表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/28

4

 どこかの無人駅のようだった。日に焼けて色褪せた時刻表を乗せた掲示板と、駅名の書かれた看板だけがぽつんと存在し、それ以外には何もないようなところだった。伊庭(いば)は掲示板に背を預けながら、耳にスマートフォンを当てていた。

「……はい。黄昏の骸とジェフリー=ダーマーを利用した作戦は失敗しました。霞沢(かすみざわ)葉月は生きています」

『やはり支配下に置けない怪恨では上手くいかないか』スピーカー越しの声は特に苛立った様子もなく、淡々とした調子で言った。

「いかに強力な怪恨と言えども、こちらの指示を受けつけなければ、ただ本能のままに動くだけの獣と変わりません。積極的に滅恨士を狙うような事はしませんでした」

『そうみたいだな。……そして、その過程で一部の一般人に怪恨の存在が知れ渡った』

「昨日、金沢駅にいた二人……一人は東京の警察のようです。もう一人……日本刀を持った男ですが、奴については素性を突き止められていません。今最も霞沢と近い関係にあるのが、あの男です。どうにかして消しておきたいですね」

『滅恨術こそ使えないが、腕は確かだろう。少なくとも県警の連中よりは「イレギュラー」になりうる。順番は問わない。()()()()()()()使()()()()()()()()

「承知致しました。必ずや、あなたの期待に応えてみせます」

『気負うなよ。伊庭、お前はあくまで()()()()()()()だ。最も重視するべきは、生きて予定の日を迎える事だ。無理だと思ったのなら、すぐに退け』

「お気遣い痛み入ります」伊庭は通話を終了すると、「――出番だ。ゴミ共」と虚空に向かって言った。「まずは偵察も兼ねて御影温泉に侵入してこい。滅恨士と一般人は無視だ。()()()()()()()()()()()()()()()()

 伊庭の周囲の空間が不気味に歪んだ。渦を巻くように闇が集まり、小さなブラックホールのような紋様がいくつも浮かんでくる。そこから小動物ほどの大きさの何かが何匹も産み落とされていく。容貌のベースは犬。しかし四本足の先端は人間の手足のように指が枝分かれしていた。顔についても、目と鼻の形は無理矢理人間のものを継ぎ合わせたかのように不自然だ。人間と犬の出来損ないをキメラにしたような不気味な化け物の群れを付き従えた伊庭は、醜悪な見てくれの顔面をさらに歪めた。

「行け、下級怪恨(ゴミ)共。存在価値のないお前達に生きる意味を与えてやる。あの方のために命を捧げろ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