ライザー6話
お待たせ致しました。
「すごい。本当に夢見たい」
「そんなに喜んでもらえるなら連れて来たかいがあるな」
メイの前では大人っぽく振る舞うミユが目を輝かせているのを見ると子供らしくて可愛らしい。まだ会って間もないのにもう色んな顔を見せてくれている。俺はどれだけ彼女にハマって行くんだろう。
「私小さい頃の夢は魔法使いになることだったの。あっちの世界では魔法なんて夢の世界の話だったんだけど……本当にあるんだ」
「昨日だって色々見せただろ?」
「そうだけど、どこかまだ夢を見てる気分だったのよ。でもこうやって魔法の歴史を見て、本当にこの世界では魔法と一緒に生活してきたんだと、魔法が実在してるんだってやっと受け入れることが出来た感じなの」
「そんなもんか。生まれた時から魔法がある身からしたら魔法がない世界の方が想像出来ないからな。そんな世界だったら俺は何してるんだろう」
彼女が興味津々で見てくれるから良かったが、ここはこっちでは初等部の遠足で行くような博物館だ。初デートでこんな所に連れて来たらセンスがないと怒られてしまうようなデートプランなのに彼女はとても楽しそうにしている。
俺は魔法だけで今の地位まで上り詰めて来た。魔法がない世界で果たして俺は生きていく価値があるのだろうか。どうやって生きていけば良いのか想像出来ない。
「そうね……確かに魔法以外の特技無さそうだもんね。でも良い上司とかになりそう。メイがいつもライザーさんのおかげで楽しくやってるって言ってたもの」
「メイはアーノルドと一緒に居た方が楽しいだろう」
「そんなことないわよ。アーノルドさんとのことやみんなとの関係に悩んだりした時もライザーさんが色々話を聞いたりして来たんでしょ? ちゃんと相手の話を聞いて適切なアドバイスを送るって難しいのよ。だからライザーさんなら頼り甲斐がある良い上司になりそう」
「何も特技がなくてもか?」
「ええ、特に突出したことがなくたって良いもの。そう言った能力じゃなくて、みんなから慕われる人柄が重要なのよ。部下がついてこなければいくら優秀な人でも良い仕事が出来ないもの。だからライザーさんみたくみんなから慕われてるのはすごいと思う」
「そっか……サンキューな」
少し照れてしまうがとても嬉しかった。今まで俺は魔法のレベルでは褒めてもらえることが多いが、俺自身の人柄を褒められることは滅多になかったのだ。
俺から魔法を取ったら何も残らないと思ってたのに、彼女のたわいもない言葉でこんなにも心が温まると思って居なかった。
「これは古代文字というやつ?」
「あぁそうだ。昔は魔法陣で魔法を発動させるのが主流だったから、色んな魔法陣が残されているんだ。今もその研究をしているやつもいる。俺もその1人だ」
「ふーーん。私の世界でも魔法陣ってあったのよ。まぁゲームや物語の中の話だったんだけど」
「今度こちらに来るときにそっちの世界の魔法陣とやらを見せてくれないか? もしかしたら参考になるものがあるのかも知れない」
「参考にはならないと思うけど……でもそれはそれで面白いかも知れないわね」
こんな場所で盛り上がるのかと不安だったが、彼女なりに楽しんでくれている姿にホッとする。
「ふふ」
「うん? 何がおかしいんだよ」
「昨日までのライザーさんはちょっと気が張って切る感じがしたけど、今は何か少し空気が緩んでいるというか、柔らかい感じがする。私はそっちの方が良いな」
「そうか?」
思いがけない一言に少し照れてしまう。
「おや? もしかしてライザー様ではないですか?」
……良い雰囲気だったのに邪魔が入った。
機嫌の悪さを多少見せつつ振り返ると、声を掛けたのは年配の男性だった。向こうはこちらを知っているようだが、知り合いではない。
「急に声を掛けてしまってすみません。私はこの博物館の館長なんですが、新施設の魔法が上手く発動しなくて思わず声を掛けてしまいました。ライザー様なら直せるのじゃないかと思って……。申し訳ない」
「見ての通り今日は私用で来ておりますので、そういった話は……」
