第76話 新たな依頼へ
ふぅ、もう朝か。
まさか日本にいた頃の夢を見るとはな。
こっちの世界に来てから、まだ一度も日本にいた頃の夢なんて見たことなかったんだけどな。おそらくだが、ミナリスさんとクロダさんの事を話しているうちに、日本の事を思い出していたのだろう。
しかし、あの頃は本当に楽しかったな。まだ家族仲良く食卓を囲み、その日あった事を楽しく話して、幸せな日々だった。あんな事さえ起きなければ、ずっと続いていたであろう日々。あの時、俺がもう少し家族の事を……
「……やめておこう。もう終わってしまったことだ。今更どんなに後悔したとしても、あの頃には戻れないんだ」
よし、気を取り直して起きるとするか。
俺はいつものようにベッドから起き上がり、軽く体をストレッチ。よし、今日もまったく体に異常はない。
そしてサリーが来る前に、服を着て、軽く身だしなみを整える。そうして準備も終わり一息ついていると、
「ユーマさん起きてますかー。そろそろ朝ごはんの時間なので食べに来てくださいねー」
サリーは丁度いいタイミングで起こしにきてくれるな。いつも不思議なほどピッタリだな。俺は扉の前まで歩いていき、
「おはようサリー。毎日起こしに来てもらって悪いな」
そうしてサリーと顔を合わす。うむ今日もサリーは可愛い。そうしてサリーの顔を見ていると、急にサリーの顔が曇ってしまう。しまった! つい可愛いからといって直視しすぎたか! すぐに謝っておくことにする。
「サリーすまん。可愛かったので少しだけ見惚れてしまった」
「か、可愛い? あ、ありがとうございます!」
そうしてサリーは少しだけ顔を赤くする。
あれ、お礼を言われてしまったぞ。
怒っていたんじゃないのか?
「サリー、俺が顔をじろじろ見て怒っていたんじゃないのか?」
「え、別に怒ってなんかいませんよ。むしろユーマさんに可愛いって見てもらえたら、すっごく嬉しいですよ」
「じゃあなんで顔を曇らせたんだ?」
「ユーマさん……気づいてないんですか?」
俺が、気づいていない?
なにか俺におかしな所なんてあったか?
ちゃんと服も着てるし、問題ないようだが。
「ユーマさん、今日は凄く寂しそうな顔をしています。何かあったんでしょうか?」
俺が……寂しそうな顔? そんな顔をしているつもりなどないのだが、思い当たる原因はあれしかないだろう。
「そんな顔をしていたのか、俺は」
「はい。前にみんなで食卓を囲んでいた時と同じような顔を」
おいおい、本当にサリーは勘がよすぎるだろ。
なんでこうピンポイントで当ててくるんだ。
「ああ、実はさ。故郷にいた頃の夢を見たんだ。それで少し懐かしくなっただけだよ」
俺がそう言ってサリーを安心させようとしても、サリーはまだ少しだけ浮かない顔をしている。まいったな、心配などかけるつもりなかったのに。俺はサリーの頭に軽く手を置いて上げ、
「サリー。たしかに故郷の事は懐かしく思うし、たまに寂しい気分になったりもする。もし一人だったら耐えられなかったかもしれない。だけど、今の俺にはサリーやみんながいるからな。大丈夫さ」
そう俺が言うとサリーは顔を上げ、
「分かりました。けどまた寂しくなったら遠慮なく言ってくださいね。ユーマさんの周りには、私やお母さんやリサ、それにイグル達だっているんですから」
「ああ、分かった。その時は遠慮なく頼らせてもらうとする」
「約束ですよ。じゃあ私今度こそ朝ごはんの準備行ってきますので、ユーマさんも早く降りてきてくださいね」
そう言い残しサリーは食堂に帰っていく。
しかし、サリーにあんな事を言われるとはな。自分で考えていた以上に、あの夢は俺に影響を与えていたようだ。
「これ以上、サリーに心配をかけるわけにはいかないな。よし、気合い入れていくとするか!」
そうして俺は気合いを入れるため、かなりの力で自分の頬を引っ叩く。すると、
「いってぇえええええ!!」
めちゃくちゃ痛かった。
levelが上がって力が上がっているのを忘れていた。しかし、これで気合いは十分以上に入ったな! ちなみにこの後、ミナリスさんに、うるさいわ! と言われ電撃を食らいそうになったのは秘密だ。
その後、俺は食堂で、いつものようにイグルと朝食を食べていた。
「なぁユーマ。少し前、お前の叫び声聞こえたんだけど大丈夫か? まさかお前もミナリスさんに手を出そうとして電撃を」
「違う。少し気合いを入れようと思ってな。かなり力を入れて頬を引っ叩いたら、ああなった」
「はは! まじかよ! おめえにもそんなドジなとこあったんだな!」
そう言いながらイグルはこちらを指差し大笑いしている。うむ、少しうざいぞイグル君。ミナリスさんにお願いして、もう一回電撃食らわせてあげようかね。そして俺がイグルを睨んでいると、
「お、おい顔怖いぞユーマ。笑っちまったことについては謝るからよ! 悪かったって」
「ふっまぁ許してやるか」
「よかった。おめえを怒らせたら何されるかわかったもんじゃねえからな」
そんな事を適当に話しながら、朝飯を食べていく。うむ、うまい。やはりサリーの作った朝ごはんは最高だ。これを食べて初めて一日が始まるって実感するな!
