第六十五幕
最近、シリアスな話が多かったので緩和パートも挟んでるんですけど、どうですかね?
意見などあれば、ぜひお願いします!
「やはり、この眼鏡も度が合わなく成ってきたかの。そろそろ、もう少し度の強いレンズに変えねばならんな〜」
司書は、二人の先頭を歩き呟く。
「そう言えば、前から思ってたんだけど、貴方なんでそんなに目が悪いの? 貴方の家系で、他に眼鏡をかけてる人なんて見たこと無いんだけど? 別に本を沢山読んでる訳でもあるまいし……」
「姫様……」
すると、男が突然、姫の肩に手を置く。
「……あまり、他人の身体について尋ねるものではありませんよ。ララサにも、色々と事情があるのです。この件は、私にも耐えられません……」
男は、顔をしかめると眉間に手を当て表情を隠した。
「あら、少しデリカシーが無かったかしら? 嫌なら、答えてもらわなくてかまわないわよ。ごめんなさいね……」
「よいよい! そんなに大したことでもない。本当に、オルディボ殿も人が悪いの〜 いや…… 実はな……」
そう言うと、司書は足を止め思い出に浸る様に話を始めた。
「この眼鏡は、昔、亡くなった母から18の祝いにと誕生日にもらったモノでな。母曰く、本の読み過ぎで視力が落ちることもあるだろうからと。当時は、目も良くて必要にはならんと思っとたんだがな。どうにも、デザインが気に入ってな。着けてみれば良く似合ってて満足したものだ。しかし、いかんせん度が強くてな。着けとると周りがまったく見えんではないか! 酷く落ち込んだものだ…… しかし、諦めきれんかった私は、日々、人目を盗んでは眼鏡を着けトレーニングを続けた。すると、次第にピントが合うようになってな。それは、嬉しかったものだ。今となっては、この眼鏡が手放せなく成ってしまったほどだ! まったく…… 母には頭が上がらんわ!」
司書が、満足気に語り終えると男は、思わず後ろを向いた。
「…………。ちょっとまって。えっ? つまり、どういうこと? 視力が悪い訳でもないのに馬鹿みたいに度の強い眼鏡を着け続けてたら視力が落ちたと? やっぱり馬鹿じゃない。そりゃ、亡くなった、お母様に頭なんて上がんないでしょうよ。今すぐ、地べたにでも付けて来なさいよ!」
姫が、応えると隣の男が、シクシクと肩を揺らす。
「ねえオルディボ? 貴方まさか、こんな話で泣いてるんじゃ……」
「ク、クゥッ…… も、申し訳ありません…… どうしても…… こッ、この話だけは何度、聞いても…… ゎ、笑いが…… クゥッ…… 耐えられませんッ……」
男は、職務を全うするためか決して振り返ることはしなかった。しかし、男の瞳からは僅かに涙が浮かんでいた。
「何をそんなに、泣いとるんだオルディボ殿。そんなに大した話はしとらんだろ!」
「"ハイ…………"」
男は、涙ながらに応えた。司書は、我が子でも見つめる様な眼差しで優しい笑みを浮かべ歩みを進めた。
「本当、聞かなければ良かった。時間を無駄にしたわ。オルディボ、貴方、知ってたのなら早く教えなさいよ」
「……申し訳ありません。ただ、私の口から言っても信じてもらえないかと……」
「信じないわよ! こんな馬鹿な話」
「そうですか……」
男は、困った様子で、頭をかいた。




