審判獣をカッコ良く成敗してみせるよ!
「生駒英里奈少佐、推して参ります!」
初手を担当する英里奈ちゃんの気合いに呼応するかの如く、サッと薙ぎ払ったレーザーランスが唸りを上げる。
その威風堂々たる槍術の構えには、傍から見ている私も惚れ惚れとしちゃうね。
「真空三日月薙ぎ!」
そうして必殺の気合いと共に繰り出された、横薙ぎの一閃。
頭部を失った巴蛇ヒュドラの身体が、地球の重力から切り離されて宙を舞う。
黒光りする鉄鱗の胸板に三日月状の傷が浮かぶと、次の瞬間にはザックリと裂け、機械部品と内臓を空中から盛大にぶちまけ始めたんだ。
薙ぎ払う時の風圧で真空波を発生させ、敵を三日月状に引き裂く補助効果を持つ必殺技。
これこそ、英里奈ちゃんみたいに槍を個人兵装に選んだ子達が得意とする「真空三日月薙ぎ」の極意なんだよ。
かくして初手である英里奈ちゃんの真空三日月薙ぎは、これ以上は無い程に奇麗に決まった。
「おおっ!やるねえ、英里奈ちゃん!それでこそ、信長公に仕えて戦国の世を駆け抜けた生駒家宗公の末裔だよ!」
友人兼上官の見事な技の冴えに、私も思わず饒舌になっちゃうよ。
とはいえ、感心してばかりもいられない。
合体攻撃の二番手は、この私なのだからね。
見事に決まった初手の一撃を無駄にしないためにも、失敗は決して許されないよ。
「今です、千里さん!」
「はっ!承知しました、生駒英里奈少佐!レーザーライフル、撃ち方始め!」
そのザックリ裂けた三日月状の傷口に向けて、通常射撃モードに切り替えたレーザーライフルを構えた私がダメ押しの援護射撃をお見舞いしてやるんだ。
「そらそら、蜂の巣にしてやるんだから!」
引き金に力を加える度に、着弾した真紅の光線が傷口を次々と貫通させていく。
そうして敵の生体組織と内部メカを完膚なきまでに吹き飛ばしていくんだ。
何しろ相手は、黙示協議会アポカリプスの審判獣なのだからね。
倫理を無視した科学によってこの世に生み出された恐るべき生物兵器には、常識外れの生命力や底力が備わっていても不思議じゃないんだ。
‐幾ら何でも、そこまでやらなくて良いだろう。
そんな甘っちょろい認知バイアスで悪の組織の怪人に向かって行ったら、命が幾つあっても足りはしないよ。
だからこそ私達は、どんな相手でも全力で戦うんだ。
獅子搏兎の心掛けは、悪と戦う公安職の万国共通の理念だよ。
胸板の裂傷から機械部品と内臓を豪快にまき散らしながら、件の蛇型怪人は空中で派手に仰け反っている。
その姿は、無様にして無防備。
今こそ好機来たれりだよ!
「いよいよ仕上げですね、千里さん!」
幼くも上品な細面の美貌に凛々しい微笑を浮かべた英里奈ちゃんが、愛用のレーザーランスを上向きに構え直す。
その銅金に設けられたスイッチにソッと力を加えるや、レーザーランスの先端で赤く輝くエネルギースフィアから生えたメイン・エネルギーエッジが激しく発光し、それを取り囲む三本のサブ・エッジもまた、ガバッと口を開くように大きく展開したんだ。
これこそレーザーランスの射撃武装、「破壊光線砲」だよ。
「任せてよ、英里奈ちゃん!レーザーライフル・高出力モード!」
そして私も、レーザーライフルの引き金へかけた指に力を加えたんだ。
「破壊光線砲、照射!」
主が放った気品あるソプラノボイスへ答えるように、大きく展開したレーザーランスが唸りを上げた。
真紅の高出力レーザーに、白色の破壊光線。
私達の個人兵装から発射された二筋の必殺光線は、空中に吹き飛ばされた蛇型怪人を的確に捉え、その醜悪極まる身体を粉々に爆散させたんだ。
非の打ち所がない大勝利は、やっぱり気分が良いよね!
この調子で残りのアポカリプス連中も、十把一絡げに地獄に叩き落してやるよ!