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初ドラゴンです6


 私の疑問「この子が飛べるようになるまでどのくらいかかるのでしょう」、というのが杞憂だったというのはその後すぐに分かりました。

 一日ぐっすりとピューロと寝込んで、起きてみればなんとピューロは飛んでいたのです。ふっつーに飛んでいたのです。はて、あの小さな翼に自重を支える力がないのは、さしもの私でも理解できます。


『親のドラゴンになってもそれは言えるね。いくら翼が大きくなったといっても、あの巨躯を支える力があるかと言えば、それは無いと断言できる。不思議な斥力が働いている、と僕は考えてるよ。そうとしか言えないからね。』


 なるほど道理です。

 ピューロを見ても明らかに飛ぶには叶わない翼に、しかし飛んでいる姿には、不思議な力が働いているとしか言いようのない、理解のできない現象が確かにありました。

 さて、では次に試すべきことをエアさんに提示されたので私はそれを試していました。


「いきますよ!ピューロ!」

「ピロ!」


 ピューロの小さな足を持ちます。ピューロの力自体はリンゴなどを持たせてみて試してみました。そのうえで、私を持ち上げきるには足りない、ということは十分に分かっていたので、今回の実験ではエアさんが下から私を持ち上げてピューロが私を支えるという形でした。その小さな腕でピューロは懸命に私の手を持ってくれます。今、頑張ってくれているその姿を見ながらこういうのはあれなのですが、その、か、かわいい。

 と、そんなこと考えてる場合じゃないです!


「エアさん大丈夫ですか?!」

『大丈夫だけど少し重たいね。…蹴らないで、真面目な意見だから。』


 腹立ちに蹴ってしまいましたが、茶々よりもバランスを保つのが大切です。エアさんとピューロが支えてくれてても、私がバランスを崩してしまい、落ちてしまえば意味はないのですから。

 今回の実験ではそれなりの高さまで上がってみるという事で、エアさんが落ちたら痛そうな高さまで上がっていきます。


『んじゃ、降りるよ』


 こうして数分間と思えない長い時間の空中散歩を終えて、何とか地面に降り立ちます。その地面すらも空中に浮かんでいるとなれば、これはもう何が何なのかわからないですね。

 疲労感よりため息を吐きながら汗をぬぐいます。


「さすがに緊張からか疲れますね」

『まだ睡眠期間の影響が消えてないのかもね。まだまだ体力が戻り切っていない証拠に、ほらまだ歩くのがおぼついていない。これじゃ暫く地上に戻るのは無理だね。』


 あらら、さすがのエアさんです。見抜いていらしました。


「そうですね。もうしばらく、ゆっくり筋肉をつけるとしましょう」

『およそ乙女とは思えないセリフだね。ははっ、冗談だから、ただの茶々だから叩かないで。』

 エアさんの冗談とは分かっていてもだんだんと親しみが出てきたことを実感できるその軽口に乗っかってしまいます。頬がほころびます。


「ぴゅろ~」


 私とエアさんの攻防にピューロが参戦してきます。


『ちょ、ちょっ!』


 体制を崩したエアさんが立てなおるためでしょう、下から潜り出てしまいました。

『全く、まだアイも体力が戻ってないんだから、無茶はしないでほしいよ。』


 この後も少しの間、エアさんがご機嫌斜めになってしまったのも、また私はおかしくなって笑ってしまいました。でも、そんな私でしたが、微かな不安がありました。なんだか悪い予感がしていたのです。記憶は相変わらず戻りませんし、地上に人は見つかりませんけど、それでも私にとってエアさんとピューロがいてくれればいいと思っています。逆に、エアさんとピューロを失いたくないと、私は確かにそう思っているのです。

 どこかで、嫌な予感を感じながら、しかし今は笑顔でいるのでした…なんてね。

 …どうしてでしょう、フラグという単語が頭からこびりついて離れないんですけれど。


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