ライザー 第5話
「ちょっと! 今日寝かせないってどういうことよ!!」
俺らは寝る支度を終え、今は寝室のテーブルに向かい合っている。そしてミユは俺が先程した発言に怒り心頭の様子。今日は寝かせるつもりはないから一晩同じ部屋で過ごすと言ったのだ。
「だから、今夜は寝かせるつもりはない。今後こちらの世界に滞在出来るようにするには、こちらでの滞在時間を長くする必要があるんだ」
まだ何も調べてはないが、今までの聖女の例を見るにこちらでの活動が長くなるにつれ、1回の召喚での滞在日数も増えているから、時間も鍵を握るはずだ。
「だからって寝かせないってどういうことよ! ちゃんと説明して!」
そう言われて、この世界の仕組みを説明する。こちらに滞在出来るのは1日だけであること。なぜならこの世界に居ても、元の世界に引っ張られる力の方が強く、寝てる間にその力が働き元の世界に戻ってしまうのだ。一度召喚されているから理解は早いだろう。
「確かにメイもいつも寝ている間に移動してたわね。でもだからって夜中ずっとあなたと一緒にいるってどうにかならない訳?」
「別に手を出したりしないから安心しろよ。お前が寝そうになったら無理やり起こすだけだ。少しでもこちらの世界に慣らす為だから仕方ない。1日くらい寝なくてもどうにかなるだろ?」
俺的には一晩中彼女のことを抱いていても問題ないのだが、そんなことをして良いはずないことは理解してる。彼女の心を得るまでは手を出すつもりはない。流石にそこまで最低な奴にはなれない。
俺がそう宣言をすると、まだ少し納得がいっていないようだが大人しくなる。
大人しくなった彼女を寝室に案内する。もちろんベットは1つしかない。
「ほら、このベットを使え。普段は魔法の研究で寝ないことも多いからあまり使っていない。クリーン!」
彼女がまだ不服そうな顔をしているので、ベットも魔法で綺麗にする。布団やシーツが空中に浮き、一瞬で
ベットメイキングが終わる。
「すごい! これ洗濯も終わった状態なの!? アイロンも掛かってるみたい! 布団もフワフワじゃない!!」
「ああ。俺くらいになるとそれくらい一瞬で出来る。普通は洗う、乾かす、整えるって一つ一つ掛けていくんだがな」
「本当便利ね! 私もいつか使ってみたいな」
そう言うと楽しそうな顔で布団の肌触りを楽しんでいる。どうやら魔法のおかげで先程までの警戒心も解けたみたいだ。今後も何かあったら魔法を見せれば良いかも知れないと心に留めておく。
「じゃあ俺は行くから寝ないよう注意しろよ」
「えっ?」
彼女が一瞬寂しそうな顔をするのを見逃さない。
「一緒にいて欲しいのか?」
「ち、ちがっ」
「そんなに一緒が良いなら一晩一緒に居てやるよ」
「違うわよ! 寝そうになったら起こすって言ってたのに出て行くのかと思って」
「魔法を使えば別に一緒に居なくても寝そうかどうか分かる。でもミユが一緒に居て欲しいならその期待に応えよう」
そう言うと椅子をベットの横につけて座る。異世界に来てメイも居ない状態だ。一人で一晩起きてるなんて心細いに決まってる。きっと彼女が自分から寂しいなんて言うこと出来ないからこうして俺は少し強引に彼女の側に居て少しずつ支えて行くんだ。
「もう! 違うって言ってるのに」
「良いから今夜は寝かせないから覚悟しろよ。たくさん時間はあるんだ。お互いのことを知って行こうぜ」
そうして俺達は一晩中2人で色々な話をした。彼女の向こうの世界での生活やメイとの関係。今までも男性と付き合いがあると知った時には少し凹んだが、この世界と恋愛事情も違うのだから仕方ない。そう割り切るしかない。
そしてミユにせがまれて、俺がメイと出会った時の話をするとかなり驚いていた。メイが異世界に来たその日に泣くことや動揺する様子も見せず、堂々と王様と話して契約を結んだと言う話だ。
「めい……。そんなに強い子になっていたのね。ずっと私が面倒みなきゃいけないと思ってたのに知らなかった」
「誰にだって他の人に見せない一面ってのはあるだろう。お前だってメイに見せてない一面があるだろ? だからそんなに気にする必要はないと思うぞ」
メイのこちらでの様子を知って落ち込むミユに声を掛ける。やはり彼女はメイへの依存心が強いのだろう。自分が支えなきゃという一心で今まで耐えて来たのだから。
「そういうライザーさんもそういう一面あるの?」
「知りたい?」
「……遠慮する」
少し意外そうに聞く彼女にそう返事をしたら、一瞬迷ったが呆気なく断られてしまった。
俺は彼女程色々抱えては居ない。だがこうしてフラフラ好き勝手やっているが一応侯爵家の人間だ。三男という立場で甘い蜜も苦い蜜も沢山吸って来た。そういった一面は彼女から見たら意外に見えるだろうな。
そして彼女といつか結ばれる時にはそれがきっと障害になる。その時までには俺のそうした一面も彼女に伝えて行かなければ行けない。
結局2人で一晩中語っていたら、いつの間にか日が昇っていた。
「無事に2日目を過ごせたようで良かった。今日はどこか行きたい所はあるか?」
「メイ達と一緒に過ごさないの?」
「昨日付き合いたてのヤツらの邪魔は出来ないだろう? まぁそれを言ったら俺たちもそうなんだけどな」
そう俺が告げると少しむくれるミユ。そんな表情を見せてくれることも少し心を開いてくれているのかと思えて嬉しくなる。
「安心しろ。夕方には合流する予定になってる。だからそれまでは2人で過ごそう。どこか行きたい場所や気になる所はあるか?」
「行きたい所って言っても昨日来たばかりだし……」
「それはそうだよな。近場で遊びに行けるところとなると……、魔法博物館はつまらないだろうし、市場は昨日行ったしな」
「待って、その魔法博物館って何!?」
「昔の魔法道具や魔法の歴史を学べるんだが、子供が遠足とかで行くような所で面白味はないぞ?」
「良い! そこに行きたい!!」
「初デートにしては微妙だが……まぁ良いか。期待はずれでも文句は言うなよ?」
「分かったわ。自分で行きたいって言ったのに文句は言わないわよ。じゃあ早く行きましょ!」
「その前に朝ごはんを食べないか? 行くのはそれからだ」
せかすミユを落ち着かせてから朝ごはんを食べて俺たちは魔法博物館へと出掛けた。
遅くなりました……。




