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独裁者の姫 (一章完結!「表紙有り」)  作者: ジョンセンフン
一章 影の病

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第七十五幕

 声のトーンが下がる。


「ほら、仮に私が、お母様の隙をつけて本を元の部屋に戻せた場合を考えてみて。おそらくだけど、用を済ませたお母様が部屋に戻る。そして、本を見つけたお母様が、お父様に報告して一件落着…… とは行かないのよね。そうでしょ? この宮殿の各部屋は、その部屋の使用者と、お父様が一つづつ鍵を持っていると思うの。つまり、全ての部屋の鍵は二つ存在する。すると、目標の部屋を開けられるのは二人だけになる。お母様と、私だけ」


「そうですね…… でも、そのおかげで部屋に入れるんですよね。鍵を使って部屋に入る。そして、本を置く。そして、それを皇后陛下が見つける。そして……」


「"私が、犯人だと特定される" 本当に良く出来てるわ」


 姫は、思わず笑みを浮かべた。


「だって、そうでしょ? 部屋に入れるのは、お母様と私だけなの。その部屋に突然、本が現れるのよ? こんなの私が犯人だと言ってる様なもの。その現場を目撃する必要すらない。鍵が、私の手に渡った時点で、私は、その鍵が使えなくなった。これなら、お母様から鍵を奪い取る方がよっぽど簡単だったと思う」


「なるほど。その為にお姉様に鍵を……」


「そう。それに他の誰かに鍵を渡して罪をなすりつけようにも、何故だか誰もいない。宮殿内を自由に歩き回ってるのは私達だけだからね。これじゃ、どこに隠したって私がやった様に見えてしまうわ。でも……」


 姫は、徐にご令嬢に詰める。


「お父様は、一つ見落としてる。確かに良く出来たやり方だと思う。一つ間違えれば瞬く間に全てが終わる。流石は、お父様といったところかしら。でもね…… お父様は知らないのよ。私には、貴方がいるってことをね」


「ミーシャが……」


「そうよ。貴方が本を戻しに行くの。そして、貴方が本を戻しにいっている間、私は、お父様の眼前に居続ける。そう。お父様自身が私のアリバイになるようにね……」


 

 "バンッ"

 


 突如、脱衣室から物音が響いた。二人の視線が一点に向く。


「ミーシャ。今日は私の部屋で寝なさい。詳しい事は夜に話すわ。良い?」


 ご令嬢は、咄嗟に顔を縦に振った。


 おかしい…… お父様も、お母様も、こんな時間帯に来るはずが無いのに……


「何方かしら? ここは、貴族の方しか入室が許されていないはずよ。それに……」

 


 "バンッ"

 


 何の抵抗もなく勢いよく脱衣所への扉が開かれた。


「だ・か・ら…… "私が来たのだ!"」


 司書は、上機嫌に応えるとタオル一枚を身体に巻いたまま浴場へと足を踏み入れる。


「大公妃…………」


 ご令嬢は、僅かに眉を顰めると、ボソッと呟いた。


「そう言えば、貴方も一応貴族だったわね……」


「そういう、お主らは何だ。タオルも持たずに。裸族か?」


 姫は、咄嗟に、全身を隠すかの様に湯船に浸かった。


「何しに来たの? 貴方、風呂なんて入らないでしょ」


「……は、入るだろう。何を言っとるんだリアナ皇女よ。レディの嗜みだぞ?」


「レディ? どこにも、レディなんて見えないんだけど?」


 姫が、応えると司書は思い出した様に笑みを浮かべた。


「そうであったな。さあ、これでナイスレディの仲間入りというわけだ」


 司書は、身に付けていたタオルを、思いっ切り投げ捨てた。ナイスバディの間違いかしら。


「ところで何だが、どっちがリアナ皇女だ? 眼鏡が無いからな。良く見えんのだ」


「こっちよ。何か用かしら?」


「いや何でも無いぞ。つまり…… こっちが、ちっこいのか!」


 司書は、すぐさま、ご令嬢の側に近寄ると腰を低くした。焦点が合わないのか、マジマジと見つめながら、徐に視線を胸元に移した。


「何ですか。どうかされましたかララサ大公ひっ……」


「"ちっこいのちっこいの!" ちゃんと食事は摂っとるのか?」


「"ハッ?"」


 ご令嬢は、いつになく声を荒らげた。

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