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心の詩集  作者: ばっちい
4/5

静かな涙。


それは夜の11時頃の事。


水を啜る音で僕は目を覚ました。


起き上がり隣を見遣るとそこには小さな女の子が頬を濡らしていた。


ギョッと驚いた僕は慌てて小さな女の子の頭を撫でた。


すると「お前じゃない」という意味か、安心したのか「ママ!」と小さな声を上げた。


僕もかつて、小さな頃に夜中に起きた時に母親がいなかった時、置いて行かれたと勘違いして泣いた。


それだと即座に分かった僕は母親を呼んだ。


慌てて駆け付ける母親に抱かれたその子は安心して泣いていた。


ほっとした僕は眠る事にした。


声を上げずに静かに泣いていた小さな女の子に自分を重ねながら。








冬の寒波が訪れる時期だった。


僕は希望を見出せずにベッドで眠る事しか出来なかった。


TVもネットさえも興味が抱けず生きてても楽しくないと心から思っていた。


すると、窓の外から猫の鳴き声がした。


母親とはぐれた迷子の仔猫だった。


母親を捜している必死な声に動かなかった身体が自然と動いた。


外に餌を置いた。


野良猫だったのか僕には決して近寄らなかった。


部屋に戻り仔猫を観察していると警戒しながら恐る恐る餌を食べていた。


僕はほっとしてまたベッドで眠った。




次の日、また仔猫が鳴いていた。


餌を置いた。


昨日よりも素直に餌を食べていた。




天気予報によると来週にも寒波が来るそうだ。


あの小さな仔猫が外の寒さで凍えて死んでしまうと危惧した僕は仔猫を家の中へと誘導する事にした。



餌を窓を開けて部屋の中に置いた。


そしたら恐る恐る中に入って来た。


でも、僕が近づくと逃げてしまう。


窓は開けたまま、冷気で冷やされる部屋で僕はじっと猫を少し遠くから見守った。


餌が無くなるとその仔猫は外へ戻った。




部屋が温かいと理解したその仔猫は次第に部屋で寛ぐ様になった。


少し遠くで見守る僕に徐々に自分から近づき匂いを嗅ぎに来た。


窓を閉めても退路を絶たれたと混乱する事は無かった。



僕は無事に仔猫を寒波から救えた。



僕に懐く仔猫を見て、心から喜んだ。



--そうか。救われたのは僕だった。



静かに僕は泣いた。



仔猫が僕の生きる希望になっていた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] こんばんは。 仔猫と「僕」の交流、素敵ですね。 少しずつ仲良くなって、お互いが心の支えになる関係になっていくって良いなと思います^^
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