第71話 駆除作戦
俺たちがストン森林に着いて約一時間後、やっと駆除作戦に参加する冒険者が揃ったということで、グレンさんから一言、
「よし、みんな揃ったようだな! では昨日と同じように前衛、後衛に別れてくれ」
ふむ、どうやらグレンさんはこの人数を前衛、後衛に分けているようだ。
前衛には近距離武器を持つ者、まぁ剣や斧や短剣などの武器だ。当然俺も前衛に入るとこになる。他には知り合いだとグレンさんやマルブタなども前衛だ。
そして後衛には弓や魔法を使う人達。知り合いだとイグルなどが後衛になるようだ。ちなみに今回の駆除作戦に魔法を使うものはいないらしい。
魔法学園があるのになんでいないのかと質問したところ、学園を出た人々は冒険者などにならずに、違う道に進む人が多いそうだ。少しだけグレンさんが魔法学園の事を嫌っている理由が理解できた気がした。
そして数十秒後。
参加者がみな前衛、後衛に別れたのを確認すると、
「よし、前衛、後衛に別れることができたようだな。では早速出発することにする! みんな仲間が大勢いるからといって決して油断はしないように。では出発だ!」
そして俺たち数十名はストン森林の中に入っていく。
まず先に前衛の俺たちが森の中に入っていく。
先頭は俺とグレンさんだ。
そしてその少し後ろにマルブタや他の冒険者達がいる。
そして数分歩いた頃、魔物の気配がした。
俺は隣を歩くグレンさんに、
「グレンさん、魔物の気配が」
「ああ、おそらくゴブリンだ。3匹か」
ふむ、さすがグレンさん俺よりも早く気付いていたようだ。まぁたしかグレンさんは気配察知のlevelが俺より高かったはずなのでその差だろう。
「じゃあ最初は俺が」
「いや、俺が行く!」
そう言ってグレンさんがゴブリンに突っ込んでいった。
おい! あんた今回の討伐隊のリーダーじゃねえのかよ!
「いくぞぉおおおお」
そう叫びながら、グレンさんがゴブリンに向かって走っていく。うむ、早いな。グレンさんはあっという間にゴブリンの正面まで行くと、
「せやぁぁああああ!!!」
持っていた大剣でゴブリンを一刀両断する。
うーん、見事に力技。
なんかグレースさんの戦い方を思い出すなぁ。
そして大剣を振り下ろした体制のまま、
「おらぁあああ!!!」
近くにいたゴブリンに横切りを繰り出す。
するとゴブリンの体はなんの抵抗もなく腰から真っ二つになる。
そして、
「すまねぇユーマ! 一匹そっちにいった」
いや、あんたわざと逃がしたでしょう。
大方俺の実力を早めにみんなに見せるためか?
しかし、ゴブリン程度では、
「武器を使うまでもないな」
俺は向かってくるゴブリンに対し、
「ふん!」
蹴りを放った。なんの技術もない、なんの工夫もないただの蹴りだ。しかし、その一撃はゴブリンの頭を木っ端みじんに砕く。そして頭部を失ったゴブリンはその場に倒れ込んだ。
「こんなもんか」
そしてその光景を後ろで見ていた冒険者達は、驚きのあまり固まってしまっている。しかし過去に目の前でオークキングを倒すのを見ていたマルブタだけが、
「おおおおお!さすがアニキ、凄すぎるっす!」
そしてそれを皮切りに、
「「「「うおおおおおお!!!」」」」
「なんだ今の! 相手がゴブリンだったとはいえ、蹴り一撃とは!」
「ゴブリン程度武器を使うまでもないってか!」
「というか、蹴りが早すぎて俺にはほとんど見えなかった」
「これがサイクロプスを一人で倒す首狩りの力か……」
なんかめちゃくちゃ持ち上げられてるな。
そしてグレンさんも寄ってきて、
「はは、ユーマおめえは本当にとんでもねえな! ゴブリン程度相手にならねえとは思っていたが、まさかあんな技術もなにもない蹴り一発だなんてな!」
ふむ、さすがに技術もなにもない蹴りって見抜かれてるな。今度暇な時があったら、俺も少しは格闘術を学んでおくべきかもしれない。戦場で武器がなくなったから戦えませんでしたでは話にならないからな。
「はは、最初は派手にいったほうがいいかと思って蹴りにしときました」
しかし、こんな森の中でこんな大騒ぎしていて大丈夫なのだろうか。
魔物でも寄ってきそうなもんだが、
そんな事を考えていると予感が的中し、
「グレンさん」
「ああ、魔物だ。しかもかなりの数だな。よし! みんな戦闘準備だ! おそらく数十体の魔物の群れがやってくる。しかし大丈夫だ。こっちには俺や首狩りがいる。何も恐れることはねえぇ!いくぞ」
ふむ、さっきまでお祭り騒ぎだった冒険者達がみな戦う顔になっていく。グレンさんは士気を上げるのはうまいな。そして各々が自らの武器を取り出し、
「よし! 野郎ども戦闘開始だ。前衛はあまり前に出過ぎないように、後衛は前衛にできる限り攻撃を当てないように、それとコカトリスは俺と首狩りが処理するから近づくなよ! じゃあいくぞおお!」
