第84話 実験
サリーをジニアに送り届けてから数分後、
俺はゴルド森林の入り口に立っていた。
「ふぅ、やっぱり全力で走ると速いな」
正確に測ったわけではないので怪しいが、全力で走ればフロックスからここまで2分そこそこで着くようになった。どんどん早くなっていくな。
これならゴレイ山脈に行くのも大した時間はかからないだろう。まぁ今回はリサも一緒なので全力では走れないが。イグルにも言われたが、リサは女の子だからな。
たしか、イグルとマルブタを担いで走った時は半分くらいの速さだったはず。なら、今回は四分の一程度の速さで走ればおそらく問題ないだろう。
「まぁいい。とりあえずゴルド森林に着いたんだ」
早速魔法の練習相手を探すとしますかね。
そう思い森の中に入っていった。
それから数分後、
早速一匹目の魔物が俺の目の前に姿を現す。
「ギィイイイイ」
ふむ、ホブゴブリンか。
最初の練習相手としては丁度いいな。
さて、どんな魔法を使ってみようか。今のとこ俺の使える攻撃魔法は、火魔法のファイアボールと風魔法のエアスラッシュの二つ。
よし、とりあえずファイアボールを使ってみるか。
「ギィイイイイイイ!」
ホブゴブリンは雄たけびをあげながら、こちらに向かい走ってくる。しかし、遅すぎるな。あれじゃいい的だ。よしやるか。
俺は走ってくるホブゴブリンに手のひらを向ける。
それなりの魔力を込め、サッカーボール程度の大きさを想像し、
「いくぞ、ファイアボール!!」
魔法を唱えた瞬間、俺の手のひらにサッカーボール程度の大きさの火の玉が現れ、そのままホブゴブリンに向かってかなりのスピードで飛んでいく。
そしてホブゴブリンの上半身に命中して、そのまま爆散した。
「よし、久しぶりだったが無事成功だ」
しかし、予想以上の威力だな。
死体となったホブゴブリンを見てみると、腰から上が綺麗に消失してしまっている。以前に使用した時はこれほど威力はなかった記憶があるのだが。
これもlevelが上がった影響なのだろうか。
「まぁいい、次の実験台を探すとするか」
そう考え、さらに奥へと歩いて行く。
そして数分後、
目の前に数匹のハイオークが現れる。
「お、今度はハイオークか」
見た感じハイオークが5匹か。
よし、今度はさっきより強めに打ってみるか。
俺はハイオークの群れに手を向け、魔法の準備を始める。やつらはまだこちらに気付いた様子はない。そして先ほどホブゴブリンに使ったときよりも、魔力をかなり多めに込め、大きさも人一人がスッポリ入る程度の球体をイメージする。
そして、
「ファイアボール!!」
魔法を唱えた瞬間、俺の手のひらに想像していた以上の火の塊が出現する。やべ、ちょっと魔力込め過ぎたかもしれない。これじゃ人間が2~3人くらい入りそうだ。
ハイオークもさすがに俺に気付いた様子だ。しかし、俺が発動させたファイアボールの余りの大きさに驚き、近寄ってくる様子はない。むしろ、段々と俺から遠ざかっている。
ふむ、わざわざ離れていってくれるとはありがたい。
近くで着弾してしまうと爆風の心配などもあったのだが、これくらい距離が離れれば大丈夫だろう。多分な……
「よし、飛んでけ!」
次の瞬間、特大ファイアボールは俺の手を離れ、ハイオークの群れに向かってそれなりのスピードで飛んでいく。そして着弾した、次の瞬間!
ドゴォォォオオオオオオオオオオオン!!
