Intermezzo : 眠れるお城のめそめそお嬢さん
「どうしよう」
その声に答えてくれる者などいないというのに、それでも、そう呟かずにはおられない。
自分のしでかしたこの惨劇の意味を、少女はきちんと理解していたから。
自分のような、生きているのがおこがましい生き物が、まだおめおめと生き恥をさらしているというのに。 それを享受してくれていた者たちに対して、こんなやり方でしてか、自分は応えられないのかと思うと、目眩がするほど歯痒く、涙の根も乾いてしまうほどに情けなかった。
「ちがうの」
顔を両手で覆っても、目をきつく閉じても、まぶたの裏には己の所業がはっきりと浮かび上がる。 所詮、自分の罪から逃げることなど、不可能なのだ。
「ちがうの」
いやいやをするように首を左右に振ると、銀髪が窓からの光を反射させて万華鏡のように輝く。 その美しさを認めてくれる者は、もういない。 乾ききったと思われた涙が、またしても頬を濡らすその様を見る者は、もういない。
もう、誰もいないのだ。
「どうして……」
誰を憎めば良いのだろう? 自分以外に、誰を責め立てれば良いのだろう? 己の命を絶つことすらも許されない、この憎らしい体で、これからどうやって生きていけば良いのだろう? もし、この世に神などが存在するのなら、どうやってこの苦しみを伝えれば良いのだろう?
「だれか……」
濡れた頬をあげて、視線を胡乱に窓の外へと向ける。
外界に。
「殺して……」
震える声で言ってから、かたわらのベッドへと目をやった。
「……ッ…クス……」
呼びかける声は、しんしんと降り積もる沈黙の中へと消えて行き、少女はまた、後悔の涙をこぼす。
それを拭き取ってくれた指のあたたかさを思い出しながら。
そして、それがもう二度と手に入らない絶望を、骨の奥まで感じ取りながら。