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3 じゃあ、レベルを上げよう!

来ていただいてありがとうございます。



高い塔が立っている。海の真ん中に。頂上には様々な花が咲き誇る庭園。モーネ王国の第二王女アミーリアは途方に暮れていた。


(いつもこの場所で大好きな人と話をしていたの。今もあの方はこの場所にいる。優しく笑ってこちらを見てくれている。でも、わかっている。これは夢なの。どうしたらこの夢が覚めるの?わたくしはなんでグズグズしていたの?ノエルに協力してもらって問題を先延ばしにして……。自分に都合のいい幸せな夢ばかり見て……。早く目を覚まして、気持ちを伝えなきゃいけないのに……。あの方の婚約が決まってしまう前に……)







「え?フランシス兄上に縁談?」

サフィーリエ公爵家では、食事はなるべく家族皆でとる習慣になっていた。この日は留学中の次兄フランシスを除いた家族全員が夕食の食卓に揃った。ノエルは父であるサフィーリエ公爵の言葉に驚いた。

「ああ、こちらから打診したのだが、先方のネージュ伯爵が是非にと乗り気でな。彼の一人娘は少し病弱で、治癒魔術師のフランシスにぜひ婿入りをとのことだ」

「余計なことを」

ノエルは小声で毒づいた。

「?ノエル何か言った?」

長兄アルフレットの問いかけにノエルは慌てて笑顔を取り繕う。

「いえ、急な話だと……」

「そうだね、だから本人の意向も聞きたいから、フランシスには留学先から一時帰国してもらうことになったよ」


(まずいな……)

次兄のフランシスは優しい。というか気弱だ。押されてしまえば、婚約を受け入れてしまうことになるだろう。そうなるとノエルにとっては面倒なことになる。父や長兄の話題が領地についてに移った。しかしその話も母や妹達の話も料理の味もほとんどノエルの頭には入ってこなかった。だから食事の後、父から呼び止められた時も気づかずに部屋に戻ろうとしてしまった。

「ノエル、後で私の書斎に来なさい」

「ノエル?聞いてる?」

アルフレットの言葉が無ければ、危うく父の言葉を無視してしまうところだった。

「失礼しました。では後ほど伺います」



書斎では父とアルフレットがすでにノエルを待っていた。二人の深刻そうな表情にノエルは思わず身構えた。

「これはまだ極秘事項なのだが、アミーリア王女殿下が病に倒れられた」

父から驚きの言葉がもたらされた。

「っ病?!」

「しかも原因不明の病だそうだ。今、国中の魔術師と魔術薬が集められてるそうだよ」

アルフレットからも説明が加わる。

「ノエルは王女殿下の婚約者だから……」

「婚約者候補の一人です」

「……婚約者候補だから、教えておくね」

ノエルはアミーリアとの婚約を受け入れてはいなかったが、彼女はノエルにとって大事な従姉であり、幼馴染でもあったのでとても心配になった。

「それでその病とは、どのような症状なのですか?父上」

「症状は特に無いそうなのだが、とにかく目を覚まさなくなってしまわれたとのことだ」

「!」




ノエルが自室へ戻るとテーブルではましろがちょこんと座っていた。

「あ、ノエル君お帰りなさい。ご飯ごちそうさまでした。でもあの私、多分ご飯食べなくても平気みたいなんですけど……」

そう言う割には、ノエルが先程持ってきた夕食の皿は空になっていた。ノエルは敢えてそのことには触れず急いで言った。

「ましろ、今から王宮へ行くぞ」

「え?今からですか?」

「夢魔の心当たりがある」

「?」

「この国の第二王女殿下が病で倒れた。何をしても目覚めないそうだ」

「あ、それって……!」

「そう、夢魔に憑りつかれている可能性がある」


「王女殿下のお名前はアミーリア様。僕の従姉で、幼馴染なんだ。そして僕は彼女の婚約者候補だ」

「婚約者?すごいですね!王女様が婚約者なんて!」

「婚約者候補だ!」

「候補なんですか??」

(家柄的にそれってほぼ決まりなんじゃないのかな?)

ましろは首を傾げた。

「僕は断ってないだけで、受け入れてはいない」

ノエルは心なしか不機嫌だ。ましろはどうしたんだろうと不思議に思ったが、魔法書を取り出し、王宮までの道を開こうと思った。しかし、地図の王宮の場所には大きくバツ印。入ることが出来ないようだった。

「あ、ダメです……ごめんなさい」

ましろは耳を垂れた。




「どうして入れない?クリスティーナ嬢の時は夢の中に入れただろう?」

ノエルはましろに問いかける。

「え、えっとですね……、王宮にはこの異変の大元の存在がいます。王宮の位置にいるのは夢魔の王です。この国に自分の分身を解き放って、皆さんの夢を食べさせエネルギーを得ています。今の私達では夢魔の王の力に対抗できません。少しづつ欠片を集めて夢魔の王の力をそいでいこう、って、この魔法書、マニュアルっていうか攻略本みたい……便利だけど……」

ましろは魔法書を読みながら眉を顰めた。


「どうしてそんな厄介なことに……。仕方ない、今から夢魔退治に行く。一刻も早く彼女を解放する!」

(わあ、愛の力ってやつかな?素敵!)

ましろは王女とのことをノエルの照れ隠しと判断したようだった。

「はいっ!やる気になってくれて嬉しいです!頑張りましょうっ!ではっ変身を!」

「………………」








ここまでお読みいただいてありがとうございます。

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