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ゼルバ復活③

 守の将と呼ばれるズェガェは、当然、兵を率いた守りの戦が得意というだけでなく、本人の武においてもそれは得意とされていた。

 だが、ズェガェは盾を持たなかった。

 そこに理由はない。ただ、将軍では無い頃から、矛一本で戦って来たというだけである。

 それでも、ズェガェは、多くの戦いで敵の攻撃を矛のみで受け止めきり、勝利を収めてきたのだ。


 そんな中で、剣と言う小回りが利く武器は、矛のような大きな武器で攻撃を受けきるのは難しいとも思えるかもしれない。

 だが、実の所、ズェガェが最も得意とする相手の武器は剣であった。

 ズェガェの、剣に対する必勝の定石は、一度受け止めたらそのまま剣をはじき返してしまう事である。


「オアアアアア!」


 そして、今目の前で、まさにギヨウが剣をズェガェに向かって振るったのだ。

 その太刀筋は鋭く、並の兵ならば、なすすべもなく斬り飛ばされてしまうだろう。

 だが、ズェガェはその太刀筋を見切り、その一撃を完璧に矛で受け止める。

 鋭い音がなり、互いの獲物がぶつかり合うが、その動きは止まった。

 ズェガェが、ギヨウの攻撃を受け止めきったのである。

 

 

「くっ……」


 だが、ズェガェの顔には、いつものような余裕はなかった。

 ギヨウの一撃は、これまで受けて来たどの攻撃よりも、重かったからである。

 一度は止まった攻撃だったが、じりじりとギヨウの剣が、ズェガェの矛を押し出す。

 それはつまり、ズェガェは攻撃を受けきれなかったという事に他ならない。


「ふんっ」


 それでも、そのまま押し切られるわけにもいかず、ズェガェは強引に攻撃を受け流した。

 ギヨウは、それで態勢を崩すことなく、再び攻撃を行う。

 ズェガェはそれを止めるが、やはり完璧に受け止めきれることは出来なかった。


「ウオオオオ!」

「ぬぅん!」

 

 馬は足を止め、二人はその場で何度も刃を交わし合う。

 ギヨウは何度も攻め、ズェガェは何度も受けた。


(ふふっ……強いですね。前に戦った時はこれほどまでに強くはなかった。何かがあったのでしょうか?)


 その最中で、ズェガェはその事実に気が付く。

 そして、ついにズェガェは馬ごと後退をする。受けきれなくなってきたのだ。

 

(今の彼は、間違いなく私が戦って来た相手の中で一番強い)


 後退したことで、態勢を崩したズェガェに、ギヨウが止めの一撃をいれようと迫りくる。

 そのギヨウの強さを認め、ズェガェは笑った。

 それは、諦めとも取れる動きであり、周囲で見ていたフェズ軍の兵は歓声を上げ、エルエ軍の兵は悲鳴を上げた。


「ですが!」


 だが、ズェガェは笑ったまま目を見開く、そして迫りくる刃に対して、手を――差し出したのだ。


「なにっ!」


 その行動にギヨウは驚きながらも、刃を止める事は出来ない。


「私も負けるわけにはいかないのですよ!」


 信じがたい事に、ズェガェはギヨウの剣を素手で――しっかりと掴んで、攻撃を受けたのである。

 そして、逆の腕で矛を振るい、逆にギヨウへと止めの一撃を放つ。


「「ギヨウ!」」


 ミュエネとシルルが悲鳴を上げる。

 だが、その止めの一撃は、ギヨウに当たったが、全く力がなく鎧に阻まれたのだった。


 ギヨウの剣はズェガェの手を斬り割き、ズェガェの体にまで刃を届かせていたからである。

 素手で刃を止める事など、出来るはずがなかったのだ。

 しかし、確かに一度は剣は止まっていたのである。素手で、剣の一撃を受けきっていたのである。

 

「ふふっ、見事です。ギヨウ」


 ズェガェは血を吹き出しながら、ギヨウを褒め称える。

 その顔には、いつもの余裕の笑みを浮かべていた。

 しかし、もはや助からない事は一目瞭然である。


「ああ、凄い守りだったぜ、ズェガェ」


 ギヨウもズェガェを褒め称える。

 そして、それはもちろん、本心からの言葉であった。


 その言葉を聞いて満足したのか、ズェガェは笑みを浮かべたまま目を瞑った。

 そして、そのまま動かなくなったのである。

 馬から落ちることなく、壁のように直立したまま、守の将ズェガェは絶命したのだった。

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