フェズ国の危機⑳
ズェガェは戦を終わらすべく、自らが出陣した。
その向かった先は、敵で最も勢いのある部隊である。
最早、限界が近いフェズ軍を崩すには、それだけで良いとズェガェは考えたからである。
そしてそれは――アカツキ隊だったのだ。
「隊長のいないアカツキ隊を襲うのは悪いとは思いますが、これも戦争ですからね。ふふっ」
ズェガェの存在感は大きい。
そのため、アカツキ隊ももちろん、ズェガェが突撃してくるのには気がついてはいた。
しかし、どうしようもなかった。目の前の敵の相手で精一杯だったのだ。
「守の将ズェガェが来るぞ!気を付けろ!」
シルルは叫ぶと共に、自分がズェガェの進行方向へと立ちふさがる。
「ふふっ、来ましたか」
だが、ズェガェは立ちふさがるシルルを――見てはいなかった。
見ていたのはその後ろ。
そこから迫りくる、一人の将軍であった。
「シルル、どきなさい」
その将軍は、シルルに後ろから声をかけると、シルルの前へと立ちふさがった。
「ベルベン殿!」
それは、フェズ軍の総大将ベルベンであった。
「無茶です!私が!」
シルルは、ベルベンが戦っているところを見た事がない。
いつも、ゼルバから無茶な注文をさせられているが、それは内政の面ばかりである。
そのため、とても戦える人間だとは思っていなかった。
だが、ベルベンはシルルを、手を出して制する。
そのうちに、ズェガェはベルベンに肉薄し、その矛を振るった。
「なるほど」
そして、その一撃をベルベンに受け止められると、ズェガェはそう頷いたのだ。
二人は一度離れる。
「あまり戦うようには見えませんが、あなた、相当やりますね」
たったの一度のやり取りで、ズェガェはそれを見破る。
「ゼルバ様の補佐は、頭が良いだけでは務まりませんからね」
ベルベンは涼しい顔で言ったが、驚いているのはシルルである。
まさかベルベンが、ズェガェと斬り結べるほど強いとは、思いも寄らなかったのだから。
「奇しくも、総大将同士がこんな戦場のど真ん中で会ってしまいましたね。一騎討ちでもしますか?私が勝った場合の景品は、ギヨウでお願いします。ふふっ」
ズェガェは、余裕の表情で笑う。
ベルベンが強いとは思っても、自分が負けるとは思ってもいないのだ。
「ふっ……あなたは大きな勘違いを二つしている」
だが、ベルベンはそれに対して、返事になっていない返事を返した。
「ん?どういう意味ですか?」
時間稼ぎかとも思ったが、ズェガェには余裕があった。
あえて、話を聞くことにする。
「まず、あなたの相手は私ではありません」
「ふむ……」
この状況で総大将同士が邂逅して、相手ではないと言うのは変な話である。
だが、ズェガェはそれは二つ目に関わってると見て、あえて聞き返さずに頷くだけであった。
「そして二つ目は、私はこの軍の総大将ではありません」
その言葉に、ズェガェは驚いて、目を見開いた。
「来ましたよ。私達の総大将が」
ベルベンが横の森を見る。
ズェガェも釣られて横の森を見た。
そこから、馬に乗った援軍が次々に姿を現したのである。
この援軍を見て、ギヨウは驚いたのである。
「伏兵?いや、援軍……?ですが……」
その援軍の姿は異様であった。
明らかにフェズ軍ではないのだ。
いや、そもそも兵士という感じではない。
男も女もおり、男は上半身裸であり、女もかなりの薄着であった。
鎧を着ているものなど一人もいなかった。
「まさか……外の国の?」
それは、ズェガェからすればあまりにも予想外の事であった。
「落ち着きなさい!たいした数ではありません!」
それでも、ズェガェはすぐに立て直し、激を飛ばす。
しかし、ズェガェの見ている先で、エルエ軍はかなり押されていた。
横から急襲されたという事もあるが、森の民が強かったのだ。
そして、その乱戦の中を抜けて、二人の男がズェガェの元へとやってきた。
一人は、一際体の大きい男である。
そして、もう一人は、仮面をつけて顔を隠した、男の中で唯一で服を着ている男であった。
その男が、誰なのか、もはや誰の目にも明らかであった。
そして、男は、その仮面を外す。
その仮面の下から出て来たその顔は、死んだはずのゼルバだったのだ。




