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独裁者の姫 (一章完結!「表紙有り」)  作者: ジョンセンフン
一章 影の病

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第五十八幕

「"わわゎあぁぁ…………"」


 姫は、ベットに寝そべりながら本のページを捲ると、思わず大きなあくびを見せた。


「ねぇ、ノワール大佐? 今は何時かしら?」


 姫は、視線を向けることなく、扉に向かって話しかけた。


「はい。間も無く十二時を回ります」


「……さっきも、同じこと言ってなかった?」


「同じことを聞かれましたので。同じことを応えました」


「そう…… また、同じこと言うけど誰か来たら、ちゃんと教えなさいよ?」


「はい……」


 大佐は、渋々応えた。


「さて……」


 姫は、本を閉じると、枕元に隠す。そのまま、仰向けになり瞳を閉じた。


 とりあえず、一通りは読めた。一つ分かったことは、今日の十二時に、お父様は宮殿に到着することになっている。これは、好都合だと思う。今までは、本の中のお父様と現実世界のお父様の行動に相違があった。でも、それもここまで…… ここから先、お父様の行動は、この本に縛られる。それに何ヶ月も前から決めていた予定を今日突然変えることは難しい。


 つまり。この本がある限り、お父様がどう動くかは手に取るように分かる…… これなら…… 勝てる…… 姫は、不適にも笑みを浮かべた。


 時間切れね……

 

 "カーーーン"

 

 宮殿内に昼の鐘が鳴り響く。姫は、ゆっくりと目を開いた。


「お帰りなさい…… お父様……」


 

 "トンッ トンッ"

 


「リアナ皇女……」


「分かってる…… 聞こえてたわよ」


「いえ…… その…… ミーシャ様が、こちらに……」


 姫は、身体を起こすと待っていたとばかりに、扉に視線を向ける。


「姫様? 本日も、どうされたのですか?」


 扉の向こうから一人の男が応えた。


「何のこと?」


「ミリアが言っておりましたよ。またも、姫様が朝から部屋を出ようともせず、誰も部屋に入れたがらないと」


 背後に控えていたミリアが軽く頷く。


「えっ…… お姉様…… 何か、お身体に問題でも……」


 ご令嬢は、何処か落ち着かない様子で話す。


「ご安心くださいミーシャ様。少なくとも、首より下に問題は無いかと……」


「そうですか…… 良かったです……」


「あら、まるで頭には問題があるみたいな言い方じゃない?」


 姫は、僅かに眉間に皺を寄せた。


「一度、中へ入ってもよろしいですか? 姫様……」


「別に、入るななんて言ってないけど? 入りたいなら勝手に入れば良いじゃ……」


 "ガチャ"

 

「失礼します。姫様……」


「お姉様!」


 扉が開くや否や、ご令嬢は、姫の元に詰め寄ると、強く抱きしめた。


「ねぇ、近いんだけど……」


「朝から、部屋を出ていないと聞いてミーシャ、とても心配でした……」


「あらそう…… 近いんだけど……」


 姫が、そう言うと、ご令嬢は、そっと身体を離した。姫と、ご令嬢がベットの上で話す間、二人のメイドが今かと言わんばかりに部屋へと侵入する。


「今のうちに、部屋の掃除を終わらせますよアロッサ!」


「は、はいっ……」


 アロッサは慌てた様子で、バケツやモップを部屋へと運んだ。


「それで? 随分と長かったみたいだけど。何してたの?」


 姫は、ご令嬢と同時に護衛にも視線を向けた。


「少し、来客の対応をしてました。突然のことだったのでミーシャも、少し戸惑いました……」


 姫は、思わずニヤリと笑みを浮かべた。


「それは、良かった…… ところでなんだけど、オルディボ? ちょっと外で待っててもらえる? 掃除の邪魔になるから」


「…………失礼します」


 姫が、そう言うと中将は颯爽と部屋を後にした。その様子を横目に護衛は、思わず、ため息を吐いた。


「……分かりました。終わり次第、お呼び下さい。……失礼します」


 護衛は、部屋を出ると、そっと扉を閉める。


「リアナ皇女達も十分、邪魔な位置にいるのでは…………」


「シッ! ベットは最後にやれば良いのです。今は床掃除に集中しなさいアロッサ」


 ミリアが、アロッサを叱責すると、アロッサは素早く持ち場に着いた。


「あの、お姉様? 礼拝には行かれましたか? ミーシャは、少し忙しくて、まだ礼拝も済んでいないのですが……」


「そうなの? なら、ここで済ませたら? 聖書なら、部屋に常備してあるわよ」


 姫は、そう言うと引き出しの中から一冊の本を取り出した。


「それが、お姉様が普段から愛読されている聖書ですか? 凄いですね! まるで、一度も使われていない新品の様に綺麗です!」


 ご令嬢は、瞳を輝かせた。


「ありがとう。どうせだから、ここで読んでいったら? 聞いててあげるから。それに、わざわざ礼拝堂に行くのも大変でしょ?」


「そうですね…… 分かりました!」


 ご令嬢は、そう言うと意気揚々と聖書のページをめくった。特に、何かを気にする様子もなく、ご令嬢は、聖書を音読する。

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