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第6話 イカした思考

 帰宅後、家にある古いパソコンで僕の症状を調べて見ると、『多重人格』という単語がヒットした。正確には解離性同一性障害、というみたいだけど馴染みがあるのはどっちかっていうと前者の方だろう。

 

 幽霊とか、宇宙人とか、そういうものはあまり信じていないタチで、多重人格においても僕は割と懐疑的だ。


 だが、変なことが起こっているのは事実。多重人格も可能性の1つとして考えなければならない。


 しかし、こういう精神関連のものっていうのは治療が難しく、病院なんかあまりあてにならないんだよね。過去にそういうのにも手を出したことがあるのだけど、特に話すことのないカウンセリングに、頭がフワフワするだけの薬、結局は自分で何とかするしかないのだ。


 何とかすると言ってもイカした計画があるわけでもなし。まったくのノープランである。


 そういえば、多重人格の話じゃないけど、目が覚めたらある男女が入れ替わっていたっていう映画が何年か前にヒットしていたよね。


 その映画で入れ替わっている人と意思疎通を図るために自分のノートでやり取りをするシーンがあったような気がする。つうか、あった。そんな感じで別の人格とやり取りすることは出来ないだろうか。人間、言語的なコミュニケーションを取って平和的に解決するのがベストだと私は思うのだけど、どうだろう。


 さて、思い立ったが吉日。早速ノートから1ページ分切り離して、油性ペンで『お前は誰だ?』と書いて部屋の壁に貼り付ける。


 もし自分の部屋で人格が入れ替わったとき、その人格が誰なのか、その答えを紙に書いてもらう。その人格がよほどの捻くれ者じゃなければ書てくれる、はず。


 ジリリリリリリリリ!


 壁に紙を貼り付けたまさにその時。滅多に鳴らない電話のベルが鳴った。


「まさか、僕の別の人格から電話がかかってきたわけじゃないよな……?」


タイミングがタイミングなので、緊張しながら受話器を取る。はたして、その相手は――!?


『あ、紡くん? 私、早紀です』


 な、なんだ早紀か。驚かせやがって……。


『紡くんの声が聴きたくなって、つい電話してしまいました』


 早紀は照れ臭そうに笑う。


「……言っておくけど、電話の声は僕の声じゃなくて機械の合成音だぞ」

『それでもいいんです。合成音でも紡くんのなら』

「実は今早紀と喋っているのは紡じゃなくて紡型のロボットなんだ」


 そんな冗談を言って、からかってみる。


『ロボットでも紡くん型のなら大好きです』


 そしたら強烈なカウンターが返ってきた。一発K.O.になりそうなところをなんとか踏みとどまる。


「……恥ずかしいからやめてくれ」

『ざんねん、ロボットは恥ずかしがりません』

「分かった、僕の負けだ」


 なんだかすっかり普通のカップルみたいになっている。

 同年代の女の子に大好きとか囁かれると、なんかこう、頭がクラクラとするね。でも僕は騙されない。その声は機械の合成音なのだ。


「前々から思っていたけど、早紀の敬語とタメの混じった言葉遣いって癖なのか?」

『小さい頃、父から敬語で話すよう教育されていて……でも最近は普通に話すようにしているんですけど、なかなか抜けなくて……混ざっちゃっています』


 えへへ、と笑う早紀。そう言っている側から混ざっています。


『あ、帰るときに言い忘れていたんですけど……紡くんが体育館裏で暴力を振るわれたのは多分、私のせいだと思うんです』

「どうして早紀が? まさか人を遠隔操作する能力の持ち主なのか?」

『ち、違います。実はあの先輩から過去に告白を受けたことがあって、その時はお断りしたんだけど、なかなか諦めてくれなくって、それで……』

 

 早紀の話を要約すると、諦めきれずにいた先輩はどうにか振り向いてもらおうと早紀にストーカーまがいの行為を働いていたそうだ。

 そんな時に起こったのが、例の妊娠告白大事件。

 狙っていた女が知らない男に取られたんだから、そりゃブチ切れるわけで。腹いせに僕に暴力を振るうことにした、というのが理由らしい。


 へっ、馬鹿馬鹿しい。

 結局、教室でのやり取りはどうでも良くて、最初から僕に暴力を振るうつもりだったのだ。結局見た目通りの人間だったってことだよ。外見は内面の一番外側っていうしね。つかさ社長は正しかった。


「……別に早紀のせいじゃないだろう」

『でも、私が教室で妊娠したことを告白しなければ紡くんも怪我をせずに済んだのに……』

「デモもストもない。百パー先輩が悪いから気にするな。もしストーカー行為が続くようなら僕に言うんだぞ」

『う、うん……ありがと』


 なんて嬉しそうな声が受話器から聞こえてくる。


 そして言ってから僕は考える。果たして僕にストーカーを撃退する力があるのだろうか、と。


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