「良いんじゃない? 私は待ってるわよ」
「…………。じゃあ少しだけなら」
「ひっ」
くそっ。断っても問題ない話なのに彼女にそう言われてしまったら断れないじゃないか。代わりに館長とやらを睨んでおいた。
ろくでもない内容だったらただじゃ置かないからな。
館長がペコペコしながら案内したのはドーム型のシアタールーム。
「ここが最近発見された古代技術を活用して運用しようとしている、思い出シアタールームです」
「あぁ、あの記憶を呼び起こす魔法か。使い道が対してなくて廃れたのだろうと言われてるな」
先日のニュースで見たやつだ。古代遺跡から石板が発見され、新たな魔法が見つかった。しかし使い道が難しく廃れたのだろうと解説者が言っていたな。
「はい。あの魔法のままだと、ランダムに記憶が選ばれてしまうので活用方法がなかったので、そこにどんな記憶を呼び起こすか設定を加えようと思いまして」
「確かに今の技術を融合させればそんなことも可能かも知れないな」
魔法というのは常に開発され続けている。昔からの魔法をパワーアップさせたり、新しく発見された理論を用いて別の用途に使えるようにしたり、そんなことを本来俺は研究していた。
最初はやる気などなかったが、話を聞いているうちに俄然興味が湧いてきてしまった。
「それをどうやって活用するの? 記憶を呼び起こしたとしてもこんなシアターで大勢の人が見ても面白くないんじゃない? 個人的な用途なら良いかも知れないけど」
彼女も話に参加してきてくれる。
ただ待つだけでなく、一緒に参加してくれると待たせてることをこちらも気にしないで済むから気が楽だ。
「まずは美しい景色の記憶を呼び起こそうと思いまして。その場に行かなくとも、行った人の記憶を呼び起こしてみんなで共有しようと!!」
「確かにそれは旅行の疑似体験みたいで面白いかもね」
この館長なかなかやるかも知れない。
「そうだな。それにもしその技術を開発出来たら犯罪者や被害者の記憶を呼び起こしてより正確に罪を裁けるだろうし、活用方法は無限に広がるだろうな」
「そうなんですよ!! さすがライザー様!! 分かってくれて良かったです!! みんなこのドームを作るのに反対して大変だったんですから!!」
「それで何が問題なんだ?」
「その……記憶を呼び起こすことは出来たんですけど、呼び起こす記憶の条件設定が全く出来なくてですね……」
「うん? 全く出来てないのか?」
「はい……全く持ってダメでして」
「良くそれで先に建物を建てたな……」
「それはみんなが反対する訳だわ」
さっきのは撤回しよう。この館長はとんでもなくアホみたいだ。
とりあえずその日はその魔法陣の設計図だけ資料をもらい、持ち帰ることにした。
「なんか悪かったな。無駄なことに突き合わせて」
「ううん、楽しかったからありがとう。それにライザーさんならあの魔法を完成させられるでしょ?」
「……なんか魔法に関してはすごい信用されてるんだな」
俺のことは最初警戒していたくせに。
「まぁ魔法に関しては……ね。さっきの魔法だけど、覚えてない記憶も呼び起こせたり出来るのかしら」
「……やりようによっては出来なくは無いと思う」
「そうなんだ……」
彼女は何か思い出したい記憶があるのだろうか?
はぁ。ただでさえ彼女をこちらの世界に留まる魔法を作り出さなきゃいけないのに、余計な仕事まで増えてしまった。彼女が期待しているならそれに応えなきゃ男が廃る。
「とにかく今日は楽しかったわ」
「あぁ、ありがとう。じゃあおやすみ」
そう告げて彼女にキスをする。
次目が覚めた時には彼女は向こうの世界に帰っているはずだから。
次がいつ会えるのかすら分からない。……全く厄介な人を好きになったもんだな。
もしお待ち頂いていた方がいらっしゃいましたら、更新がかなり遅くなってすみませんでした。
忙しかったのと、他の作品を優先して書いていたのでこちらがなかなか書けませんでした。
次回更新ももしかしたらお時間頂くかも知れません。




