夏休みの宿題
桃子は長所と短所が両極端だ。
切羽詰まらないと行動しない、しかし行動するときは爆発的な瞬発力で、周りを巻き込みながら結果を出す。
桃子に巻き込まれた人たちに共通する感想は、「目標を達成という充実感があった」が多い。
明るく活発、いつも楽しそうに笑っているせいか、桃子には友達が多い。どこにいても目立ち、群衆に紛れてもすぐに見つけられる。
しかし団体行動では突然思いついたまま単独行動し、行方不明になっては周りを心配させる事もある。
幼児の頃はいきなり走り出す事が多く、車にはねられそうになった事が度々あった。ついには腰に縄をつけさせられ、お出かけの時は犬の散歩状態になる。
こんな性格のため基本的に計画性がない、そしてそれが問題になる事が多い。
夏休みの宿題はその典型だ。
海外旅行までに宿題を終わらせようという話は、約束というより努力目標であり、誓いだった。
夏休みが始まってすぐに、桜子と桃子は宿題にとりかかった。
しかし、学期末に先生達から渡された宿題の量は多い。実は桃子の心は夏休み前に折れていた。
即座に桜子に泣きつき教えてもらった。
ここまでは良かったが、四分の一ほど終わった所で事件が起きた。
お父さんが仕事帰りのお土産に買ってきたケーキを家族で食べた。その時、桃子は自分の部屋で宿題に集中しており、後で食べるつもりでいた。チョコレートケーキを食べたいから、それは食べないでと桜子に伝言する。桜子はわかったと答え、居間に行く。
お父さんはいつものケーキ屋さんから、種類の違うケーキを六個買い、家族が好きなケーキを選んで喜ぶのを見るのが好きだった。欲しいものが被ったらジャンケンで誰が食べるのかを決めるのも楽しいと思っていた。
たまたま不運なことに、ケーキ屋さんのミスでこの日はケーキが一つ少なかった。不幸にも入れ忘れたケーキはチョコレートケーキだった。
家族はそれぞれ自分のタイミングでケーキを食べ終わり、一時間後、桃子がケーキを食べに居間に行く。
あるはずのケーキが無い。
冷蔵庫に入っているのは、白い空箱だけだ。
「なんで?!、あれ?、ないよ!、あたしのケーキ!」
この後、誰が食べたのか、どうしてチョコレートケーキをとって置いてくてなかったのか、家族を、特に桜子を責めてしまった。
ケーキ屋のミスだと真相は後で分かったが、ケンカをした後ではもう遅い。
桃子は優しい大好きな桜子を泣かせてしまった事を大後悔し、話しかけられなくなった。
後々仲直りはしたが、どうやって仲直りするかに集中し、仲直りして旅行から帰ってくるまで、宿題のことなど忘れ去っていた。