第7章 「飛べよ千里、怒りのドリルスピン!」
とはいえ、ドローンを落とされたら作戦の段取りが狂っちゃうし、何より京花ちゃんとマリナちゃんが狙われているのを見過ごせないよ!
「2人を援護し、突破口を開きます!上牧みなせ曹長、サイドカーをホバースタイルに!」
「成程、あれを行われるのですね?承知しました、吹田千里准佐!」
いつでも立ち上がれる姿勢でレーザーライフルを構えた私に、サイドカーを操る上牧みなせ曹長は力強く応じてくれた。
飲み込みの早い部下を持って、私は幸福者だよ。
「チェンジ・ホバースタイル!」
コントロールパネルを手早く操作した上牧みなせ曹長の雄叫びに合わせて、武装サイドカーが変形を開始した。
路面を垂直に踏み締めていた車輪が路面と平行方向を向くように変形し、やがて武装サイドカーの車体はフワリと空中に浮き上がったんだ。
短時間なら、ホバークラフトのように空中を飛行する特殊機能。
これこそ、武装サイドカーに搭載された「ホバースタイル」だよ。
悪路や地雷源もお構い無しに爆走出来るゴキゲンな特殊機能なんだけど、簡易戦闘機のようにも運用出来るのも良い所だよね。
「今です、吹田千里准佐!」
私達を乗せた武装サイドカーの高度が、ちょうど暴走バスの屋根の辺りに達した所で、上牧みなせ曹長が私に向けて叫ぶように呼び掛けてくる。
「分かりました、上牧みなせ曹長!」
それに応じた私は、愛用のレーザーライフルを構えると、側車の中ですっくと立ち上がった。
「吹田千里准佐、突貫します!」
側車のシートをロイター板代わりに蹴り上げ、私は宙に舞った。
腹這いの姿勢でレーザーライフルを構えると、足首を基点にして時計回りに身体をギリギリと捻る。
「レーザーライフル・ドリルスピン!」
そうして回転速度を増していき、切りもみ回転で敵に真っ直ぐ突っ込んでいく荒技こそ、私が得意とする「レーザーライフル・ドリルスピン」だよ。
「な…何っ!?貴様!」
巴蛇ヒュドラが狼狽えるのも道理だよね。
ライフルを構えた姿勢の私が、高速で切りもみ回転をしながら真っ直ぐに突っ込んで来るんだもの。
とはいえ、敵も一筋縄ではいかなかったね。。
「面白い…叩き落としてくれる!」
すぐに気を取り直して、蛇型攻撃端末の4本を私の方に向けてきたんだ。
「コイツから逃げられるか?牙ミサイル!」
この蛇怪人、どうやらプラズマ光弾の一本槍じゃなかったみたいだね。
蛇型端末がガバッと口を開けるまでは同じだったけど、鋭利な牙がミサイルとして発射され、私目掛けて 真っ直ぐ突っ込んで来るんだから。
もっとも、そんなのは想定の範囲内だけど。
「ふん!そんな物、痛くも痒くもないよ~だっ!レーザーライフル・フルオートモード!」
審判獣への悪態を突きながら、私は個人兵装のモードを切り替え、高速切りもみ回転で突っ込んでいく。
目指すはミサイルの弾幕の真っ只中。
そしてその先に待つ、蛇型審判獣の首級だよ。
白い煙の糸を残しながら私目掛けて飛んでくる、無機質な小型ミサイルの大群。
正しく弾丸雨飛の真っ只中だね。
「スパイラル・シューティング!」
フルオートに切り替えたレーザーライフルの銃口から無数に放たれる、真紅のレーザー光線。
まるで赤い雨のように連続発射されるレーザー光線の弾幕が、こちらに向かってくるミサイルの群れと衝突し、次から次へと対消滅を繰り広げていくよ。
絶え間無く鳴り響く爆音と、途切れる事の無い爆風と爆煙。
「うおおおっ!」
レーザーライフルを構えた私は、その真っ只中を高速切りもみ回転を続けて突き進んでいく。
疾風となって、竜巻となって。
これこそ、私こと吹田千里准佐の得意技である所の、「スパイラル・シューティング」の真骨頂だよ。
「アッ、ギャアッ!グオオオオッ!」
数発の小さい爆発音をかき消すように戦場に響く、蛇型怪人の悲鳴。
そして煙を靡かせ宙を舞い、路面に投げ出されて砕けていく、黒焦げになった細長いメカパーツ。
見ると、敵怪人の背中に生えていた蛇型攻撃端末のうち数本は千切れ飛び、別の数本は沈黙して垂れ下がり、辛うじて機能しているのは肩に近い2本だけになっていたんだ。
他にも武器を隠し持っている可能性は高いけど、敵の戦力をかなり削ぎ落とせた事だけは確かなようだね。