辺り一面に爆音が響き渡る。
次の瞬間には爆風がこちらの押し寄せてくる。
「おいおい、まじかよ!」
両腕で顔を庇い、爆風が収まるのをじっと待つ。
そして数十秒後、
やっと爆風も収まり、視界も晴れてくる。
「収まったか?」
そう考え、ファイアボールが着弾した場所に向かう。するとそこには、
「何もない……」
そこには、何も残ってはいなかった。
中心地にいたハイオーク数匹は勿論、周りの草や木、何もかもが消失していた。正直、ここまでの威力とは思ってもいなかった。そして改めて思う。
「やべぇ、近くで撃たなくてよかったぁ」
近くで着弾していたら、確実に俺まで被害が及んでいたことだろう。危ない危ない。そんな事を考えていると、体に少しだけ疲労感が現れる。
あ、これはあれか、mpの使い過ぎってやつか。そう思いステータスを確認してみると。予想通りmpが半分近く減っていた。急いでアイテムボックスからポーションを取り出し回復する。
「よし、回復完了っと」
しかし、とんでもない威力だった。まぁ一発でmpがあれだけ減ってしまっては、実践ではどうしても使いにくい。
それに形を大きめにしたせいか、スピードはかなり遅くなってしまっていた。おそらく普通のファイアボールの半分程度のスピードしかないだろう。あれじゃハイオーク程度の魔物ならまだしも、素早い魔物なら普通に避けられてしまう。まぁ普通の大きさのファイアボールでも威力は十分なので問題ないかな。
さて、ファアイボールの実験はこれで終わりにして、次はエアスラッシュを使ってみるとするかね。
その後、数匹の魔物にエアスラッシュを発動したところ、すべての魔物を一撃で仕留めることに成功した。
「よし、エアスラッシュも問題なく発動するな」
さて、魔法の実験も無事に終わったことだし、
今日は早めに帰っておくとするか。
そう考え、出口に向かい歩き始める。
すると途中のやつを発見する
はは、俺はなんてラッキーなんだ。
そう、目の前数メートル先に、
ゴールデンラビッツがいた。
しかも以前と同じようにやつはご飯タイム
どうぞヤってくださいと言わんばかりだ。
では遠慮なくヤらせて頂ましょう。
気配遮断を使い、デモンリッパーを取り出し、
もぐもぐと食事中のやつの背後に回り、
首に向かい一閃。
ゴールデンラビッツの首は俺の足元に転がり落ちる。
「よし、経験値ゲットだぜ」
そしてステータスをチラ見してみると、levelが20ちょっと上がっていた。さすがに前よりは上がる量も少なくなってきた感じがするが、それでも十分だ。
その後、思わぬ幸運に少し興奮しながらゴルド森林を一気に出て、そのままフロックスまで全速力で走っていった。そしていつもの門番さんと少し話をして街の中に入る。
さて、今日はこれ以上やる事もないし、
早めにジニアに帰るとするかね。
そう思いジニアに向け歩き出し。
数分後、ジニアに到着し中に入っていく。
すると、
「あ、ユーマさんお帰りさない! 今日は随分早いですね」
そう言いながら、サリーがいつものように俺に近寄ってくる。ああ、そういえば明日から遠出なわけだから、サリーのお帰りさないも少しの間聞けないのか。ちょっとだけ寂しいな。
「ただいまサリー。明日から遠出だからさ。たまには早く帰ってきて休むのも悪くないかと思ってね」
俺がそう言うと、納得したようで、
「なるほど、では夕食の時間になったら呼びに行くので、ユーマさんはゆっくり部屋で休んでいてくださいね!」
「そいつはありがたい。お言葉に甘えてそれまで少し寝させてもらおうかな」
「はい! ゆっくり休んでいてくださいね!」
そして俺は自分の部屋に戻っていく。
そしていつもの様にベッドに横になり、
「ふぅ、少し疲れたな」
まぁ魔法の実験が無事成功してよかった。
これで明日からの指名依頼も心配なさそうだ。
そうだ、明日の依頼の前にステータスの確認だけしておくとするか。おそらくかなり上がっているはずだ。
「ステータスオープン」
佐藤悠馬level237
HP 1500/1500
Mp 880/880
力 710
体力 710
素早さ400
幸運 1450
{スキル}
経験値20倍
スキル経験値20倍
鑑定level10
気配遮断level9
気配察知level3
短剣術level7
魔力操作level5
火魔法level4
水魔法level1
風魔法level2
回復魔法level4
毒抵抗level5
麻痺抵抗level1
料理level1
アイテムボックスlevel5
話術level3
投擲level1
格闘術level3
{称号}
異世界転移者
引きこもり
ラビッツハンター
駆け出し魔法使い
駆け出し料理人
駆け出し武闘家
むっつりスケベ
首狩り
天然たらし
街の救世主
「ふむ、やはり凄い上がり方だな。levelも一気に200を超えて237か。さて、能力を見ていくか。力と体力は700越え。サイクロプスの1、5倍ほどになったな。素早さは400を超えて、幸運はいよいよ力や体力の2倍以上の数値になってるなぁ。相変わらず桁違いの上昇率だ。さて、スキルの方も見ていくか。ふむ、魔力操作と火魔法と風魔法と格闘術がそれぞれ1レベル上がってるな。さすがはスキル経験値20倍、随分簡単に上がっていくものだ。称号は変化なしと」
ふむ、やはりlevelが上がっていくのは楽しいな。自分が強くなっていると実感できる。
さて、ステータスの確認も済んだことだし、サリーの言葉に甘えて、夕食の時間まで寝るとしますかね。
読んでいただきありがとうございます。
これからもこの調子で頑張っていくのでよろしくお願いします。
最後にブクマや評価ポイントなどいつもありがとうございます。