「「「「おおおおおおお!」」」」
そして目の前に魔物の群れが現れる。
見たところ、コカトリスが2匹混ざっているな。
デーモンリッパーを取り出し、
「グレンさん、先にいきます」
コカトリスに向かって全速力で走る。
おそらく周りの冒険者からは俺が瞬間移動でもしたように見えるだろう。
そしてすれ違いざまに、
「首、貰うぞ」
コカトリスの首を切断する。
そのままもう一匹のコカトリスの元へ走る。
コカトリスは俺にまだ気づいていない。
そしてそのまま、
「二匹目だ」
走る勢いそのままに、首を切り裂き、切断する。
よし、厄介なコカトリスは始末した。
あとは冷静に、掃除をしていくだけだ。
周りを見てみると各々有利に戦っていた。
グレンさんは相変わらず大きな大剣を振り回し、
マルブタは得意のヒット&アウェイで、
そして後衛からは的確に魔物の急所を狙い撃つ弓の攻撃。俺は大人数での戦闘が初めてだったので、正直うまく戦えるか不安だったが、これなら心配なさそうだな。
おっと、危ない冒険者もいるな。
地面に倒れ込み、今まさにこん棒で殴られそうになっている冒険者がいた。俺は一気に近寄り、振り下ろされるこん棒を掴み、握りつぶす。そして握りつぶした手でそのまま裏拳をたたき込み魔物の頭を粉砕する。
そして倒れ込んでいる冒険者に、
「おい、大丈夫か?」
「首狩りか! すまん、足を怪我して動けないんだ。どこか隅にでも」
「わかった」
そして俺は負傷している冒険者を持ち上げ、
「ふん!」
魔物の攻撃が届かなそうな、後方に放り投げる。
まぁ多少痛いだろうが、そのままここにいるよりましだろう。
ヒールで治してやるという手もあったが、実はヒールは割と発動してから治るまで時間がかかる。さすがに見知らずの冒険者のために、戦闘中にそんな隙を作ってまで回復してやるほどお人よしではない。
さて、戦闘の続きだ。
そしてその後数十分間戦い続けた結果、
見事魔物の群れを殲滅することに成功した。
そして戦闘終了の合図をグレンさんが、
「よし! みんな戦闘終了だ! 魔物の群れは無事すべて殲滅することができた。怪我をしている者は各々ポーションなどで治療するように!解体班は解体を頼んだ」
ん? 魔物の解体?
「グレンさん、今ここで解体するんですか?」
「ん? そんなもん当然だろ。ここの魔物の死体全部持っていくわけにはいかないらかな。魔石と貴重な部位だけ持って帰るんだよ。まぁゴブリンやハイゴブリンは魔石くらいしか価値のあるとこがないから楽なんだがな」
「コカトリスはどうするんです? もし面倒そうなら俺がアイテムボックスの中に入れて持ち帰りますが」
「おお! そうしてくれると助かる!」
それから俺はコカトリスをアイテムボックスにしまい、座って休んでいる。周りの冒険者は俺の事をじろじろ見てくるだけなので暇だ。
そうして一人で座っていると、
「よおユーマお疲れさん。まさかおめえがあそこまで強いとは思ってなかったぜい」
「アニキお疲れ様っす! アニキの戦ってるとこ本当に凄かったっす!」
お、丁度いいところに話し相手がやってきた。
「ああ、イグルもマルブタもお疲れ。マルブタもかなり頑張ってたな。ちゃんと見てたぞ」
俺がそういうとマルブタはめちゃくちゃ喜んでいた。どのくらい喜んでいたかというと、その場でいきなり飛び跳ねるくらいだ。まだまだ元気だな。
そしてイグルは、
「はは! よかったなマルブタ。ち、俺も後衛じゃなかったらあ華麗な弓さばきを見せることができたのなぁ」
「まぁイグルの華麗な弓さばきとやらは、これから見る機会があるだろうさ。まだ駆除は終わってないんだ」
俺がそういうとイグルが、
「いや、もう今回の駆除作戦は終わりだぜ。今回は昨日の残りってことで30匹程度倒せば十分だったからな。今の戦いで確実に30匹以上倒したから、これで作戦は終了だ」
まじか!
思っていたよりずっと早く終わったな。
まぁ早く終わる分にはいいか。
「そうか、もう終わりか。なら後は帰るだけだな」
俺がそう帰るだけというとイグルは顔が青ざめ、飛び跳ねていたマルブタでさえもその動きが止まり、冷や汗を流しながらこちらを見てくる。
「あ、あのよユーマ、帰りもあの方法で帰るのか?」
「ん? 当然だろう」
「そ、そうか。ユーマ、帰りは少しスピード落としてくれよな」
「ああ、分かってるさ」
その後、数分間適当な話をしていると、
グレンさんがみんなの前に出てきて、
「よし、今の戦いで目標討伐数は達成した。よって今回の駆除作戦はこれで終了とする。みなご苦労だった」
こうして駆除作戦は無事成功したのだった。
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