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独裁者の姫 (一章完結!「表紙有り」)  作者: ジョンセンフン
二章 悪魔祓い

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122/135

第十六戦

【お知らせ】

 夏休み期間は投稿時間を十二時半にしたいと思います。戻す時はまた連絡します!

 ——

「部屋には、戻らないのか? ミリア」


 姫の部屋の前で待機していたミリアに、突如、誰かが話しかける。そっと視線だけを向けると、ミリアは興味無さげに瞳を閉じる。


「貴殿こそ、なぜこんな所におられるのですか? レナード中将」


「お前と同じだ……」


 そう言うと、中将はミリアの隣の壁に背を付けた。


「護衛だ。皇族の方々のな……」


「何の話でしょうか。私が、聞いたのは、なぜ貴方が、まだ、この宮殿の中にいるのか、ですよ?」


「それは、もう何度も聞かれた。……リアナ皇女には悪いことをした。取り返しのつかない事をだ。だから、せめて私が、ここにいる限りは、この命に賭けてリアナ皇女を、お守りする。そう決めた」


「貴方に、そんな忠誠心があったなんて意外でした。しかし、それほど心配せずとも、この宮殿は貴方が思っているよりも遥かに安全です。護衛でしたら、私一人で十分です」

 


 "カチャッ"

 


 ミリアは、動揺する素振り一つ見せず、中将の手元を見つめた。


「なんのつもりですか?」


「護衛なら、銃が必要だろう。私には、もう必要無くなる。お前が、持っておくと良い。受け取れ」


 そう言うと、中将は、拳銃のグリップ部分をミリアへ向け差し出した。その時、両者の間に僅かな静寂が流れた。


「どうした? 受け取れ」


「……残念ながら。私には、そういった類のものを扱うスキルがありません。他の者に預けてあげて下さい」


「そうか…… 意外だな。お前なら、扱えると思っていた」


「どういう意味ですか?」


 中将の、言葉に、ミリアは思わず食いついた。


「銃の扱いも知らない人間が、自ら護衛を名乗るとは、考えもしなかった」


 中将は、持っていた拳銃を腰に戻すと腕を組み、ミリアに視線を送る。


 ——

 日が差し込んでいるのが良く分かる。昨日は、あんなに曇っていた空も、一晩空ければ灯りが指す。姫が、目を擦りながら横を向くと、皇后が姫の身体に腕を回したまま、じっと目を閉じていた。もう朝か…………

 


「静かね……」


 

 姫は、つぶやいた。少し早起きしず来たのか、ミリアが起こしに来る気配もない。もう少し、寝てようかしら。お母様も、まだ寝てるみたいだし……

 そう考えると、姫は、皇后の手を優しく摩るように触れた。


 

「あれ……?」

 


 冷たい? 毛布もかけずに寝てたからかしら? 寒かったかな? 私も、少し身体が震えてきた。寒いからかな? 寒かったかな?

 


「お母様? 朝ですよ? 今日は、朝から忙しいのではなかったですか? ほら、朝ですよ?」

 


 呼吸が乱れる。あれ? 心臓が、騒がしい。まだ、起きたばかりなのに。姫は、皇后の身体を、そっと優しく摩った。

 


「お母様? 顔色が悪いですよ? それに、身体も冷たい…… 早く起きないと風邪を…… ひいて…… しま…………」

 


 あれ? 苦しい? 呼吸が難しい。なんで、視界が歪んで見える。あれ? 息ってどうするんだっけ? 苦しい…… 身体が震える。お母様、早く…… 起きてよ………… 姫は、皇后の胸に、そっと手を当てた。


 

「……………………」



 静寂が、姫の手元を伝って、身体に渡る。日差しが、皇后の顔を照らす時、そこにはかつての温もりは、既に消えていた。

 


「ハァ………… ハァ………… ハァ……ッ……ッ……」

 


 姫は、ゆっくりと身体を起こすと、床に足をつけた。


 

 " バタンッ "

 


 思わず、床に身体を打ちつける。 


 しかし、すぐに立ち上がると、震える手で、引き出しの中を漁った。鼓動が、ますます強くなる。落ち着いて…… 落ち着いて…… 落ち着きなさいリアナ…… 


 姫は、引き出しから小さな拳銃らしき物を取り出すと、引き出しの前に座り込んだ。そのままの姿勢で銃口を天井へ向けた。

 


 " バンッッ…………! "

 


 静寂に包まれた宮殿内に、空砲の銃声が鳴り響く。

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