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第29話 籠の中の鳥

 綺麗な屋敷で身の回りを世話してくれる者はいる。

 衣食住に不自由はしていない。快適な生活だとも言えるだろう。

 だがカルティアは不満だった。


「お兄ちゃん、お姉ちゃん……」


 部屋の窓から外の景色を眺めながらそう呟く。

 両親を亡くして、血縁がおじいちゃんだけになった今。

 カルティアの周りにいるものたちは皆、おじいちゃんの家来でカルティアに気を使う。

 一人の子供として接してくれて、かつ、愛情を注いでくれるものは周りにいなかった。


 ガチャ。

 特にノックなどもなく無造作にカルティアの部屋のドアが開く。

 カルティアは表情を固くする。


「これはこれはカルティアお嬢様。ご機嫌如何でしょうか?」

「ザニー、カルティアはいつ、お兄ちゃんとお姉ちゃんに会える?」

「それはもう近日中には。そのお兄ちゃんとお姉ちゃんとやらを今、探してる最中ですので」

 

 ザニーはにこやかに答える。

 但しその目の奥は笑っていない。


「すぐに会いたい。それにおじいちゃんにも会いたい」

「それはもちろんガルギア様にもお会いできますよ」


 今自分がここに囚われていることを、もしかしたらおじいちゃんは知らないのではないか?

 カルティアはまだ幼いがそれくらいの想像はできる。


 ジーンとマリーナと一緒に魔界に向っていた夜。

 目が覚めるとグレイグの部下を名乗る、ザニーという男の腕に抱かれて移動していた。

 お兄ちゃんとお姉ちゃんについて聞くも、そんな人間はカルティアの近くにいなかったという。

 カルティアを見捨ててどこかに行った?

 想像したくもないようなことであった。


 寂しい。また会いたい。

 カルティアは泣きそうになる。

 ここには自分に愛情を注いでくれる存在は一人もいない。


「いつ会える?」

「すぐですよ」

「すぐっていつ?」

「そうですねぇ……1ヶ月後、それとも1年後、それとも……」

「そんなに待てない! カルティア大人になっちゃう!!」

「そういわれましてもねえ。こちらも頑張っているですから」


 ザニーはニヤリと嫌らしい笑みを浮かべて述べる。

 これがおそらくカルティアへの嫌がらせだということを、カルティアは承知していた。

 泣いたら負けだ。だが……寂しい、会いたい、甘えたい。


「うぇええええええん!!!!」


 我慢できずに本気泣きする。

 カルティアから天に向かって閃光が放たれる。


「よし」


 小さくザニーは呟く。

 これでガルギアたちに、カルティアの居場所は検知されたはずだった。

 敵国で憎きビビアーナが支配する領土にカルティアが囚われてる。

 そのことに気づいた時のガルギアの反応が見物だった。


 今のところは順調だ。

 数百年もの永きの間、硬直している魔界の構造自体を変えてしまうような企み。

 ニヤリと口角を上げる。


「ではいい子にしておくのですよ」


 心にもないことを言い残してザニーは部屋から出ていく。


 カルティアはバタンっとしまった扉を睨みつける。

 泣くつもりはなかったのに泣いてしまった。

 ザニーの思うつぼになってしまった。

 悔しい。


「ぐす……お兄ちゃん、お姉ちゃん……」


 窓の外を眺めながらカルティアは愛しき二人を思って、再度そう呟いた。


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