01 三雲真白 ましろ そしてルミリエ
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ノエル君は屋敷の温かい部屋へ私を連れて行き、暖炉の近くへ座らせてくれた。窓の外では雪がたくさん降っていて、とても寒そうだった。ノエル君は執事に何事かを言づてた後、私に熱いお茶を勧めてくれて、飲み終わるのを待っていてくれた。
「ましろの話を聞かせて」
私は何から話せばいいかちょっとだけ考えてから、順番に話そうと決めた。
「夢魔を封じた後、私は星の神様とお話しました。一番最初に星の神様は運命には変えられるものとそうでないものがあるって言っていました。
今回の世界の異変は、誰かが封じてあった魔物の箱を開けて、世界に魔物が解き放たれたことで起こりました。いくつもの世界で魔物による異変や厄災がもたらされ、導き手達によって選ばれた魔法少女達が魔物を倒して封じています。はい、今もです。
私が生きていた世界にも魔物が入り込みました。死に至る病をまき散らす魔物でした。その最初の犠牲者が私、三雲真白でした。
そして私の寿命とは違う死によって、今回の異変が星の神様の知るところとなりました。そうです。私の命の終わりは今回の出来事の重要な星の一つになっているそうです。なので、私がお願いを叶えてもらって生き返ったとしても、他の誰かが亡くなる運命は変えられないそうです。私は……お願いを叶えることを諦めました。
その代わりに私は星の神様にお願いしました。私の世界を救う戦いに参加させてほしいって。え?そんなに驚かないでください。だって、私も何かしたかったんです。いいえ、魔法少女ではないです。私には体がありませんし。導き手として新しい魔法少女と契約しました。あれ?ノエル君なんか顔が怖いですね?えっと新しい魔法少女は私の妹です。本当は、田舎のお爺ちゃんに頼もうと思ってたんですけど……。え?うちのお爺ちゃん空手の師範ですっごく強いんですよ?無理がありますか?そうかな?いいと思ったんですけど……。でも結局、妹に捕まってしまって、妹と契約しました。
私の世界には何人も魔法少女がいました。人口が多くて、魔物が広い地域に広がっているからでした。皆さんとても可愛くて眼福でした!うちの妹も負けてませんでしたけどね!あ、でもやっぱりマジカルミルキーが一番ですよ!あれ?ノエル君、なんか呆れていますか?
皆さんの協力で、魔物は封印されました。頑張ったおかげで結局、犠牲者は私だけで済みました。すごいと思いませんか?それから、妹には私が真白だって最初から分かっていたみたいで……。母には無理でしたが、妹には最後にお別れを言うことが出来ました。
神様は私にもう一つお願いを叶えてくれるって、言ってくれました。妹は私を生き返らせようとしてくれましたけど、何とか説得できました。私は、ノエル君にもう一度会いたいってお願いしました。だって、お別れもお礼も言えずにいたので……。
ルミリエは一週間、高熱で寝込んだ後、全ての記憶を思い出しました。ふふっ、記憶の戻り方としては割とベタですね。いえ、なんでもありません……目が覚めた時、あの白い仮面の人が枕元に立っていました。『ノエル君に会いに行ってあげて』って。私、まさか同じ世界に転生できるとは思ってなかったんです。」
ノエル君は私の体のことをとても心配してくれた。でも、今は大丈夫なんだ。とにかくノエル君に会いたかったから。
「本当に突然に訪ねてしまってごめんなさい。とても失礼なことだと分かってはいたのですが、どうしても今でなくてはいけないと思ってしまって……」
私はもう一度しっかり謝っておこうと思って頭を下げた。私の話を静かに聞いていたノエル君はとても慌ててた。
「謝らないで!さっきは本当にすまなかった。最近縁談が多くてイライラしてて……」
「縁談?どうしてですか?ノエル君には王女様がいらっしゃるのに」
ルミリエは病気がちで領地で静養することが多く、世の中のことには疎かった。更にここ一週間は高熱で意識がなく、誰かと世間話をすることも無かった。そしてましろはノエル君の事情を知らなかった。
「王女殿下は僕の兄フランシスと婚約なさったよ。ほら、あの時声が聞こえただろう?あれがフランシス兄上だ。兄上のおかげで王女殿下を夢魔から取り戻すことが出来たんだよ」
「ごめんなさい。あの時はマジカルミルキーを守るので精一杯で、よく覚えていないんです……」
「そうだったのか……。フランシス兄上と王女殿下は昔から想い合っていたんだ。でも、二人ともはっきりしないうちに兄の留学が決まって、王女殿下には縁談がたくさん来ていて……。困った王女殿下から頼まれたんだ。婚約者候補として風よけをしてくれって。今回の件でフランシス兄上は王女殿下を助けた形になっているし、二人は元々愛し合っているしで、話はすぐにまとまったよ」
「そうだったんですね……。ノエル君は振られてしまったんですね……いひゃいれす……」
ノエルは私の片頬を引っ張った。なんか導き手だった時にもこんなことがあったような……。懐かしいな、痛いけど。
「話、聞いてた?僕はね、とっても迷惑してたんだよ!あの二人がグズグズ、グズグズしてるからこんな面倒なことになって!そうこうしてるうちに、夢魔なんかに憑りつかれて、更に厄介なことになるし……、フランシス兄上に君との縁談が持ち上がるし……」
「え?そうだったんですか?私全然知りませんでした……。ごめんなさい……」
この話は本当に知らなくて、とても驚いた。
「婚約話はましろのせいじゃないから。むしろ、公爵家のせいだから。気にしないで」
「あ、あのノエル君、聞いてもいいですか?」
話をしながら、ずっと気になっていたことがあるんだよね。
「ん?どうしたの?」
「ずっと私の手掴んでますけど……、どうしてですか?」
「逃がさないように」
「え?私ノエル君から逃げたりなんてしませんよ?」
「本当に?なら、良かった。じゃあ、今晩は泊っていってね。それと僕と婚約してもらうから」
ノエル君の手の力が強まった気がする。
「???」
なんか今、とんでもないことを立て続けに言われたような気がするんだけど……。
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