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第39話 黒幕

 群衆たちは勝利の笑い声を上げているグレイグの背後に、いつの間にか立つ一人の男を確認する。

 男の姿を確認したと思った瞬間。

 男から伸びた手が不自然にグレイグの前方に伸びる。


「ぐぼぉうッ」


 グレイグは口から血を吹き出す。

 そして自らの腹部から伸びでた手を確認する。

 その手は手刀の形をしていた。


 手が強引に引き抜かれる。

 グレイグは後方を確認する。

 そこには彼の部下のザニーの姿があった。


「ザニー……なんでお前が……」


 グレイグはその場に膝から崩れ落ちた。


「よかったですね。1日天下ならぬ、5秒天下ぐらいですか? いい夢みれたでしょう」

「き、さま……裏切ったのか……」

「裏切った? ははは、裏切ったもなにも、元々私はあなたの仲間でもなんでもありません。お互いの利害が一致していたから手を組んでいただけのこと。そんなあなたも利用価値はなくなりました。よくやってくれましたよ」

「ぐぅうーーーー、くそぉおおおおおおお」


 グレイグはその瞳から涙を流している。


「ただ今より魔界は天界の管理下に入ります。特殊権能を持つもの。2大魔王のガルギアとビビアーナの権能は天界で有効活用されます。また魔王は天界からの指名制にします。法律も整備し、平和で争いのない平等な魔界社会が到来することをお約束しますよ」

「貴様……グレイグの部下の……」

「正確には部下のふりをしていたですね。ザニーと申します」

「ザニー、貴様は天界人か……?」

「如何にも」

「くそっ! こんな身近に獅子身中の虫がいたとは!」


 バチン、とザニーは指を鳴らすと、彼は白の僧服のような服装、天界人の公用服に一瞬で変わる。


「ん? ああ、ガルギア。あなたの愛しの孫娘が来たみたいですよ。私の部下たちはヘマをしたみたいですね」

「なに? ああ、カルティア……来るんではないこちらに!」


 カルティアとジーン、そしてマリーナが姿がそこにはあった。



 

「おじいさま!」


 カルティアは倒れているガルギアの元へと走り寄る。


「おお、カルティア。無事だったか、よかったのう」

「これは一体?」


 ジーンは周囲を確認する。

 戦場となっていたはずのその地では、戦闘は止められて、2大魔王の二人は二人とも地面に倒れていた。


「あなたがジーンですね。私の部下がお世話になりました」

「誰だお前は?」

「私ザニーと申します」


(こいつも天界人だ)


 魔剣ヘルデガードから情報がもたらされる。


「お前も天界人か」

「そうです、勘がいいですね。私は天界人です。天上の住人にして、地上の支配者の天界人です。人間界は永らく我々の支配下にありましたが、この度、喜ばしいことに魔界の支配下に加わることとなりました」

「何が喜ばしいか! 魔族たちを舐めるなよ。貴様らが作る法などに縛られると思うな!」

「そうですわ、魔界には絶対不変の掟があります。それは強いものが偉いですわ!」

「より強いものがそのルールを変えるといっているのです。逆らうようなら、逆らったものたちを皆殺しにするだけです。それにしても、くっくっく。前回の魔界大戦の時は介入のタイミングを逃しましたが、今回はうまくいきました」

「……何をいっている?」

「あなたの息子とそのお嫁さん。ビビアーナの手のものに殺されたと思っているでしょう」

「何をいっておる!?」

「彼らを殺したのは私です」

 

 一瞬、辺りは静まり返る。

 平原を吹く風の音が聞こえる。


「な、な、な…………」

「驚きすぎて言葉も出ないですか? まあ、ビビアーナが殺ったようには見せかけましたがね。誤解で数万の魔族の命が失われた訳です。確認はしっかりとしましょう」

「貴様! ふざける――」

「後――コッテリラですが」

「コッテリラがどうした?」


 ビビアーナの目が据わる。


「彼をボロ雑巾のように殺したのは私です」

「ぎぃざまぁああああああああああああああああああ!!!!!」


 ビビアーナの絶叫が戦場に響き渡る。


 ザニーは心から愉快で仕方がないといった風な、黒い笑みを浮かべている。


「くくくくく。あーー傑作でしたよ、無実の罪で殺し合う、脳みその足りない愚かな魔族同士の争いは!」

「貴様ああああ、殺してやる! 返せ! わしの息子と嫁を返せぇ!」

「お前はごろずお前はごろずお前はごろずお前はごろずお前はごろずお前はごろずお前はごろずぅゔゔゔゔゔゔゔッ!!!!」


 ガルギアとビビアーナは地面を這いつくばるながら、ザニーに一矢報いんと近づこうとする。


「はははははっ、立ち上がれもしないその状態で、一体どうしようというのですか? あなたたちは天界で有効活用させてもらいますので、そんなに慌てないでくださいよ」

「パパとママを返して!」


 その時、瞳に涙を溜めたカルティアがザニーの前で叫ぶ。


「カルティア! 危険じゃ、ザニーの前に立つでない」

「おじいちゃんも…………パパとママを返して! おじいちゃんも連れていかないで! カルティア、一人ぼっちになっちゃう! パパとママと過ごした……カルティアの幸せな日々を返して!!」

「毛虫がうるさいですね」


 ザニーは手刀でカルティアを攻撃しようとする。

 間一髪の所でジーンが高速でカルティアを守る。


「マリーナ、カルティアを遠くに連れていってくれ!」

「カルティア、さあ」


 マリーナはカルティアを抱きかかえる。


「嫌だ! おじいちゃんを連れていかないで! パパとママを返して!」


 カルティアは号泣しながら訴える。


「大丈夫だ、カルティア。ガルギアは連れていけせないし、パパとママのかたきは俺がとってやる!!」


 カルティアは泣きはらしたその瞳をまばたきさせる。

 そして小指を出す。


「……うん、カルティアとジーンの約束」

「ああ、約束だ。嘘ついたら針千本飲んでやるよ」


 ジーンはカルティアと約束の指切りをする。

 マリーナはジーンと目を合わせると頷き、カルティアを抱いて、その場から小走りで離れていく。


「ジーンといいましたっけ? あなた今、なんていいました? 人間如きが、天界でもエリートのこの私を?」

「お前を倒してかたきをとるといったんだよ」

「面白くもない冗談ですね。あなたがカルティアを救出する時に倒したのは、天界でも最下級の10階級の天界人たちです。あんな輩と私を一緒にしてもらうと困りますよ」

「うるさい、お前が何級だろうとなんだろうとそんなの知るか! カルティアを泣かした。それだけでお前をぶっ飛ばす理由には十分だ!」

「こっちはその口の聞き方はなんだといってるんだ人間風情がぁ! お前は特殊権能があろうと生かしておかない。生まれたきたことと、私に吐いたその言葉の数々、すべて後悔させてからすぐに殺してやるぞ!」

「おお、やれるもんならやってみろ!」

 

 ジーンは魔剣ヘルデガードを背中から抜き去った。


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