第二十一戦
無数の渡り鳥が頭上を飛び抜ける。雲一つ無い快晴が空一杯に広がる。何か特別な出来事でもあるのだろうか。いや、そもそもこの国に快晴でなかった日など、片手で数えるほどしかなかった。まるで、この国の安泰を示している様だ。
青年は、宮殿の物陰に隠れる様に庭に座り込む。まるで、そこが自分の特等席であるかの様に何食わぬ顔で読書を嗜む。
「また、こんな所で…… 何してるんですか?」
ふと、青年の耳に若い女性の声が鳴り響いた。男が僅かに視線を向けると、そこにはメイド服を見に纏う自分と同じ16才ほどの若い女が、どこか呆れた様子でこちらを見つめていた。
「読書じゃなかったら何だと思う?」
青年の言葉にメイドは溜め息を吐くと男の顔を見下ろすように応えた。
「ハァ………… レナード少尉? 貴方の仕事は宮殿の警備ではなかったんじゃないですか? どうしてこんな所で呑気に寝ているのでしょうか?」
「お前は寝ながら本が読めるのか?」
少尉の言葉にメイドは、本を取り上げると視線を少尉に合わせる様に腰を下ろした。
「……レナード? 何かあったの? 話くらいは聞いてあげますよ?」
「休憩中だ。勝手な憶測で俺を哀れむな。休憩の時間に何をしようが俺の勝手だろ。それより、本を返してくれ。それなりにいい所だったんだ」
「ふーーん」
そう言うとメイドは、持っていた本のページをじっと眺めた。
「何ですか、この本…… ハァ…… なんで、男の人って皆んな、こう言う英雄談とか戦争ものとかが好きなのかしら。もっと楽しいものを読めば良いのに……」
「楽しいだろ。ちょうど今から処刑のシーンなんだ。返してくれ」
「そうだ! ねぇレナード? 返してあげる代わりに少し手伝ってくれない? ちょっと忙しくて人手が欲しかったんですよね」
「お前は休憩の意味を知らないのか?」
「残念。メイドは、二十四時間勤務ですから休憩の意味を知らないんです。それに、今は"女帝陛下"もいらしてるんですよ? もう少し気を引き締めてはいかがですか? それに……」
「ん?」
少し含みのある言い方に少尉は眉を顰めた。
「サリエフ皇太子の新しい護衛が着任したみたいですよ?」
少尉は、体を起こすと服に付いた土を僅かに払う。そして、互いに何かを察した様に視線を向け合う二人。僅かな笑みが溢れる。
「そうか…… サリエフ皇太子の新しい護衛か…… 仕方ないな…… ミリア?」
二人は完全に理解した。今、何をすべきか……
「そうですね…… 行きますか……」
「「"ひやかしに!"」」
——
正門前、二人の若い男女は陰から、その様子を伺っていた。
「ミリア。そう言えば、お前なんで、こんな所にいたんだ? 仕事は?」
「逃げました」
突然のカミングアウト少尉は目を見開いた?
「逃げた? どうして?」
「仕方ないじゃないですか。あのビアンカ、私にばっかガミガミとうるさかったんですから。一発蹴りを入れてから逃げたくもなりますよ」
「さっき良く俺に、あんな事言えたな。メイドは二十四時間勤務じゃなかったのか? それとも暴力はメイドの職務の一環なのか?」
「たしなみです!」
ミリアは、臆することを知らず堂々と言ってみせた。
「それで? どうやって逃げ出したんだ? 正門からは簡単には出られないはずだ」
「飛び降りました。二階の窓から」
「…………怪我は?」
「ご心配なく、慣れてますから!」
「…………怪我に慣れてるのか?」
「飛び降りる事にだよ。ここの宮殿、案外簡単に窓から出れますからね」
「そうか………… 上官に脱走者一名と報告しておこう。さてとだ……」
二人の見つめる先には大きな正門と、それを守る二人の兵士の姿があった。
「休憩中の俺が、中へ入れないのは言わずもがな、職務怠慢中のお前が見つかるのも少し面倒だな……」
「そうですね…… 困りましたね。これじゃ中へ入れない」
少尉の言葉に感心する素振りを見せるミリアに、少尉は冷ややかな視線を送った。
「さて………… どうするべきか、困ったな…………」
「"そうだね〜 困ったね〜"」
「「…………」」
突如、二人の背後から聞こえた一人の女性の声。そっと、二人の頭上に置かれた柔らかい手のひらの感触。二人は、言葉を失った。二人は、そっと背後に視線を向けた。
「それで〜 君達? 名前と所属は、応えられるかな?」
それは、この帝国の象徴そのもの。力の権化。長い銀色の髪をなびかせ、辺り一体に存在を周知させる。そのおっとりとした顔つきからは、その本心すら見えてこない。
「女帝陛下…………」
改めましてジョンセンフンです! いつも、ご愛読ありがとうございます。少し、お話しなのですが先日、この作品に誤字報告がありました。初めての誤字報告だったのでかなり驚きました。あらためて自分の作品を見直すと誤字酷いですねw そこで、少しづつ直していこうかな? と思いました。もしかしたら、文章や展開が変わる場面もあるかもしれませんが、大きく変わる様な事はありませんのでご安心を。
それと、いままで評価は全て10ptばかりだったのですが先日、初めて2ptをいただきました… 少し悲しく思う反面、コレから一層頑張らなくてはとやる気にもなりました! もしかしたら誤字報告して下さった方と同じ方かもしれませんが、これも一評価。真摯に受け止めていきたいです! 新しく描いている挿絵もあるので、それでもご愛読いただける様でしたら、これからも『独裁者の姫』をよろしくお願いします!
長くなりましたが、貯めている分のストーリーもありますし、まだまだ辞める予定はありませんのでご安心ください。それでは、皆様、また次回で!




