第81話 説明
さて、指名依頼の内容を聞くとしますかね。
「じゃあ説明始めるわね。今回の指名依頼の内容はゴレイ山脈への同行及び護衛よ。報酬は金貨5枚ね」
ほう、護衛依頼か。受けるのは初めてだな。
しかしゴレイ山脈か、どんな場所なのだろうか。
「メルさん、ゴレイ山脈について説明をお願いしてもいいですかね」
「いいわよ。まず、ゴレイ山脈はここから南西に進んでいったところにあるわ。かなり大きな山だから遠くからでも目立つはずよ。ただし、フロックスからはかなり距離があるから、普通に歩いていくと数日はかかっちゃうわね。ていうかユーマ君地図持ってたわよね。そこに乗ってるわよ」
あ、そういや地図持ってたな。
そう思いアイテムボックスから地図を取り出し、場所を確認する。ふむ、なるほどこいつは遠いな。たしかに普通に歩いて行ったらかなり面倒な距離だぞ。まぁ走っていけば問題ないんだけどな。
あ、けど今回護衛依頼だからリサも一緒なのか。じゃあ俺一人で走っていくことはできないな。まぁイグルやマルブタの時のように、担いで行けばいいか。
「次に、ゴレイ山脈は鉱石が豊富な事で有名な場所ね。ここから採取された鉱石は色々な用途で使われるわ。武器の材料だったり、鎧の材料だったり、あとはマジックアイテムの制作にも使うって聞いたわね」
ふむ、マジックアイテムの制作ねぇ。間違いなくリサの目的はそれだろうな。ていうかリサってマジックアイテム売るだけじゃなくて、作る事もできるのかよ。それって割と凄い事なんじゃないのか。
「最後に、ゴレイ山脈に出現する魔物だけど、比較的弱い魔物ばかりね。けど、ゴレムって魔物にだけは注意が必要。体が石の様に硬くて、打撃や斬撃ではまともにダメージを与える事は困難よ。逆に、魔法にはかなり弱いから、魔術師がいると楽に戦えるわね」
ふむ、物理攻撃が効きにくいのは厄介だな。
しかし、魔法に弱いというのなら、問題なく倒せるだろう。
「さてと、ゴレイ山脈についての説明はこんなとこかしら」
「ありがとうございます。大体分かりました」
俺がそういうと、
「さて、ユーマ君。色々説明したわけだけど、改めて聞くわ。この指名依頼、受ける? 受けない?」
ふむ、まぁ別に断る理由もないか。気配遮断を見られるのは困るが、メルさんの話だと気配遮断を使わないといけないような状況にはならないだろう。それに、数少ない友人からの指名依頼だからな。よし、
「メルさん、その指名依頼受けさせてもらいます」
メルさんは小さく頷き、
「わかったわ。この指名依頼はギルドの方で受理しておくわね。ではまずユーマ君にこれを渡しておきます」
メルさんは素早く護衛依頼の受理を済ませ、こちらに依頼書を手渡してきた。
「それは護衛依頼の依頼書だから絶対になくしちゃだめよ」
大事な物のようだ。
なくさないように、すぐにアイテムボックスにしまっておくとしよう。
「ユーマ君は護衛依頼初めてだから一応説明しておくわね。それは護衛依頼書と言って、依頼が無事に終わったら、その紙に依頼人からサインを貰ってギルドに持ってきてもらうことになるわ。そこで確認ができたら護衛依頼は無事成功ってことになるわね」
「なるほど」
「さて、ギルドで話せる内容はこれくらいね。他の詳しい話は依頼人から直接聞くことになるわ」
「分かりました。メルさん、いろいろありがとうございました」
そう言い、俺はメルさんに頭を下げる。
するとメルさんは笑みを浮かべながら、
「どういたしまして。けどユーマ君ってそんなに強いのに、本当に礼儀正しいわね」
ふむ、俺ってそんなに礼儀正しいのか。
そんな意識した事はなかったのだが。
俺がそう不思議に思っていると、
「ユーマ君は知らないかもしれないけど、冒険者って結構野蛮な人が多いのよ。特に高ランクの冒険者になってくると、力に物を言わせて好き勝手する人もいるくらいよ」
俺はその言葉に少し驚き、
「そんな冒険者もいるんですね。いくら強いからといって、礼儀を疎かにしていい理由にはならないでしょうに」
