ゼルバ復活④
「うおおおお!」
「勝ったぞおおお!」
「アカツキ隊の小僧が、ズェガェを一騎討ちで倒したぞおおおお!」
動かなくなったズェガェを見て、フェズ軍の兵達が歓声を上げた。
ただ、ギヨウは雄たけびを上げる気にはなれず、勝利に、静かに手を握りしめたのだった。
「どうしたの?」
勝利しても静かなギヨウへ、ミュエネが問いかける。
「いや……」
別にズェガェに特別な想いがあったわけではない。
だが、初めて出た戦場で出会い、更に一度刃を交え、そして一騎討ちをした。
たったの三回、相まみえただけだが、ズェガェは知った顔にはなっていたわけである。
そのため、少し複雑な気持ちであった。
「なんだ、こいつの事が好きだったのか?」
「えっ!」
「それはねえよ!」
更にシルルがふざけたことを言い、ミュエネが顔を赤くして、ギヨウは否定をした。
「ほら、皆さん。まだ戦は終わっていませんよ」
そこに、ゼルバが割り込んでくる。
戦は終わっていないとは言うが、ズェガェの死を聞いたエルエ軍は意気消沈していた。
そのため、戦はフェズ軍と森の民によって、すぐに終わったのだった。
♦
戦が終わると、ギヨウはゼルバの元へとやってくる。
まだ喋り足りない事が多いからだ。
「すいません、ギヨウ。私にはまだやることがあります。後で話しましょう」
「え?あ、ああ」
そう言われてしまっては、ギヨウも引き下がるしかない。
そして、ゼルバは馬を歩かせだす。
ゆっくりと、ゆっくりと、である。
「ゼルバ様!」
「本物だ!」
「私は信じていました!」
そのゼルバの前に道を開けながらも、兵達は縋るように集まる。
そのどの兵の顔も、涙で溢れていたのだ。
「皆さん、よく頑張ってくださいました」
ゼルバのやる事と言うのは、ただ姿を見せること、それだけである。
それも、フェズ軍の兵、全員にである。
フェズ軍は限界であり、戦が終わった後、誰もがその場に座り込んでいたが、ゼルバの姿を見ると、誰もが元気になったのだ。
だが、そのゼルバの進む先に、倒れた兵が現れる。
全身傷だらけであり、誰が見てももはや助からない兵であった。
そのため、ゼルバに道を譲るどころか、縋る事すらできないのだ。
「すいません、すぐに連れて行きます!」
側の兵が、その兵を移動しようとするが、
「いえ、構いません」
ゼルバはそれを否定すると、馬から降りて、その兵へと近づいた。
「あ、ああ……」
その兵は虚ろな目をしており、目が見えていないようであった。
そのため、ゼルバが近づいたことにすら気が付けていなかった。
ゼルバはその男の手を握ると、語り掛けた。
「よく、戦い抜いてくれました」
ゼルバは、気休めになるような事は言わなかった。
助かるはずもないし、それは本人にもわかっているだろうから。
「ああ……ああ……ゼルバ様、そこにおられるのですね……」
その兵は、ゼルバの手を握り返す。
「あああ……温かい……」
その兵は、直前までは苦悶の表情を浮かべていたが、ゼルバの手を握り返すと、穏やかな顔になったのだった。
「……あなたの名前は?」
そして、ゼルバは最後に問いかける。
「デムグです……」
「勇敢にたたかった戦士、デムグ。その名、胸に刻んでおきましょう」
「ありがたき幸せ……」
穏やかな笑顔のまま、デムグは、ゼルバの腕の中で息を引き取った。
その姿に感動した兵達は、元より流していた涙を、より一層増やしたのだ。
「ゼルバ様!」
「我々も死を恐れずに戦います!」
「必ずや勝利を!」
更に、口々に己が信念を口にする。
「ありがとうございます。ですが、死んでは駄目です。生きて、勝利を掴みましょう」
ゼルバの言葉を受けて、
「「「うおおおおお!」」」
兵達は大きな雄たけびを上げた。
そのように、ゼルバはこの場にいる兵全員へと姿を見せ、激励を飛ばした後に本陣へと戻って来た。
その本陣では、ギヨウ達が待ち受けていた。
「さて……何から話しましょうか」
ベルベン達にも、詳しい話まではしていない。
そのため、まずは説明をしようとゼルバは口を開く。
しかし――
「ちょっと待った!」
それを、ギヨウが止める。
「どうかしましたか?」
その理由がわからず、ゼルバは疑問を抱く。
「その前によ、すぐにでもどこかに兵を動かした方がいいんじゃないか?他の所も攻められてるんだろ?援軍に行かねえと」
ギヨウがそんな事を言ったため、ゼルバは酷く驚いて開いた口が塞がらなかった。
「なんだよ?」
「いえ、まさかギヨウがそんな思慮深い事を言うとは……」
「なんでだよ!」
あまりの言いぐさに、ギヨウは抗議の声を上げた。
「はははっ、すいません。ギヨウも、少しは将軍らしくなってきたのですね」
「いや、そういうわけじゃ……」
ゼルバは楽しそうに笑い、ギヨウは少し照れた。
「で、どうなんだ?」
援軍に行くか、行かないかである。
「その必要はありません。あちらには、彼が行ってますから」
「彼?」
「ええ、やっと動いたのですよ。不動の天才、ヨギ将軍が」
そして、ゼルバは遠い目をしたのだった。




