表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
177/395

マキュニシェの戦い⑧

 戦いはついに十日目になる。

 互いに戦力は拮抗しており、互いに兵の半分を失っていた。

 その日も、フェズ軍は川を渡り、エルエ軍へと攻撃を開始していた。 

 しかし、その日、ついにエルエ軍の本陣でロヤが動き出したのだ。

 

「フェズ軍のほとんどの兵が、川を渡りましたね」


 ロヤは、本陣から見渡して戦況を把握する。


「そのようですね」

 

 ロヤの叔母の、ミヤリチヤが返事をした。

 その場には、ロヤとミヤリチヤ、それにロヤの部下しかいなかった。


「この十日間で、フェズ軍は川にはなにもないと、油断をしているのでしょう」

「そのために、戦場を長引かせましたからね」

「それも今日で終わりです。戦術を開始します」


 そしてロヤは、その号令をかけたのだ。

 


     ♦



 そんな事も知らないフェズ軍は、いつも通りに戦っていた。

 そして、驚くことになる。

 

「な、なんだ、あれは」

「川の色が変わっていくぞ」

「いや、あれは、花……か?」


 川に――花が流れてきたのだ。

 それも、川の色が変わったと錯覚するほど、大量の花が、である。

 その花は、紫色の花であった。


「お、おい、どうする」

「どうするったって……ぐわあ!」


 フェズ軍の兵達は動揺したが、目の前の敵から目を離す行為は愚かであった。


「くっそ!気にするな!」

「川の事は、後で考えればええ!」

「お、おい、あれ……」


 しかし、川の花に加えて、フェズ軍の兵士はそれに気が付く。

 戦っている場所の遥か北側、川の下の方を、敵軍が馬を走らせて渡っていたのである。


「奇襲か」

「だけども、あんな遠くからなら、こっちが戻る方が……」


 兵士がそう言いかけて、しかし、足を止めた。

 後ろには川が、そしてその川は、大量の紫色の花で埋め尽くされていたのである。


「どうすんだ」

「関係ねえ、本陣を守りに戻らな!」


 兵の一人が、馬に乗って川を渡ろうとする。

 しかし、馬は花を踏みつけながら川を渡り、しかし途中で止まって、倒れたのだ。

 更に、その倒れた馬に乗っていた兵も落馬した後、動かなかくなったのだ。


「な、なんだ」

「どうしたんだ!」


 その様子を見て、兵達は動揺するしかなく、誰も川へと続けて入ろうとしなかったのだ。

 


     ♦



 そして、更にその様子を冷静に見ている者がいた。


「当たり前だ。この花は猛毒だからな」

「へぇ~、そうなんですか?」


 ヨギと補佐のベルェッ、それにその軍の一部の兵士であった。


「だが、皆知らなくても仕方がない。この花は、この地方にしか咲かない花で、それにちなんでマキュニシェの花と名付けられる花だからだ」


 ヨギは、余裕を持って川と、そこを流れる猛毒の花、マキュニシェの花を眺めていた。


「でも、ヨギ様は知ってたんですね」

「俺は何でも知っている」


 ヨギは、当然と言わんばかりの態度で言う。


「ゼルバは川上も、川下も調べたようだが、何も仕掛けがなくて当然だ。ただ、川上から事前に準備をしていた花を流しているだけなのだからな……それに、川下から奇襲をかけている奴等も、遠回りして奇襲をかけているだけだ。仕掛けも何もない」

「でも、味方は川を渡れないので、その奇襲は成功してしまうというわけですね」


 ベルェッは呑気に言う。

 

「ああ、俺達がいなければな」


 それもそのはずである。

 ヨギとベルエッは、小隊を率いて、あらかじめ川を渡っていたからである。

 ヨギは、ロヤの戦術を全て完璧に読んでいたのである。


「それで、どうするんですか?すぐに、あの部隊を追いますか?」


 今すぐに向かえば、敵奇襲部隊がゼルバの元へと届く前に割って入れるはずである。

 だが――


「いや……俺達はあの部隊は追わない」


 ヨギは信じられない事を言ったのだ。

 それでは、なんのために、花が流れる前に川を渡ったのかわからない。


「ええ!何でですか!?」


 だからこそ、ベルエッは困惑する。


「いかにゼルバとて、花の事は知らないだろう。だが、ゼルバは川を使って兵を分断されることも、奇襲されることも、全て読んでいるはずだ」


 ヨギは言い切る。

 ゼルバが読み切っている事を、ヨギは読み切っているのだ。


「そうなんですか?」

「俺がゼルバを買いかぶってなければな」


 そう言って、ヨギは少し笑った。


「それで、僕達はどこに行くんですか?」

「ああ、着いて来い」


 そう言って、ヨギは馬を走らせ、ベルエッ達はそれについて行ったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