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 なるべく過程を省略すると、遠藤が首を縦に振るまで女子中学生に脚にしがみつかれるという拷問を受けた。

 殺し屋と異能者という中々レアな組み合わせの男女を乗せたバスが、やがて終点に到着する。御影温泉。山奥に位置する小さな温泉街。開いたバスの扉から降車すると、冷たい草木の匂いが遠藤を出迎えた。続いて葉月も降りて来る。憔悴しきった遠藤と違い、彼女の方は満面の笑みだった。

 遠藤はリュックサックと竹刀袋を担ぎ直しつつ、「……さっきも言ったが」と切り出した。「稽古つけてやるのは俺が滞在する二週間だけだ。それが終わったら大阪に帰るからな」

「はい大丈夫です! その間に必ず遠藤さんの技を盗み切ってみせますから!」

「俺の剣術身につけたところで役に立つとも思えんがな……」

 小規模な旅館が乱立する通りを二人で歩く。すっかり日は暮れ、温泉街には物音一つない。宿泊客はほとんど旅館の中だろうか。

 小さな売店の前を通り過ぎ、何軒かの旅館をスルーし、一本道の奥まで行く。すると他の旅館と比べると、幾分か大きな建物が見えてきた。立派な近代和風建築が佇んでおり、看板に書かれた『久穏荘(くおんそう)』の表記から、ここが葉月の実家なのだと確信した。

 葉月は旅館を背に遠藤の方へ振り向くと、笑顔で言った。「ようこそおいでくださいました。久穏荘の一人娘として目一杯おもてなしさせていただきますね!」

「せいぜいクレーム入れられないよう頑張ってくれや」

 葉月の脇を通り抜け、以外にも自動ドアだった入口を潜る。

「こっちは『お客様』として好き勝手させてもらうからよ。途中で根上げても知らねえからな」

「望むところです! 明日からよろしくお願いしますね!」

 三流の殺し屋と異能の力を扱う少女。

 数奇な巡り会わせの結末はどこに行き着くのか。それは、まだ誰にも分からない。

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