第六十二幕
いよいよ、大晦日ですね。来年も、頑張って更新するのでよろしくお願いします。
ちなみに、まだ公言していませんでしたが、この作品は全てで四章構成になっています。今書いている一章も折り返し地点は過ぎたので最後まで読んでいただけると嬉しいです!
では、良いお年を!
「いえ…… いつもリアナが思っていることです。お気になさらず……」
皇帝は、僅かに男へ視線を向けると、そのまま階段を上り始めた。
「さあ、行くわよ。許可も貰えたらみたいだからね」
姫は、高らかと一本の鍵を見せつけた。
——
「ゲホッ…… ゲホッ……」
真っ暗な階段を下る途中、ランプを手に姫は思わず咳き込んだ。
「ねえ、いくらなんでも埃っぽくない? ちゃんと掃除してるの?」
「どうでしょう…… 聞く限りでは週に一度は清掃しているはすですが…… なにぶん、大事な書物が多くありますからね。湿気を伴う清掃が出来ないので、ある程度は仕方がないかと」
「そう…… ゲホッ…… ゲホッ…… んッ」
姫は、そっと背後を歩く男に手の平を差し出した。
「ん? ああ…… まったく。変わりませんね姫様は……」
男は、姫の意図を汲み取るように差し出された手の平を、そっと握る。暗闇に僅かな光だけが灯る中、姫がゆっくりと振り返った。
「……何してるの? ハンカチ。持ってるでしょ? 貸してよ」
姫が冷たい視線を向ける。
「あっ…… 失礼しました」
「あら、別に良いのよ? コレでも口は拭けるから」
姫が不的な笑みを浮かべると、男は代わりにハンカチを手渡した。
「ゲホッ…… 早いところ、ララサに鍵を渡して帰りましょ。あまり、ここにいると身体に異変が出そうだし……」
「何を言いますか姫様。今まで問題など一度もありませんでしたよ」
姫は、階段を降りきるとランプを男に手渡す。ポケットから一つの鍵を取り出し目の前に現れた扉の鍵穴に鍵を通す。
"ガチャ"
「おっ? 誰だぁ?」
扉を開けてすぐ、ランプを手にした人影が声を発しながらこちらへ近寄ってきた。
「おーー 良く見ればリアナ皇女にオルディボ殿ではないか。こんな所に何用だ?」
「「……」」
司書が、暗闇から姿を現すと、二人は、無言で視線を送った。
「どうした? 何かあったか?」
司書は、瞳を真っ赤に充血させた。
「……異変ね。引き返すわよ」
「待て待て。どうしたリアナ皇女よ」
司書は、慌てて姫の側へと詰め寄る。
「何あれ? 私、あんなのはなりたくないんだけど?」「あんなの!?」
「落ち着いてください姫様。心配はいりません。ララサは、昔から本をたくさん読むと目を充血させてしまう癖があるんです。正常な反応ですので問題は……」
「異常よッ! 正常に異常よッ! なんで、こんなのが司書をやってるの? 馬鹿じゃないの?」「こんなの!?」
司書は、申し訳なさそうに苦笑いを浮かべた。
「おいおいリアナ皇女よ。あまりそう言うでない。…………泣くぞ?」
「あら、かまわないわよ? 多少は瞳も潤うんじゃない?」
「…………リアナ皇女よ。赤い涙を見るのは初めてか?」
「そこまでだ!」
男は、突如、司書の頭に手を置くと姫に視線を向けた。
「姫様。あまり作業の邪魔になってはいけません。早く鍵をお渡し下さい」
姫は、ため息を吐くと、渋々ポケットから一つ鍵を取り出した。




