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生まれ変わった世界で。  作者: とにあ
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カテジナ

「カテジナ、情報の取得は可能?」

 問題はなかった筈だがタマキが圏外と騒いでいたこともあって気にはかかる。情報の取得は私の隣人カテジナの能力で通信端末の機能も補っているのは知っていた。

 モニターに映る『無問題』という単語。

 カテジナは高範囲の情報を拾う。現在進行形で飛び交う情報。時には現在から過去に向けて、情報を選ぶことなくひたすら拾っていく。尋ねて返ってくる情報は最低限で、私が事細かく欲しい情報を要求していく必要がある。

『電子通信の送受信は可能?』

 タップする。

『無問題』

『この海域に通常通信網は届いている?』

 気にすべきはこれではないだろうか?

『無問題』

『通信不能になる原因可能性は?』

『環境管理者の指向性の差異有り』

『環境管理者の敵性要素は?』

『無問題』

 うてば響くように返る応答。

『近辺に敵性要素の有無は?』

『複数有り』

 ないはずがない。タマキの隣人が契約遂行を求めて敵性隣人を倒しているのだから。

 カテジナは頭が良過ぎて扱い難い。もちろんカテジナは私がそう感じていることに気がついており、その上で私の繰り出す質問や態度を楽しく観察しているのだ。たぶんその結果共死にになってもこれもひとつの結果だと不満を抱かないような気がしている。

 腹が立つほどかわいいと思う。

『登録対象との通信で不可になっている相手は?』

『ゼロ』

 答えはタマキも含めてゼロ。

『シルベと、かの隣人は口にしました。興味深いです』

 それより未知を知りたいとカテジナは要求してくる。下手したら敵性隣人を呼び寄せかねないなと思わせる好奇心だ。

「空、飛べるかなぁ」

 ふっと横から聞こえてきた声と言葉にちょっとなにを言ってるんだと思う。

『飛べない可能性があるのですか? ミコトの不備ですか?』

 もっと直接的な感想が目の前にあった。タップして画面を消す。ミコトは人の端末を覗くような真似はしないけど。

 実感はないのかも知れないがミコトは一度は飛んでいる。とんでいる間、窓のない部屋に押し込められたわけだが、室内はそこそこの広さがあって快適だった。(むしろスティミアが私達のことも回収してくれるとは思っていなかった)

 ミコトの家のプレイルームを模倣しているような部屋で、椅子が欲しかったといえる。

 まぁそのあたりの環境問題はさておき、きっと間違いなく。

「飛べるでしょうね。ただ、現在出ているというズレが落ち着いてからではないですか」

 視界がぶれるとか共存共生体としての変化さえ終えれば、きっとミコト自身が好きな時に判断して飛べるんだろうなとは考える。融合時にブレや混乱不具合が一時的に発生することは実際によく聞く話ではある。

「そっかー。ズレかぁ。まぁ寿命とかもズレがあるって言ってたしなぁ。どうなるんだろ」

 寿命。短命種は長命種に引き摺られるとも、強い方に寄せられるのだとも言われているアレだ。

 カテジナは『私達の契約深度では無問題』と伝えてきたアレ。確かに私は本契約をなしたミコトのように身体的変化、融化要素はない。それを言えばタマキもだ。

 それだけ深い共生を選んだミコトはこれからどうなるんだろうか?

 私はいつまでそばに居ることができるんだろう?

 そろりと忍び寄ってきた不安を私は振り払った。

 今はまだここにいる。

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