マキュニシェの戦い③
戦いは四日目となる。
二日目と三日目は、敵もゼルバも方針を変えなかったため、川を挟んでの弓矢のやり取りでのみ行われ、互いに大きな被害を出さずに戦いを終えていた。
そして、四日目である。
実は、この日もゼルバからの指示は変わっていなかったのである。
だが、それもそのはずで、敵がここまで意固地に川を渡ってこない以上、川に仕掛けがあると警戒するのは当たり前である。
それでも、弓矢を射り、射られるだけの日が三日も続けば、それに不満は募るものだ。
「くそっ!やってられるか!」
そして、不満を募らせた結果、勝手に突撃を始めてしまったのだ。
「ガンビカ隊!行くぞ!」
それは、ガンビカだったのである。
「あっ!あの馬鹿!」
意外にも、ギヨウは矢を射る事は嫌いではなく、大人しく命令を聞いていた。
「誰が馬鹿か!聞こえてるぞ小僧!」
ガンビカは叫びながらも、突撃することをやめず、川へと馬の脚を踏み入れてしまう。
そして――
そのまま、何事もなく渡り切ってしまったのである。
「なんだ!何もないではないか!あっ……」
ガンビカは後ろの川を見て、前へと向き合った瞬間にその男と目が合ってしまう。
武の将オグルブである。
「たったの一部隊で来るとは、いい度胸だ」
オグルブがガンビカへと矛を振るうと、
「ぐわぁ!」
ガンビカはその一撃をなんとか受け止めはしたが、たったの一撃で馬から落とされてしまったのである。
「まずい!」
「隊長を守れえ!」
ガンビカ隊は、必死に落馬したガンビカを守るが、それはつまり、オグルブの軍に捕まってしまったということになる。
「ちっ!俺らも行くぞ!」
それを見かねたギヨウは、アカツキ隊を動かし、
「俺たちも行くしかないね」
「セロガ隊、アカツキ隊より先に向こう岸へ着くぞ」
更に、他の部隊も釣られて動いてしまったのである。
♦
「あああー、全員渡ってしまいましたよ、ゼルバ様。ヨギの部隊までです」
その様子を、本陣から眺めていたベルベンが、頭を抱えながらゼルバへ報告する。
「はははっ!いいんじゃないですか?むしろ三日も持つとは思っていませんでしたよ。てっきりギヨウ辺りが、二日目くらいに痺れを切らすと思っていたんですがね」
それを、ゼルバは笑い飛ばした。
「ゼルバ様?ですが、川を渡るとまずいのではないですか?敵の計略が……」
やけに上機嫌なゼルバに、ベルベンは困惑する。
「……そうですね。では、ガンビカ隊の救出をしたら、川を再び渡って、後退するように指示を出しておいてください」
「はっ!いますぐに!」
ベルベンは急いで伝令を出したのだった。




