第八十三幕
最近、後書きの存在をしりました。今まで、話の前に、無駄な前置きばかりしていて、すみませんでした! これからは、出来るだけ後書きに書きますのでよろしくお願いします!
では、本編へどうぞ。
姫の、言葉に反応するように、扉が動く。同じ空気だ。隙間から入り込む冷たい風が、対局を知らせる。何度も、感じたこの空気、なのに今はいつになく冷たい。しかし、姫の瞳には、一切の迷いが無い。
「どうされたのですか? 私に、費やせる時間は、もう無いのでは? ……お父様」
皇帝は、扉の前に立ち尽くすと、無言のまま部屋中を見渡した。目を凝らせば、背後に怯える様に控える皇后が見える。
やっぱり…… お母様が、一緒にいるということは、ミーシャが置いて来た本に気がついたということ。探していた本が見つかったことを、お母様から聞いてしまった。つまり、お父様には、もう時間がない。探し物が見つかった以上、もう宮殿には留まれない。後は、どうにかして、私が犯人であると断定しなくてはいけない……
皇帝は、終始無言のまま、一歩前へと踏み出す。
部屋の鍵を持っているのは、お母様を除けば私だけ。なら、あの部屋に入れるのは私しかいないのだから私が犯人となる。でも、それは出来ない。お父様? 貴方は、先ほど私を見てしまった。
姫は、余裕を持って笑みを浮かべた。
貴方は、お母様が部屋に戻るまでの間、私と立ち話をしてしまった。そう、貴方の"眼が""耳が""脳が""その全てが"私を犯人では無いと言っている。貴方自身が私の正義となっているのですよ、お父様?
皇帝は、静かに姫の側へと詰め寄る。
なら、次はどうしますか? 私が誰かに頼んで、あの本を戻させたことにしますか? 残念……
「お父様? 以前貸していただいた鍵でしたら、そこの引き出しに入っておりますので、どうぞ持っていって下さい。もちろん、今日は一度も外に持ち出しておりませんので、ご安心を。心配でしたら、ずっと部屋を見張っていたオルディボに聞いていただければ、今日は誰も部屋に入っていないと分かりますよ」
誰かに鍵を渡すことも出来ない。貴方の信頼するオルディボが、それを証明して下さいますよ、お父様? さあ、どうきますか?
「…………お父様? 用件を聞いてもよろしいでしょうか?」
「…………。」
何で、何も言わないの? 何も応えないの? まだ何かある? 考えなさい…… ここから、どうくるの……
「何か、言っていただけませんか。お父様……」
「…………。」
皇帝は、策が無いのか、ただ無言のまま姫と対峙する。
「ッ!? オルディボ!」
姫の声に反応した、男が室内に視線を向けた。
「姫様……」
「そこにいなさい。そこで、見ていなさい……」
男は、言われるがままに扉の前に立ち尽くした。何があるか分からない。お父様が、どう動くか分からない以上、目撃者を多くした方が良い。下手な真似は、させない。
「お父さまッ……」
えっ…… 静かに悪夢が通り過ぎる。皇帝は、姫に目もくれない。枕元に近づき、そっと膝をついた。
あれ…… そう言えば、なんでどっちも本を持ってないの? 誰が、本を……
「"リアナ……"」
悪夢が、ささやいた。枕元から、取り出した、一冊の本を手に……
「これが何か…… 分かっているのか……」
見覚えがある。もう何度も見た。そして、もう見るはずのなかったもの。
「…………分かりません」
姫は、声を震わせた。
「イザベラ。これが何か分かるか」
皇帝が、本を高らかに掲げる。
「はい…… 貴方が…… 探していた本です……」
「その通りだ。リアナ。なぜ、お前がこの本を持っている?」
何が、起きてるの………… ミーシャは、確かに上手くやったはず。その証拠に渡した鍵も作戦通り引き出しに返してある。ありえない……
「私じゃありません…… おそらく…… だ、誰かが…… 侵入して……」
「今日は、誰も部屋に入っていない。そうなのだろ、オルディボ?」
皇帝は、視線を移した。
「はい…… 確かに、鍵が私が持っていましたので、侵入者はまずいないかと…… しかし…… 本日はミーシャ様が、先程までこの部屋に滞在しておりました」
「そうか………… では、ミーシャが……」
「"違うッ!"」
場が静まり返る。姫は、思わず声を荒らげた。それだけは…… それだけは…… ダメ。ミーシャが捕まるわけには…… いかない。
姫は、ゆっくりと呼吸を整える。
そもそも、なんで本がここにあったの。誰かが侵入した? 秘密警察? いや、そんの出来るはずがない。そうでしょ? この部屋の鍵を持っているのはオルディボ貴方だけなのよ。
こちらをじっと見つめる男の姿が視界に入る。
そう…… だから…… 貴方しか………… 入れない…………
「姫様! これは、いったい……」
姫の瞳から光が消えた。
"おい…………"
姫は、瞬きも忘れ拳を握りしめる。
"オルディボ…………" "おまえ…………"
姫の肩に、そっと手が置かれた。
「リアナ…… ここまで、良く頑張った……」
「えっ…………」
姫は、言葉を詰まらせた。皇帝に、耳を疑う。頑張った…………
「敗着だ。我が娘よ…… ゆっくり休め……」
皇帝は、手を退けると、身体を起こす。姫を見下すように、じっと見つめた。
「お父様…………」
「良い休暇が取れた。ありがとう。リアナ…… 第二皇女」
ああ………… 私………… 負けたんだ…………
いよいよ、ストーリーも山場に突入しました! このまま、一章を書き切る所存ですので、評価やリアクションなどで応援していただけると励みになります! どうかよろしくお願いします!
では、また次回。




