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独裁者の姫 (一章完結!「表紙有り」)  作者: ジョンセンフン
一章 影の病
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二十五幕

久しぶりになりました!

また、頑張って投稿しますので良かったら読んでいって下さいね〜

「繰り返しになりますが、いくらリアナ皇女の頼みとあっても、ここを通すことは……」


「ねぇ、レナード中将。今日は、珍しく一人なのね」


 その瞬間、中将は眉を顰めた。


「気まぐれ? それとも、お父様に一人でここを守るように、なんて言われたのかしら?」


「姫様、我々が関わるようなことではありません。とにかく今は一刻も早く教皇聖下の下へ向かいましょう」


 男は姫を急かすように話を遮る。そんな男の声を右から左に聞き流す姫。その場に不穏な空気が流れる。


もうすぐ…… もうすぐ……


「あの、リアナ皇女? 私がこう言うのもおかしな話ですが、オルディボ閣下の言う通り教皇聖下の見送りに行ってはいかがでしょう? 皇帝陛下の顔を立てるためにも……」


「何? 私に命令してるの?」


 姫は堂々と応える。途端に中将の表情が曇る。


「いえ…… 決して、そのようなことは……」


「姫様、もう良いでしょう。さあ、早く行きましょう。まだ、間に合います」


「待って! まだ、話の途中……」

 


 "カーーーーン"

 


 その瞬間、甲高い音が宮殿内に鳴り響く。十二時を伝える鐘の音。それを合図にするかのように姫は辺りを見回す。そして、中将に視線を向ける。


 生きてる……


「貴方…… 本当にレナード中将よね……」


「ええ…… もちろんです。それが、どうかしましたか?」


 中将は当然の疑問を投げかける。


「レナード閣下!」


 その時、階段の下から一人の男が聞こえた。姿を見せた男は、レナード中将と同様、帝国陸軍の風貌をしている。


「交代の時間か…… 申し訳わりませんリアナ皇女。私は一度、持ち場を変えなければならないので、ここで失礼します」


 そう言い残し、持ち場を後にしようとしたレナード中将を、先の男が呼び止める。すると、男はレナード中将の耳元で何かをヒソヒソと話し始めた。


「何………… まさか…………」 


「レナード中将。何かあったのか?」


 護衛の男が中将に詰め寄る。


「…………地下一階、西ブロックを担当しているベルム上等兵が交代の時間になっても戻って来ていないようです。詳細は不明ですが、この件に関しては一度我々で捜査いたしますので、ご心配無く。それと……」


 中将は護衛の男に視線を向けると、不敵な笑みを浮かべた。


「教皇聖下はすでに帰られたようです」


 そう言い残すと、中将は下に集まってきた他の兵士と合流する。一人の兵士だけを残して、その場を後にした。護衛の男は、それを聞くや否や、壁に手を当て何故か悔しそうな表情を見せた。


「あら、どうしたのオルディボ。そんな暗い顔して」


「なんでも、ないですよ。ハァ…… 分かんないか……」


 そんな、男を他所に姫は中将の姿を最後まで目で追った。レナード中将の周りには四人の兵士がいる、この状況で中将を暗殺出来るはずがない。


 つまり……


「それで、これからどうするおつもりですか? まだ、昼食まで時間もありますし、他にやることも無いでしょう。どうします? チェスでもやりますか?」


「そうね……」


 姫は徐に足を動かした。


「悪いんだけど、ミリア達を探してきてくれないかしら? さっき走ったせいで汗かいちゃったから新しい服に着替えたいの。大丈夫。今度はちゃんと部屋で良い子にしていてあげるから安心しなさい」


 姫は、偉そうな態度で応えた。しかし、男は何故か微動だにしない。


「何よ。早く行きなさいよ」


「…………」


「ねぇ、聞いてるんだけど?」


「姫様が部屋に入られるまで待ってるんですよ」


 そう言うと、男は見せびらかすように一つの鍵を顔の前に持ってきた。よく見れば、それは紛れもなく姫の部屋の鍵だった。


「"チッ…………" 分かったわよ」


 姫は部屋の扉を開けると、見慣れた部屋に戻る。姫は男の方を振り返り一言。


「そんなに私の事が信用出来ないないなら鍵でも何でもかければ良いわ。でも、一つ言っとくけど、私は貴方が思ってるほど……」


 

 "ガチャッ" えっ…………

 


「それじゃ、また後で」


 男は、それだけ言い残すと足音を遠ざけた。本当に何処へ行ってしまったようだ。嘘でしょ…… 本当に締めたりする? 一回、あの男には私の正式名称を詠唱させた方が良いと思う。


「ったく………… これじゃ、何処にも行けないじゃない。まあ、でもこれで他の人が急に私の部屋に入ってきたりする心配も無くなったわけだし、好意的に捉えても良いのかしら?」


 姫は、すぐさま暖炉の側へ近寄る。火の気のない暖炉に腕を伸ばし、何かを探るような仕草を見せる姫。


「本来ならレナードは今この時間には秘密警察とかいう組織に殺されていた。でも、それは今日未遂に終わった。私が、この目で見たから間違い無いと思う。お父様滞在の件といい、レナードの件といい、私がこの本を手にしてから明らかに前には無かったズレが生じてる。なら……」


 姫は、翌日のページに目をやる。

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