第六十四幕
少し、遅れましたが明けましておめでとうございます! そろそろ本腰を入れて頑張りますので良かったら良いねや評価などで応援お願いします!
では、今年もよろしくお願いします!
静かに聖書のページをめくる、ご令嬢。
「そう言えば、レナード中将? 貴方、神は信じていないんでしたっけ?」
ベットで横になり、壁にもたれ掛かる男に視線を移す。
「どうでしょう…… 考えたことならあります。ただ、理解は出来ませんでした」
「そう……」
ご令嬢は、再びページをめくった。
「仮に…… 神がいるとするなら、それはどんな姿をしていると思う?」
「……」
中将は、しばらく考え込んだ末、口を開いた。
「少なくとも、人の形はしていないでしょう」
「……面白い考えをするのですねレナード中将。聖書には、神は人の形をしていたとあります。なぜ、そう思うのですか?」
中将は、帽子のつばを掴むと、その瞳を現した。
「私は、人が息絶えていく姿を見るのは心が痛みます。自分と同じ形をした人間が死ぬのに恐怖すら覚える。気が狂いそうになった日もありました。しかし、私に限ったことではないでしょう。そんな光景を好き好んで見ていられる人間などいない。だから、思うのです。そんな光景を…… 何十、何百、何千年と見ていられる神は、さぞかし美しい姿をしているのだと」
"バンッ"
ご令嬢は、聖書を閉じると、思わず笑みを浮かべた。
「なるほど…… その考えは無かったですね。にしても、ここまでしっかりと答えてくれる人は初めてですよ。大抵、宗教関連の話題は皆、怖くて避けるものですけどね。私は嬉しいですよレナード中将」
ご令嬢の言葉に、中将はまったく反応を見せない。
「ただ…… 神が、人の形をしていないというのは、少しいただけませんね。このことを教皇様が知ったらどうなるでしょうか?」
「さあ。知る余地が無いので何とも言えません」
ご令嬢が、不適な笑みを浮かべる。
「良いんですか? 私、これでも教皇様とは、仲が良いんですよ? …………もしも私が、教皇様に告げ口したら…… 貴方…… どうなるでしょうね?」
中将は、僅かに天井を見上げると、そのまま視線を降ろした。
「どうでしょう………… "試されてはいかがですか?"」
中将の言葉に、自然と静寂が過ぎる。
"トンッ トンッ"
ご令嬢は、咄嗟に扉へと視線を移す。
「どなたですか?」
「あ、あの…… アロッサです…… 用が済みましたのでミーシャ様の元へ戻りました。その…… 入ってもよろしいでしょうか?」
「そう…… 入ってかまわないですよ。ですよね、レナード中将?」
中将は、帽子のつばを軽く抑え肯定の意思を示した。尽かさず、部屋の中へと入るや否や一礼をするアロッサ。
「ねぇアロッサ。神って、死ぬと思う?」
「えっ? え、えっと…… 神様ですか? ……も、もちろん死にません! 神様が死ぬなんて聞いたこともありません!」
アロッサは、慌てた様子を見せる。
「ですよね。なら…… 何も、恐れることは無いですよね」
ご令嬢は、そう言うと髪の結びを全て解いた。




