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第43話 すぐに会える

「こ、これが噂のチョコレートケーキ!」


 カルティアは口から少しよだれをたらしながら話す。


「そう、これが噂のチョコレートケーキよ。沢山あるからたんと召し上がれ!」

「カルティア! たんと、召し上がる!」

「ちょっと待ってね、切り分けるから」


 カルティアは待ちきれないのか、椅子から宙ぶらりんになった足をブラブラとさせている。


「カルティア、お行儀が悪いぞ」

「はい、おじいさま!」


 カルティアはブラブラさせていた足をピタリと止める。

 流石にガルギアのいうことはよく聞く。


「はい、どうぞ!」

「うぁわ! すごい、これがチョコレートケーキ! カルティア、夢にまで見た。チョコレートケーキのお化けと戦った!」

「そうなの、うふふ」


 チョコレートケーキのお化けが、どんなものなのかちょっと気になる。

 カルティアはどうしたことか、チョコレートケーキに手をつけようとしない。

 よだれが今にも垂れそうだ。

 

「どうした、食わないのか?」

「いただきますは?」

「ああ、おやつだからいいよ」

「じゃあ、お先に、いただきます」


 カルティアは切り分けられたチョコレートケーキに、フォークをぶっ刺して直接かぶりつく。

 途端口の周りがチョコレートまみれになる。


「美味しい! マリーナが作ったチョコレートケーキ美味しい!」

「あら、よかったわね――ほら、口の周りにチョコレートがついちゃってる」


 マリーナは布でカルティアの口の周りを拭う。


「それでお主ら、いつ人間界に帰るつもりじゃ?」


 そのガルギアの質問でカルティアのケーキを食べる手がピタリと止まる。


「このケーキ食べたらお暇しようかと。俺もマリーナも仕事があるんで」


 マリーナは優しい眼差しをカルティアに向けている。


「ジーンとマリーナ、いなくなる?」


 カルティアは俯いて尋ねる。


「またすぐに会えるから! なんなら週に1回くらい来ようと思えば来れるし! ねえ、ジーン」

「う、うん、まあな」

「そんな無理は頼めんぞ、カルティアよ。ジーンにはジーンの、カルティアにはカルティアの人生がある。お前にはお前の人生があるようにな」

「ゔゔゔゔゔゔーーー嫌だーーージーン、マリーナ、カルティアからいなくならないでーー!! 二人はカルティアのパパとママのかわりーー!!」

「カルティア……」

「しょうがないのう」


 ガルギアは懐から青い石を取り出す。


「これは星屑の欠片といい、凄まじい魔力を秘めている。魔界では産出でされず、天界しか保有していないものじゃ。ザニーの亡骸からこれが出てきてのう。ほれ!」


 ガルギアはゲートを出現させる。


「ゲート! カルティア、知ってる!」

「カルティア、ちょっとゲートをググっていってみろ。但し、直ぐに戻ってくるんじゃぞ」

「承知しました、カルティア、冒険にいってまいります!」

「冒険ではない! すぐに戻ってこいよ!」

「出発進行!」


 ピョンと飛び跳ねてカルティアはゲートくぐっていく。

 それから数分後。嬉しそうな顔をしたカルティアが戻ってきた。


「おばあちゃんがいた! ジェーンおばあちゃん。……マリーナ、早く帰ってこいって怒ってた……」

「えっ、宿に行ってきたの?」


 カルティアは得意げにしている。

 

「本来魔界で非常に希少な魔石を消費しなければゲートを開けなかった。だが無尽蔵ともいえるような魔力を秘めた星屑の欠片が手に入った。そのことでいつでもゲートを開くことができるようになった。これでいつでもマリーナとジーンに会いに行けるぞ、カルティア」

「やったあ! おじいちゃんありがとう!」

「これで心置きなく、人間界に帰れるな」

「ああ、ありがとう魔王」

「また、会いに来てね、カルティア。待ってるから!」

「カルティア、明日会いに行く!」

「明日は流石にちょっと早いのう」


 魔王城の食堂にみんなの笑い声が響いた。



 ◇


「驚いたねえ、魔界からのゲートかい」

「おい、ばーさん。マリーナちゃんはいつ帰ってくんだ?」

「掃除、洗濯、全部滞ってんだ」

「うるさいね、セルフサービスだっていってんだろ。自分たちでおやり」

「なんの為に宿に泊まってんだよ。それに食事も自己調達はないだろ」

「素泊まりだけの宿もあるだろ! ほら、もうゲートは終わり! カルティアに言っといたからそろそろマリーナも戻ってくるよ! みんな自分の部屋に戻りな!」

 

 何も供給されない食堂に集まっていた宿泊客たちは、各々自室に戻っていく。

 

「ふぅー」


 ため息を一つ吐くと、ジェーンは食堂の椅子に腰掛ける。


「何やら天界まで絡んできてるみたいじゃないか。そろそろ潮時かね……」


 ジェーンは誰もいない食堂でそう呟いた。

 

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