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独裁者の姫 (一章完結!「表紙有り」)  作者: ジョンセンフン
一章 影の病

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第七十六幕

「何言ってるんですか?」


「なんだ、怒っとるのか? そんな気にせんでも、まだ成長期なのだから充分に伸び代はあるだろ。私なんて、すっかり伸び代が無くなってな……」


 ご令嬢は、そんな司書の胸元を睨む様に見つめた。


「そう。それは残念ですね。歳を取ると色々と大変でしょう。心中お察しします」


「ああ。全くだ! ……確か、貴殿と同じぐらいの歳から全く成長してなくてな。困ったものだ」


 司書は、自身の胸を強調する様に、ご令嬢の眼前に晒した。


「私と…… 同じ歳から…… ですか」

 


 "バシャーーン"

 


 突如、湯が勢いよく水飛沫を上げる。一仕事終えた様にため息を吐く、司書に姫は冷たい視線を向ける。


「それで? 二人してコソコソと何を話しとったんだ?」


「ただの世間話よ。大した事じゃないわ」


「大した事ではないか。世間話が出来る様になったのかリアナ皇女よ。昔は口を開けば、他人の悪口か自身の自慢話しか出来なかったものを。成長したのだな。これは、オルディボ殿も喜ぶぞ」


 司書は、全身を湯船に浸かりながら和かに応えた。


「は? 私、人の悪口なんて言ったこと無いんだけど。この国の第一皇女よ。そんな、はしたない事するわけないでしょ。馬鹿じゃないの? あら失礼。馬鹿だったわね」


「……オルディボ殿も悲しんどるぞ」


 司書が悲壮な表情を浮かべる。


「そう言えば、オルディボはどうしたの?」


「ああ、そやつなら今、廊下で他の兵士や使用人と一緒に待っとるぞ。ちなみに、激おこだ。何やら、部屋の鍵が閉まっとったとか、メイドが鍵を持ってなかったやらでな、正直よく分からんが、まあ頑張れリアナ皇女よ」


「ふーーん。まあ、何とかするわ」


 姫は、冷めた態度を見せた。今、部屋に入られるわけには行かないから最善の手ではあったと思う。ただ、ちょっと憂鬱かも……


「ところで、ちっこいの。貴殿は、いつまでここに滞在するんだ? まだ、帰らんのなら、今度は二人で湯船に浸からんか。姉として、親交を深めときたいからな!」


「遠慮しておきます。私も貴方と違って、あまり暇では無いので。それに、勝手に私の姉を名乗らないで頂けますか? 貴方に、私の姉が務まるわけないです。"冗談"は、その胸だけにしていただけませんか?」


 司書の視線が、ご令嬢の胸元に向く。 


「……何ッ!? では、貴殿のそれは"誠"か!?」

 


 "バシャッ"

 


 ご令嬢は、勢いよく湯船を上ると、背を向けたまま脱衣室へと歩き始めた。


「先に部屋に戻ってますね、お姉様。では、また後ほど……」


 そう言うと、ご令嬢は扉を閉め姿を隠した。


「そうだな。また、会おうぞ、ちっこいの!」


「……貴方じゃ無いわよ。私に言ったのよ」


「オッ? そうなのか? まったく…… 姉が二人もいるとややこしいな」


「貴方が勝手に、ややこしくしたんでしょ」


 姫の、言葉に司書はとぼけた様子を見せる。


「それじゃ。私も、そろそろ上るわね。後は、ご自由にどうぞ」


「まあ、待てリアナ皇女よ。二つだけ良いか?」


 司書は、脱衣室へ向かう姫を差し止める様に話した。


「何かしら?」


「ああ。まず一つ、リアナ皇女よ。何か隠しとることは無いか?」


 姫の足がピタリと止まる。隠してること…… なんで、そんなこと……


「もちろんあるわよ。でも、わざわざ貴方に話す様なことでも無いわ。それが、どうかしたのかしら?」


「いや〜 大した事じゃない。ただな、オルディボ殿を見とると偶に思うのだよ。リアナ皇女よ。あまり一人で考え込むことも無いぞ。私達は、いつでも貴殿の味方だ」


 司書は、いつになく優しく応えた。味方ね…… 『長らくご無沙汰しております。皇帝陛下……』。姫の脳裏に昨晩の出来事が蘇る。いったい、どっちの味方のつもりなのかしら……


「……そう。考えておくわ。それで、二つは何かしら? 寒いから、急いでくれる」


「ああ、すまんな。外にいる使用人か誰でも良いのだが、替えの服を持ってくる様伝えてくれんか? 持ってくるのを忘れてしまってな……」


「ふーーん」


 姫は、そう言うと、不敵な笑みを浮かべた。


「裸族ね…… ちょっと見てみたいかも…… それじゃ、またね。ララ姉……」


 姫は、そっと脱衣室の扉を閉めた。

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