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独裁者の姫 (一章完結!「表紙有り」)  作者: ジョンセンフン
一章 影の病
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三幕

「姫様。少しは言葉を選んではいかがですか? 皇后様も姫様に会えるのを楽しみしておられたんですよ。あれでは皇后様が浮かばれません」


「知らないわよ。私は本当のことを言ってただけ。それで恥をかいたんなら私のせいじゃないわ。それに、お母様も別に私のことなんて気にしてない。私に会いに来たのも、たまたま時間があったからに過ぎない。今晩の準備のついでみたいなものよ」


 姫の顔から笑みは消えていた。部屋に戻ると、ミリヤとアロッサが扉の前で待機していた。その態度はどこか誇らしげに見える。どうやら、思った以上に仕事が無く暇をしているのを悟られないように、それっぽく私の帰りを待っているんだと思う。アロッサは、どこか不安そうにモジモジしていた。


「お戻りになりましたか、リアナ様。皇后様とは、お話し出来ましたか? ちょうど私達も仕事を終えたところです。そうですよねアロッサ?」


「は、はい。今終わったところです……」


 目は口ほどに物を言うとは確かなようだ。アロッサは目をこれでもかとばかりに泳がせていた。と言っても二人が暇をするのも無理はない。二人は私、専属のレディーズメイドであるから私が何かしらのアクションを起こさない限り出来る仕事は少ない。


「では、さっそく私達も移動しましょう。もう時期、ペテック公爵が到着なさいます」


「ちょっと待ちなさいミリヤ。なんでペテック公爵が来ているの? それになんで私が出迎えなくちゃいけないのよ。どうなってるのよオルディボ!」


「何を言っているんですか姫様。昨日からずっと言ってましたよ。明日、ペテック公爵が見合いに来られるから覚悟しておくようにと。今朝も言ったはずですよ? まさか聞いてなかったんですか」


 聞いていたと言えば嘘になるが、聞いていなかったわけではない。聞きたくなかっただけだと思う。ペテック公爵に対して私はあまり良い印象を持っていない。


「先月も来てなかったかしら? それに私、丁重にお断りしたはずだと思うんだけど。何でまた来てるの? 早く追い返しなさいよ」


「と言われてましても、ペテック公爵は元はと言えば隣国アルト王国の王子でした。それを戦争という形ではなく対話という形で併合し、爵位を与えています。あまり刺激しては反乱を起こされかねませんからね」


「そう。じゃ良いわよ。結婚するわ。多少、お腹が出てて頭の毛が少なくても、この際、気にしない。だから、今晩の社交会はキャンセルしておいて!」


「リアナ様、そんなに早まらないで下さい」


「別に早まってなんてないわよ。ミリヤ、あなた私が何歳か知ってる? 17よ! いつになったら結婚できるの? もう、社交会に行くのだって恥ずかしい。数年前は同い年の子達と、いつ結婚出来きるかな、なんて話してたけど、もう同い年の子なんて誰もいないわよ。みんな結婚していったわよ。本当に良い見せ物ね」


 姫はいつになく苛立った態度を見せた。と言っても別に私は結婚したいわけではない。単に、この歳になってもまだ結婚できていない自分が恥ずかしいだけだ。どこの貴族の娘も14にもなれば婚約者が大体いるものだ。


「それで、お父様は何て言ってたの」


「はい。今回も優しくお断りするように、とのことです」


「そう。分かったわよ。お父様の命令なら仕方ないわね」


 姫は体を伸ばし僅かな運動をして身体を慣らした。


「今回は上手くいくかしら。懲りずに、また来るぐら

いだから次はどう断ろうかしら」


「そんな心配なさらなくても大丈夫ですよ。大抵の男は姫様と数分話しただけで嫌気が差して帰りますから。姫様はいつも通り自然体でいれば良いんです」


「あら、言うじゃないオルディボ。でも、良いわよ。私、優しいから今のは聞かなかったことにしてあげる。感謝しなさい」


「感謝申し上げます」


 護衛はわざとらしく頭を下げた。ミリヤとアロッサはどこか慌てた様子で早足に案内を進める。どうにも、予定より早くペテック公爵が宮殿に向かってきているそうだ。おかげで宮廷内が、いつも以上に騒ついている。まだ、早朝だというのに迷惑な話だ。


「一体いつになったら、お父様は結婚を認めて下さるのかしら。いっそのこと、白馬に乗った王子様が私を連れ去ってくれれば良いのに」


「でしたら姫様。一つ朗報があります。どうやら聞くところによるとペテック公爵が白馬を乗り回し、こちらに向かってきているそうです。もしかしたら、今日、ペテック公爵が本当に姫様を連れ去ってくれるかもしれませんね」


 その瞬間、姫の足が止まる。特別何かあるわけでもなかったが、ペテック公爵の白馬姿が脳裏をよぎり寒気がした。オルディボの、どこか楽しそうな表情にも腹が立つ。


「アロッサ。今すぐにペンと紙を用意しなさい。それとミリヤ、貴方お母様が今どこにいるか知っているわよね?」


「もちろんですリアナ様」


 護衛はやれやれと言わんばかりに頭を抱えた。無駄に長い付き合いだけあって理解が早い。未だ一人理解が追いつかないアロッサにミリヤが罵声を浴びせるように「急ぎなさい」と指示を出す。


「勅令よ」


 姫は不敵な笑みを見せた。

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