俺がそう言うと、メルさんは本当に嬉しそうな顔になって、
「ふふ、本当にその通り。ユーマ君、これからもその考え大切にしていってね」
俺は力強く頷き、
「はい。分かっています」
その後、メルさんと少しだけ話をして、ギルドを後にする。
さて、これからどうしようか。
そう思い空を見上げてみると、どうやら日が落ちるまでにはまだ相当時間がかかりそうだった。今日はかなり早めに帰ってきたからな。
よし、時間も余っていることだし、リサに護衛依頼の説明を聞きに行くとするかね。そう思い俺はリサの居るであろうマジックアイテムショップに向けて歩き出す。
そうして歩いていると、数人の魔法学園の生徒とすれ違う。前までは見る機会などほとんどなかったのに、最近は本当に増えているな。どうやら杖などを買っている生徒が多いようだ。
まぁ俺が気にすることじゃないか。
そうして歩き続け数分後、
無事にリサのお店に到着した。
さて、早速入らせてもらうとするか。
そう思い扉を開け中に入っていく。
すると以前はホコリぽかった店の中が、割と綺麗になっていた。どうやらリサはちゃんと掃除することもできるようだ。感心感心。
そんな事を考えていると、
「おや、誰かと思ったらユーマ君じゃないか」
奥の扉からかなり薄着のリサが出てきた。
うむ! 相変わらずの胸の膨らみですな。
服が薄いせいか、余計にそう感じてしまう!
おっと、いけない、いけない、
胸ばかり見ていてはリサに失礼だ。
女性は男に視線には敏感って話も聞くからな。
気を取り直して、
「ようリサ。久しぶりだな」
「そうだね。それでユーマ君がここに来た理由は、指名依頼の件で合ってるかな?」
「正解。で、その指名依頼受けることにしたから、詳しい説明を聞きにきたって感じだ」
俺が指名依頼を受けると言った瞬間、リサの顔は笑顔になる。
うむ、中々に可愛らしいじゃないですか。
「よかった! ユーマ君がもし受けてくれなかったらどうしようかと思っていたよ」
「その時は、別の冒険者にでも依頼すればよかったんじゃないのか?」
「うーん、さすがに知らない冒険者の人と寝泊まりするのは避けたいからさ」
寝泊まりする予定なのか!
ていうか、俺ならいいのかよ。
「じゃあ依頼の説明を始めるね」
その後、リサから聞いた依頼の内容は、
まずゴレイ山脈に行き、
そこでリサの探し物である《アルス鉱石》を見つけ、
そしてフロックスに帰ってくるまでのリサの護衛ということだった。
そしてどうやら出発は明後日にするらしい。
泊まりになるだろうから色々準備するそうだ。
ふむ、まぁ大体想像していた通りだな。
しかし、
「リサ、これって7日もかかるものなのか?」
そう、リサはこの依頼に大体7日はかかると言ったのだ。
「うーん、多分それくらいはかかると思うんだよね。まずゴレイ山脈に歩いて行くのに相当時間がかかるからね。そこに帰りの分を合わせるとそれくらいの期間は必要になっちゃうと思う」
うむ、大丈夫だリサよ。
その時間は大分短縮できると思うぞ。
「リサ、移動手段は俺に心辺りがあるから大丈夫だ。多分ここからゴレイ山脈まで数時間くらいで着くと思うぞ」
「それは凄い! その話が本当なら多分2日くらいで帰ってこれると思うよ! けどユーマ君、その移動手段って何なんだい?」
「リサよ、それは明後日のお楽しみだ。大丈夫、リサは少しも疲れない素晴らしい方法だから」
「それは凄いね! 分かった、楽しみにしているよ」
「よし、じゃあ出発は明後日の朝、待ち合わせは門の前でいいか?」
「うん、それで大丈夫だよ」
「よし、じゃあ今日はこれで失礼することにするよ。また明後日な」
そう言い残し、俺はリサの店から出ていく。
ふむ、明後日出発か。
俺も食料なり、ポーションなり準備しておかないとな。
そして空を見上げると、そろそろ日が落ちそうだった。
よし、丁度いい時間だしジニアに帰るとするかね。
そう思い、ジニアに向け歩き出した。
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