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いつもと違う空の下で想うおはなし

サブタイトルは「カエルのお買い物」です

-*-*-*-*-*-


ほしいものは

いつもこにある

そこはそんなおみせ

しあわせもたぶん

うってるとおもうんだ


-*-*-*-*-*-




昼間なのか夜なのかよくわからない。

マランスはそんな柔らかな薄闇に包まれているような、独特の雰囲気を持った大陸です。

緑溢れる森林かと思ったら木ではなくクリスタルだったり、見たことのない生き物と出会ったりするところ。

そんな不思議な場所、マランスは星の海に浮かぶ大陸で、ゲートでしか行くことができません。その周りには水の代わりに星々が光っています。

暗い海を覗き込むと思わず身が竦むと言います。底が見えない深淵が恐怖を呼ぶのだそうです。

もちろん、陸と海の間にはマランスを管理する魔法使い達が見えない結界が張っているので、落ちる心配はないのですけどね。


そんなマランスには二つの街があります。

光溢れる騎士の街、サン。

闇を抱くネクロマンサーの街、ダーク。

どちらの街も近隣には多くの店があり、お買い物に最適なエリアとなっています。

特にサンの街はぐるりと囲む城壁の中に大小様々な店がまとめられており、買い物客が多く訪れる場所です。


そんなサンの商店街を、カエルはゆっくり歩いていました。

「これもいいなあ。でも高いな」

実はサンの物価は他より少しお高めです。でもそれは欲しいものがすぐに見つかるサービスへの対価なので仕方ないのです。


カエルはただひやかしに来ているわけではありませんでした。

実は明日とても大事な用事があり、そのためのアイテムを探しているのです。

ちなみに今日は月に一度の店休日。帰りが遅くなっても店に影響はないので安心です。


そんなわけで、カエルはのんびりと物色しているのですが……。


「ない」


目的のものは見つからなかった模様です。


仕方なく、いったん役所に戻ってみました。役所にはたくさん人がいますので、情報が手に入ると思ったのです。

「すみません、ちょっといいですか?」

カエルは冒険者を片っ端から捕まえて、近くに品揃えのいい店はないかと尋ねました。

大半の冒険者は小さなカエルに興味を示さず、誰かのペットかなと呟いて去っていったのですが、何人かは店を紹介してくれました。

世知辛いだけの世の中ではないのです。


しばらく聞き込みを続けた結果、門を出てしばらく進んだところに大きな店があることがわかりました。

ホワイトピッグという、親しみがある名前の店です。

店舗は門を出てすぐ、サッカーコートの近くとのことでした。

カエルは丁寧に礼を述べ、役所をあとにしました。


厩舎を左手にまっすぐ進んで門を出ると、たくさんの店がありました。価格もサン城内より手ごろのようです。


それでもカエルの捜し物は見つかりませんでした。


カエルはしばらくその近くを探索しました。

珍しいクリスタルやキノコが広がる平原が心をウキウキさせてくれます。店を探すのも意外に楽しいです。


たっぷりうろついて一時間経過。


そこで、カエルは気づいたのでした。


「迷った」


誰もが予想できる結果ですね。


とりあえず勘を信じ、適当に進んでいると、見たことのない大きな魔物に出会いました。

「ウマソウ」

魔物が呟きました。

カエルは一目散に逃げ出しました。


「マテ、トリニクアジ!」

「違ーう!ニワトリがカエル味なんだい!」


味はさておき、そんな風に減らず口叩きながら、カエル必死になって逃げました。

隠れながら走り回り何とか魔物から逃げることができたのです。


ほっしてへたり込んだ場所は、人気のない真っ暗な平原でした。

「あー、困った」

カエルは途方に暮れました。

しかしここでめげないのがこのカエルです。

「ケ・セラ・セラ♪なるようにーなるぅ~♪」

音楽的センスのないカエルが歌うと、近寄ってきていたバンパイアバッドがそっと立ち去りました。ある意味攻撃的な歌のようです。


歌いながら歩いていると、近くの家からクマが飛び出してきて叫びました。

「やかましい!」

もっともな意見です。

カエルは頬を膨らませましたが、住人がいたことに安心し、事情を説明しました。

「あの店に行きたいのか。逆方向だぞ」

クマは呆れ声で言うと、豪快に笑いました。

「ここからだと結構遠いぜ。仕方ねぇ。ゲート出すからくぐってけ」

親切なクマです。

カエルは丁寧にお礼を言いました。

「礼はいらねぇから、もうここで歌うなよ」

クマはゲートを出しながら言い、にやりと笑ったのでした。


青いゲートをくぐると、目の前に大きなサッカーコートが飛び込んできました。

振り返ると、サンの城壁が見えます。

あららこんなに近かったんだ、とカエルは思いました。


紹介されたホワイトピッグは本当に大きな店でした。品揃えも豊富で見ていて飽きないほどです。

それでも、残念ながらカエルの捜し物は見つかりませんでした。


「ないなー」

ぽつりと呟いたとき。


「何かお探しで?」

後ろから優しい声が聞こえました。


振り返るとそこには真っ白なブタがいて、にこりと柔らかな微笑みを浮かべています。

「いらっしゃいませ。店主のシロコです。私どもでできることでしたら協力しますよ」

これはよかった。

カエルは事情を説明しました。


「なるほど。少しお時間いただけますか?」

話を聞いたのち、ブタは後ろにあるコミュニケーションクリスタルに手を伸ばしました。

「あ、もしもし、いる?」

コミュニケーションクリスタルの向こうから返事が聞こえました。

「実はお客様からこういうアイテムをリクエストされたんだけどある?あ、そう、在庫あるのね。了解ですー」

ブタは何度も頷くと、コミュニケーションクリスタルを置いてカエルに向き直りました。

「すぐ届きますので、しばらくお待ち下さい」

「ありがと。お代は?」

「まだ在庫ありますし、499gpでいいですよ」

安さに感激し、カエルはぴょんと跳ねました。

「お客様の笑顔が私どもの誇りですから」


それを見たブタが笑ったのと同時にどこからともなく青いトカゲが現れると、カエルにアイテムを渡して去っていきました。

びっくりしているカエルにブタが一言。

「無口な相方でして」

それからとても困った顔をしたので、カエルは思わず笑ってしまったのでした。




次の日、カエルは手に入れたアイテムを箱に入れ、店に行きました。

カウンターではいつものようにウシが開店準備をしています。

「あら、早いね」

気配に気づいたウシが顔を上げると、ちょうどカエルが目の前にいます。

それから驚くウシの鼻先に箱を突きつけて、こう言いました。

「Happy Birthday ♪」

そう、今日はウシの誕生日だったのです。

「憶えててくれたの」

ウシ箱を開けると、そこには金色に輝くバインディングブレスレットが1つだけありました。

「これからもよろしく」

言って、偉そうに反り返ったカエルの胸にも同じものが光ります。

「こちらこそよろしく」

ウシの笑顔を見たカエルはサンの店に心から感謝をしたのでした。

カエルさん→カエル

ウシくんもしくはウシさん→ウシ

に、修正しました

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