「そういやよユーマ。おめえ今日はギルド行くんか? もしいくなら一緒に行かねえか? 駆除作戦の報酬も貰わなきゃだからな」
ああ、そういえば駆除作戦の報酬まだだったな。すっかり忘れていた。しかし、たしかに大量の魔物を倒すことができたが、あの人数で分けるとなると大した額にならなそうだがな。まぁ貰えるもんは貰っておくか。
「そうだな。俺も一緒にギルドに行くことにするよ」
「よっしゃ。じゃあ朝飯食ったら早速ギルドに行くとします!」
そして数分後、俺とイグルは朝飯を見事完食し、ジニアを出てギルドへ向かっていた。ふむ、相変わらず人が多いな。そう思って歩いている人達を見ていると、一つだけいつもと違う点に気付く。
「なぁイグル、なんか変わった服着てる人多くないか? まるで」
まるで、俺の世界の制服のような。
「ああ、あれなら多分魔法学園の生徒達だと思うぜい。俺も詳しくは知らねえんだけどな、この時期結構多くなんだよ」
ほう、あの制服を着ている人達すべて魔法学園の生徒か。なるほど、よく見ればたしかに杖のような物を持っている人が多いな。
そうだ、魔法学園と言えば、古代魔法の事が何か分かるかもしれないな。今度暇なときにでも行ってみるとするか。幸い学園長のアルベルトさんとは顔見知りなわけだしな。
そんな事を考えながら歩くこと数分、俺たち無事ギルドに到着し、扉を開け中に入っていく。すると中にはそれなりの人数がいた。
「よっしゃ。じゃあユーマ、早速駆除作戦の報酬貰いに行こうぜ」
「そうだな」
そうして俺たちはメルさんの元へと歩いていく。
そして、
「あら、いらっしゃいユーマ君、イグルさん。今日は何の用事かしら?」
「やっほーメルちゃん。今日はユーマと一緒に駆除作戦の報酬を貰いにきたぜ」
「ああ、そういえば二人とも駆除作戦成功の立役者だったわね。ギルドマスターがあなた達の事は絶賛してたわよ。じゃあ少しだけ待っててね。報酬持ってくるから」
そうしてメルさんは少し奥に歩いていく。
暇だなと思い回りを見ていると、
「イグル見てみろ。三つの森への侵入禁止の張り紙がなくなってる」
「お、まじじゃねえか。これでやっとオーガス森林での狩りを再開できるぜ」
「よかったじゃないか。俺も今日はゴルド森林で狩りでもするとしようかね」
そんな話をしていると、
「おまたせ。はい、これが駆除作戦の報酬の金貨1枚よ」
ふむ、思っていたよりは多くもらえたな。
イグルも同じ事を思ったようで、
「へぇ、あの人数にしては結構貰えたな!」
「そうね。コカトリスが二匹いたのが大きかったわね」
なるほどな。
「よっしゃ、これで用事は終わったな。じゃあユーマ、俺は適当な依頼見つけてオーガス森林行くことにするけどよ、お前どうする?」
「ああ、俺もゴルド森林の依頼を見に行くことにするよ」
そうして俺たちは依頼の貼ってある掲示板に向かう。そしてゴルド森林で行える依頼がないか探していく。すると、一つ気になる依頼を見つけた。
「Aランク依頼、ゴールデンラビッツの素材採取?」
俺がそう呟くと、
「ユーマ、その依頼はやめておいたほうがいいと思うぜ」
「どうしてだ?」
「その依頼の魔物、ゴールデンラビッツだがな。実際強さはそれほどじゃねえんだ。多分やりあったらゴブリンにでも負けるんじゃねえかな」
ふむ、それはたしかに弱いな。だがこれで終わりじゃないはずだ。そんな弱いだけならAランク依頼になるわけがない。
「で、問題点だが、まずこいつは異常なほど臆病なんだよ。さらに厄介なのがこいつのスピードだ。俺も少し見ただけだからはっきりとは言えないが、多分お前よりもこいつは速いと思うぜ。まぁここまで説明したら分かるとは思うが、こいつは異常なほどに倒しにくいんだよ」
なるほどな、たしかにAランクも納得だ。まぁ俺ならおそらく倒せるが、わざわざ厄介な依頼を受けることもないか。この依頼はやめてお、
「まぁ倒せさえすれば、素材も高く売れるし、経験値もめちゃくちゃ貰えるからメリットもでかいんだけどな」
受けようこの依頼。
「イグル君、俺はこの依頼受けることにするよ」
「まじかよ! 俺の話ちゃんと聞いてたか!?」
「勿論だ。だが人は時に無謀と分かっていても挑戦しなければいけない時もあるもんさ。じゃあ俺は依頼を受けてゴルド森林に行ってくるよ」
そして俺は依頼書を持ってメルさんの元へ歩いていく。そして、
「メルさん。今日はこの依頼を受けようと思います」
俺が依頼書を出すとメルさんは少し驚き、
「ユーマ君本気? この依頼はここ最近まったく達成した者はいない超難関依頼よ。それでもやるの?」
「勿論です!」
「そ、そう。なんか何時にも増して張り切ってるわね。まぁいいわ。ユーマ君が受けるというなら止めることはできない。頑張ってね」
「はい。必ず仕留めて見せますよ」
そうメルさんに言い残し、俺は意気揚々とギルドを出ていく。ふふ、これで大量の経験値をゲットだ。なんせ俺には気配遮断という素晴らしいスキルがあるからな。
そんな事を心の中で考えながら、ゴルド森林に向け歩き出した。
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