マキュニシェの戦い①
フェズ国の領土の奪還が終わると、ゼルバの予想した通りに新たな戦いが始まった。
その土地は、マキュニシェという土地である。
そこは、エルエ国の土地であり、敵より先んじてゼルバがその土地に攻め入った。
それは、ゼルバが攻め入ったのか、攻め入らされたのかは、誰にもわからない。
しかし、ゼルバは攻め入り、ロヤはそれを待ち構えたのである。
かくして、マキュニシェの戦いが始まろうとしていた。
マキュニシェの土地の最大の特徴は、中央を通っている川である。
深い川ではないため、障害になっているとは言い難い川であった。
しかし、フェズ軍とエルエ軍、互いに川を挟んでの陣を作る形となったのである。
戦が始まる前、ギヨウは本陣へと呼ばれ、向かっていた。
「よう」
その途中で、見知った顔に遭遇する。
「セニオガネス、セロガじゃねえか」
二人に会うのは、実に半年ぶりほどであった。
「活躍は耳にしてるぞ。守の将をやったんだって?」
セニオガネスに褒められ、ギヨウは少し得意気になってしまう。
「悪いな。先に三千兵隊長になっちまってよ」
それに対して、セニオガネスは笑い、セロガは鼻を鳴らして答えた。
「俺等も死ぬ気で勲功を上げて、三千兵隊長になったよ」
「貴様より後というのは、屈辱だがな」
「なにぃ!いつの間に……」
正直に言えば、元々貴族である二人はギヨウよりは昇進しやすいのかもしれない。
しかし、言うほど容易い道でもなかったはずである。
それを、二人は成し遂げたのである。
「次は、俺の方が先に五千兵隊長になる」
セロガはそう言うと、さっさと行ってしまう。
三千兵隊長という事は、ゼルバに呼ばれているのだろう。ギヨウと同じ行き先のはずである。協調性がないと言うか、ギヨウに敵対心剥き出しと言うか。
そのセロガの様子に、セニオガネスは肩をすくめる。
「まっ!俺達も行こうぜ」
「そうだな」
だがいつもの事なので、二人とも気にすることなく本陣へと向かったのだった。
♦
ギヨウが本陣の天幕へと入ると、もうこの戦に参加している将は集まっていた。
主にゼルバの配下の将で構成されたその中でも、目立つのは族長である。
森の民は、ゼルバの軍に残り、一緒に戦ってくれるらしい。
また、他にも目立つと言えば、ヨギである。
ヨギは、補佐のベルェッと目立たない様に端で黙って立っていたが、その存在感を消すことは出来ず、その場にいる誰もがヨギの事を意識していたのであった。
「さて、それでは軍議を始めましょう」
しかし、そこには触れずにゼルバは話を進めてしまう。
「今回、敵の数は七万。対する味方は六万です」
つまり、劣勢である。
しかし、これでも兵は集まった方である。
特に、ヨギの軍は半分の三万を占めていた。
それだけ、フェズ国は追いつめられていたのである。
「敵総大将は知の将ロヤ、それに秀の将ジアヒスと、武の将オグルブがいる事も確認しています」
「それって、相手は本気なんじゃねえのか?」
ギヨウが口を挟む。
もはや三傑将となった三人が戦場に出ているのだ。ギヨウでなくとも、だれだってそう感じる所である。
「そうですね。本気で私を討ちに来てるのでしょう」
「こっちはゼルバとヨギ……将軍だけだろ?援軍は呼べないのかよ?マチェバナン将軍とか、ガエロオ将軍とかさ」
ベルベンは自分もいる事を目だけで訴えるが、ギヨウがそれに気が付くことはなかった。
「二人とも、先の戦いで死ぬ気で戦いましたからね。まだ軍の立て直しが終わってないのですよ。なので、援軍は来ないと思ってください」
対する、エルエ軍に援軍があるかはわからない。
かなりの劣勢であるのは明白であった。
「ですが――」
それでも、ゼルバはそれを宣言する。
「私はこの戦いで、三傑将の一人を討ち取るつもりです」
それを聞かされて、驚く者はその場にはいなかった。
いつもゼルバは難しい事を口にしては、それをやってのけてきたのだから。
「俺は、俺達は、どうすればいい?」
だから、ギヨウはそう聞いたのだ。
ゼルバはそれを聞いて、嬉しそうに笑う。
「まずは相手の出方を見ましょう。間違いなく相手は、川を使ってくると思います。念のため調べさせていますが、今のところは仕掛けはなさそうなのですが……」
それは、ゼルバにも見破れない策なのか、もしくはまだ仕掛けが終わっていないのか。
「なので、初日は川を渡らずに戦ってください」
難しい話ではない。
だが、ゼルバにしては少し不自然な作戦だとは思った。
それは、明確な作戦を出さずに、後手に回っていると言う部分である。
「ゼルバ様!敵が動き出しました!」
だが、敵は待ってくれない。
一日目の戦いが始まったのである。




