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生まれ変わった世界で。  作者: とにあ
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ソナー①

 数日前に話があった。

 それは船旅に出ないかと言う提案だった。

 最近、能力狙いの就職勧誘が多いし、それもいいかと思ったんだ。なにせおれは死霊退治を生業にしたいわけじゃない。何をしたいか決まっているかと問われれば否だけど。それでもしたくないということだけは決まっていた。だから、それ用にスケジュールを組んでいた。

「でも、起きたら海上は誘拐だと思うんだ」

 もたれた手摺りのむこうには青い空と青い海がひろがっている。ゆるい揺れは波かエンジンかどちらだろう?

「冒険の旅に出ます。って宣誓書は書いてるんだから捜索はないけどね。……まぁ、驚いたねぇ」

 すぐ隣でおっとり落ち着いた様子でタブレットを触ってる幼馴染みは驚いてなんてないだろとツッコムのも虚しい。

 確かに近く冒険の旅に出る予定で学校に宣誓書を提出している。レポート提出で不足出席日数に換えてくれるのだ。急に休学してもその宣誓書があることで学校は一切の責任から解放される。

「おまえ主催じゃないのな」

「主催じゃないよ。補佐はしたけど。足りない物があったら今のうちなら次の寄港地で用意してくれるって」

 実に心外そうに言っているけれど、どう聞いたっておまえじゃないか。そんな悪態が喉の奥でイガイガする。

「確認してくる」


 幼馴染み二人とは家族ぐるみで仲がいい。

 日生(ひなり)深理(みこと)山辺(やまの)武蔵(むさし)

 それぞれにちょうどいい距離感を維持しているとおれは思ってる。

 思いつきで動くシスコンミコトに悪巧みするムサシ。巻き込まれるおれ。この認識は口にすれば他の二人からのブーイングがあっさり想定できるから言わない。

 そんなことを考えながらおれは荷物確認のため、起きた部屋に戻ることにした。所持品の有無は命に関わることだから。

 折り畳み式のソファーベッドに引き出しタイプの机。壁に設置された収納スペース。シングルベッド一台分プラスアルファ程度の部屋がおれに与えられた個人用スペースだ。

 事前に準備していた『冒険の旅』グッズ鞄が無造作に収納スペースに突っ込まれていた。無断で触られた苛立ちはあるけど、ムサシの奴が手配したのだろう抜けはなさそうに思えた。

 着替え一式と密閉型ゴーグルの予備、マスク。マスク用フィルター。目薬に抗アレルギー薬。大判のストール数枚。

 この旅がどのくらい続くのかによっては心許ない荷物だけど最低限即死は免れた気がする。

 手に当たった携帯端末をオンにすれば、圏外マークが主張していた。


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