第35話 救出
「お兄ちゃん! お姉ちゃん!」
ジーンとマリーナの姿を確認したカルティアは駆け寄ってくる。
「よかった! 無事で……」
「よく一人で頑張ったわね、カルティア!」
ジーンとマリーナはカルティアを抱きしめる。
「カルティア頑張った! いい子にしてたの、お兄ちゃんとお姉ちゃんが、来てくれるって信じてたから!」
「そうね、頑張ったわねカルティア……」
マリーナはその瞳から涙を流していた。
「お姉ちゃんどっか痛い? 痛いの痛いのどんでけー!」
「わぁあー、飛んでいったわー。カルティア、ありがとうー」
「えへん、カルティア、えらい! 頑張った! だから、ご褒美が欲しい!」
「ご褒美?」
カルティアは部屋にある本棚から一つの絵本を取り出してきた。
「ご褒美、これ!」
カルティアは絵本のあるページを指差す。
そこにはお菓子の家が描かれていた。
「お菓子の家か……」
「それは流石にねえ……ガルギアさんでも用意は難しいかもね」
「お菓子の家難しい?」
「変わりにお姉ちゃんが、カルティアが好きなお菓子作ってあげる」
カルティアは途端、顔を輝かせる。
「カルティア、チョコレートが好き! 後、ケーキも!」
「じゃあ、チョコレートケーキ作ろうか?」
「チョコレートケーキ……すごい! チョコレートとケーキ! カルティアが好きなのが一緒! カルティア、チョコレートケーキ食べたい!」
ジーンはカルティアに両手を伸ばすとカルティアもそれに応えて両手を伸ばし、ジーンに抱きかかえられる。
「いいわねー、カルティア。ジーンに抱っこしてもらって」
カルティアは満面の笑みを浮かべている。
「お菓子いつ作れる?」
「そうね、今から魔王城に戻ってすぐに作ってあげるわ」
「早く魔王城に帰る! おじいちゃんにも会う」
「よし、じゃあ帰るか。イーグルも待たせてるしな」
「イーグル?」
「お馬さんよ」
「お馬さん! カルティア乗りたい!」
「一緒に乗って帰ろうな」
「やった! お馬さんに一緒に乗って帰れる!」
カルティアはジーンの腕の中ではしゃぐ。
マリーナはそんな二人の様子を優しい笑顔で眺めている。
「あれがイーグルだ」
「イーグル、黒いお馬さん!」
「じゃあ、マリーナ、先にイーグルに乗って」
「ん!」
先にイーグルに乗り込んだマリーナにカルティアを渡す。
その後にその後方にジーンも乗り込む。
「うわぁーー、お馬さんの上、高ーーーい!」
「せい! ほら、進むぞ」
「お馬さん歩いてる! ほら見てお姉ちゃん歩いてる!」
「そうねえ。歩いてるわねえ」
「じゃあ、次はスピードを上げるぞ。さあ、せい!」
「わわわわっ! はやい! お馬さんはやい!」
「せい! せい! もっと早くなるぞ!」
「すごい! すごい! すごい! 景色があっという間に過ぎていってく! カルティア楽しい!」
夕日は沈み、すでに辺りは暗くなってきている。
月明かりの中を進むのは危険だ。
今日中にガルギア領の魔王城まで着くのは難しいだろう。
ジーンは馬を操りながら頭の中で、どの町、もしくは村の宿に泊まるかを考えていた。
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