Intermezzo IV: ひそひそ森のめそめそお嬢さん
どうして自分ばかりがこんな目に遭うのだろう。
どうして自分は、周りと同じようになれなかったのだろう。
そんなこと、微塵も望んでいなかったのに。
周りと同じが良かったのに。非凡な才能なんていらなかったのに。
普通が良かったのに。
こんなはずじゃなかった。
きっと、生まれたときは、こんなこと、誰も予想していなかったし期待していなかった。
なのに。
一人ぼっちだ。
そう思っては涙を流し、誰かにそばにいて欲しいと願っては涙を零し、それはこの先一生叶わないと悟っては絶望の雫を落とした。
でも、その人は現れた。
そのままでいいと言ってくれる人。
何者でも構わないと微笑むその人は、これまで見た何よりも美しく、気高く、そしてまぶしかった。
毎日、煌びやかな光を射す太陽は、しかし、手を伸ばしても届かず、そして祈りも聞き届けてくれない。ただそこにあるだけ。
でも、その人は違った。
話を聞いてくれた。話を聞きながら、笑ったり怒ったり、同情したり叱ったりしてくれた。異質のものと扱わずに、対等に目を見てくれた。まっすぐに。
この人がいるなら、生きていけるかもしれない。
そんな淡い感情は、その人の何気ない一言で打ち砕かれた。
「お前は、オレよりもずっと長く生きるよ」
そんなこと、求めてない。
一人ぼっちは、もう嫌。
一人に、しないで。おいていかないで。
あなたがいなくなったら、私は、どうやって生きていけばいいの。
殺して欲しいと願った自分に、あの人は苦笑しただけだった。
あとから、あとから溢れてくる涙を指で掬って、苦笑しただけだった。
せめて、また一人ぼっちになる前に、この命を終わらせて欲しかったのに。
それも叶わないなら。




