マキュニシェの戦い④
川を渡ったフェズ軍と、それを待ち受けるエルエ軍は激しい戦いを始めた。
そんな中で、ギヨウはそれから目を逸らさずに、それへと真っ直ぐ向かって行ったのだ。
それは、武の将オグルブである。
「うおおおおお!」
ギヨウはオグルブが近づくと、勢いのままに剣を振り上げて一撃を繰り出す。
「ふんっ!」
当然、オグルブもギヨウが近づいてきていたことに気が付いていた。
だからこそ、ギヨウの一撃を受けながら、ある事を実行したのだ。
「きゃっ!」
ギヨウは一撃をいなされ、馬同士が交錯した時に、その声を聞いた。
そして、振り向いた時にはもう遅かったのである。
「え?」
ギヨウの後ろに乗っていたミュエネが、オグルブの腕に抱えられていたのである。
「連れて行け!」
オグルブがそう叫ぶながら、ミュエネを近くにいた女の将へと投げ飛ばす。
「はっ!……くそっ!暴れるな!誰か手伝てくれ!」
「くっ!ギヨウ!」
ミュエネは必死に抵抗したが、数人がかりで抑え込まれてしまう。
「おい!待てっ!」
ギヨウは追いかけようとしたが、あまりの手際の良さに、一瞬でミュエネは見えないところまで連れ去られてしまう。
「こちらを見ろ、千人斬りのギヨウ。そして、わが友を斬りしギヨウよ」
更に、武の将オグルブが間に入って来たのである。
「この野郎!」
それでもお構いなしで、ギヨウはオグルブへと斬りかかり、更にその勢いのまま、ミュエネを追おうとしたのだ。
「行かせんと言っている!」
しかし、それをオグルブは防ぐのだ。
もはや、どうしようもない。
「お前!なんのつもりだ!」
それは、あまりにも意外な行動であった。
「別に、いつもやることだ。しかし、意外であった。貴様のような男がそれほど取り乱すとは……」
「いいから、どけぇ!」
ギヨウは、オグルブに止められても、なおミュエネを追おうとする。
その気持ちは、オグルブへと向いていないのだ。
そのことに、オグルブはため息をつく。
「聞け、小僧。俺と一騎討ちをしろ。俺が勝てば、あの女はもらう」
それは、あまりにも一方的な主張である。
一騎討ちは、ギヨウからしても望むところではあるが、ギヨウはそれどころではなくなってしまっている。
「そんな、勝手な!」
「本来であれば、相手が逃げぬよう、真剣に戦うように、女をさらうことがあるのだが……まさか貴様のような者が、そんなに取り乱すとはな……これでは話にならんわ」
オグルブは想定と違うギヨウの動きに、戸惑っていた。
「勝負がつくまで、あの女には手出しはせん」
オグルブが宣言をする。
オグルブは、元々そのつもりではあるし、今までもそうしてきた。
だが、こんな宣言はいつもはしない。
それでも、こんな宣言をしたのは、オグルブも万全の状態のギヨウと戦いたいからであった。
「くっ……やるしかないか」
そこまで言われれば、ギヨウも何も言う事はない。
元々、オグルブと戦う為に来たのである。
「すぐに終わらせてやるよ!」
ギヨウは、勢いよくオグルブへと剣を振るう。
「ふっ、せいぜい楽しませて見せろ」
オグルブは、その剣を受けては、自らの矛を振るう。
少し回りくどい展開になったが、ギヨウとオグルブの一騎討ちが始まったのである。




