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マキュニシェの戦い⑦

 この地での戦いは、九日目となる。

 苦戦をしているのは、ギヨウだけではなかった。

 当然のように川を渡って戦うようになってから、オグルブの軍が前線に立ってフェズ軍を抑えていた。


「くっ!」


 セロガは前線で三人の将を討ち取っていた。


「俺は、オグルブが30人目の息子、ディモカだ。貴様か、弟をやったという将は」

「次から次に、なんなんだこいつらは」


 セロガは悪態を吐く。

 オグルブの軍は、兵も強ければ、将も強い。

 それもそのはずで、多くの将はオグルブの血筋を引く者であった。

 

 もちろん、それに苦しめられていると言うのは、セロガ隊だけではない。

 ガンビカ隊、アカツキ隊、それにオルファ隊も同じように、将を討ち取れど、新しい強い将が立ちふさがるという状態であった。


「参ったねこれは」


 セニオガネスが、そう呟く。

 しかし、


「弱音を吐くわけにはいかないね」


 同時にそう考えていた。

 それは、セニオガネスだけでなく、ガンビカも、シルルや、レシヘストも、更にセロガさえも同じ考えであった。

 何故なら、この場で誰よりも強い将と戦っている仲間がいるのだから。

 それは言うまでもなく、ギヨウであった。

 


     ♦



「うおおお!」

「おおおお!」


 ギヨウが攻撃すれば、オグルブはそれを受け、オグルブが攻撃すれば、ギヨウがそれを受けていた。

 周囲では、オグルブの兵とギヨウの兵が集まっており、しかし、一騎討ちを邪魔することもなく、二人の戦いを見守っていた。


 ギヨウとオグルブの一騎討ちは五日目に突入していた。

 これは、もちろん異常である。

 一騎討ちなど、下手をすれば一太刀で終わることだってあるのだ。

 それは、お互いに達人であるが故の、互角の戦いであった。


「ははっ!」

「はーっはっはっ!」


 互いに、一度でも間違えれば死ぬと言う状況で、二人は楽しそうに笑っていた。

 

 そして、その日も決着がつかないまま、陽が沈みだしたのだ。


「ふっ、今日も決着は着かぬか」


 いつしか、互いに手を止め、オグルブが言った。

 その台詞は、残念とも取れる台詞であるが、オグルブの顔は嬉しそうであった。


「ああ……」


 対するギヨウは、悔しそうな顔をしていた。

 戦いが終わると、ミュエネの事が心配になるからである。

 そして、今日も仕留めきれなかったことを悔やんでいるのだ。


「では、勝負は明日に預けるとしよう」


 五日目ともなれば、オグルブもあっさりと去って行ってしまう。

 無防備に見せるその背中に、斬りかかるような卑怯な真似はギヨウはしない。

 そのため、ギヨウもまた自陣へと帰って行くのだった。

 


     ♦



 フェズ軍の陣へとギヨウが帰ると、この戦で初めてゼルバがギヨウを迎えに来た。


「どうしたんだよ急に?」


 普段、ゼルバがわざわざギヨウを迎えることなどない。

 

「傷だらけですね」


 しかし、その問いに答えずに、ゼルバはギヨウを連れて本陣へと向かったのだ。


「寝れば治るさ」


 実際に、問題となるよな傷はない。

 かすり傷ばかりである。


「普通は治りませんけどね」


 ゼルバは笑った。


「で、何の用だよ」


 本陣に着くと、人払いがされていて、ゼルバとギヨウの二人きりとなる。

 

「随分と苦戦しているようですね」

「流石につえーよ、どうやったら勝てるのかわからねぇ」


 だが、ギヨウから見てそうであり、オグルブから見てそうなのである。


「では、いい事を教えてあげましょう」


 それこそが、ゼルバがギヨウを呼び出した理由である。


「いい事?」


 ギヨウが聞き返すと、ゼルバは笑顔で語りだした。


「あなたが初めて会った時は、あなたは強かったですよ」


 そして、妙な事を言う。


「ん?いや、それはそうだろ」


 ギヨウは一瞬考えこんだが、当然の事だと突っ込む。


「あなたは気付いていないかもしれませんが、その後、あなたは弱くなりました」

「そうか?そんな事はないだろ?なんで弱くなるんだよ?」


 全く納得できない話である。

 ギヨウはそれでも、強敵に勝ってきたのだから。


「それは、あなたに仲間が出来たからです」


 少し、少しだけ、ギヨウにもそれはわかった。


「そうか、俺は弱くなったのか……」


 だから、納得してしまう。


「ですが、今のあなたは強いですよ。最初に会った時よりも、はるかにね」

「え?なんなんだよ……ったくよ」


 ギヨウは頭を掻く。

 弱くなったと言ったり、強くなったと言ったり、ゼルバが何を言いたいのかわからないからである。


「そして、あなたが強くなった理由は、仲間がいるからですよ」

「いや……おかしいだろ」


 明らかに矛盾した話である。

 仲間がいるから弱くなったと言ったのに、仲間がいるから強くなったと言われた


「つまり、あなたは強くなったと言う事ですよ。自信を持ちなさい」


 ゼルバはそう言うと、ギヨウの背中を叩いた。


「いてっ!」


 ギヨウは、ゼルバが何を言いたいのかわからなかった。

 だからこそ、最後に言われた、強くなったという言葉を信じる事にしたのだ。


「任せとけよ。きっちり勝って、ミュエネを取り戻してくるからよ」


 そのギヨウの頼もしい言葉に、ゼルバは笑みを浮かべたのだった。


 そして、夜は過ぎ、戦いは十日目を迎える事となる。

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