第七十一幕
姫は、ご令嬢を横目に、ベットに腰を下ろした。
「どうしたの。座らないの?」
「いや…… すみません。失礼します」
ご令嬢が、姫の隣に腰掛けるも姫は、無言で扉を見つめた。
「あの…… お姉様? 何か、お話でもしませんか?」
「構わないわよ。と言うより、私も貴方に聞きたいことがあったのよね」
姫は、視線をご令嬢に向ける。
「なんですか?」
「貴方、いつまでここにいるつもりなの? 来てから、もう三日目よ。そろそろ帰っても良いんじゃないかなって思うのよね。まあ、貴方、昔から勝手に家を抜け出して来ることはあったけど。それとも、今回は、お父様に来るように言われた?」
「いえ…… もちろん私が来たかったから来たんですよ!」
ご令嬢は、はっきりと応えた。お父様に呼ばれたわけじゃないのね。なら……
「ミーシャ。貴方、もう帰りなさい。そっちの方が貴方のためよ。それに、そろそろご両親も心配してる頃だと思うわよ」
「そんなこと無いですよ。ミーシャのことを心配してくれる人なんて、誰もいませんから。それに、叔父様からも、しばらく宮殿にいるようにと言われてしまったので帰ろうにも、ここから出られません……」
ご令嬢は、悲壮感を露わに応える。なるほどね。流石に、手は打たれてるわけね。
「そう…… 残念。でも、安心して良いわよ。今は私がついてるから」
姫は、そっとご令嬢の手に自信の手を重ねた。
"トンッ トンッ"
突如、室内に緊張が走る。
「……どなたですか?」
尽かさず、ご令嬢が問いかける。
「ミーシャ? 急にごめんなさいね。ただ、リアナがここにいると聞いたので尋ねたのですが……」
「叔母様! えっと……」
ご令嬢は、慌てたようで姫の表情を伺う。
「はい、ここにおりますわ。お母様……」
「あら、良かった。ミーシャ? 少しお邪魔しても良いかしら?」
「はい。もちろんです。レナード、扉を開けなさい」
ご令嬢が応えると、扉がゆっくりと開く。
「あら、二人仲良くお話しかしら? 相変わらずで嬉しいわ」
皇后は、和かに話を進める。
「こんにちは、お母様。今日は、どうされたのですか? お母様から来られるなんて珍しいですね」
「あら、そうかしら? 別に、大したことじゃないですよ。リアナ。コレ貴方のですよね? 階段の辺りに落ちてましたよ。大事な物なんだから無くさないように気をつけなさいよ?」
皇后は、そう言うと手の平に一つのネックレスを乗せて見せた。よく見れば、それが普段姫が身につけている物だと分かる。早すぎる……
「本当ですね。お姉様、ネックレスを付けてませんね」
「あら、気づかなかったわ。ごめんなさいお母様。わざわざ持ってきていただいて」
「良いのよ。では、私は戻りますね。二人とも、仲良くするんですよ」
姫は、立ち上がると尽かさずネックレスを手に取る。そして、視線を落とした。
「あれ? お母様? 何か、落ちてますよ? 鍵……?」
姫は、突然、皇后の足元に手を伸ばす。その手には、一つの鍵が握られていた。
「え? 鍵?」
その様子を見るや否や、皇后は慌てた様子で、自身のポケットに手を伸ばす。一つの鍵を取り出すと、どこか安心したような表情を見せた。
「あら、ごめんなさい、お母様。よく見たら、前にお父様から預かった鍵でしたわ。最近、よく物を落とす癖があるみたいです。気をつけます」
「良かったわ…… 大事な物ですから、本当に気をつけるんですよリアナ? では、失礼するわね」
皇后は、そう言うと、部屋を後にした。これは、面倒なことになったわね……
「ミーシャ。貴方、お風呂は好きだったわよね?」
「いえ…… 特別好きというわけでは……」
「お風呂、入ったことあるわよね?」
「はい…… もちろんです…… どうして、そんな事を?」
姫は、不適な笑みを浮かべた。
「ちょっと、付き合いなさい」




