第69話 一日の終わり
……ふぅ、少しだけ眠っていたようだ。
さてと、そろそろ夕食の時間かね。そう思い俺はベッドから起き上がり、一階に向け歩き出す。階段を下りていくと、食堂はかなり混雑していた。どうやら大侵攻の後始末に行っていた冒険者達も帰ってきたみたいだな。
そんな事を考えながら席を探していると、
「おーいユーマ、こっちだこっち。席取っといてやったぞ」
お、いつものようにイグルが声をかけてくる。
どうやら席を取ってくれていたようだ。ありがたい。
俺はイグルの正面の席に腰を下ろす。
「席取っといて貰ったみたいでありがとな」
「別に感謝されるような事じゃねーよ」
そんな話をしていると、サリーがこちらに来て、
「あ、ユーマさん起きたんですね! 中々来ないもんだから、呼びに行こうと思っていたところでした。夕食できるまで結構時間かかりそうなので、もう少し待っててくださいね」
そう言い残しサリーは厨房に戻っていった。
うむ、ここまで食堂が混んでいると、サリーも忙しそうだ。こりゃ当分夕食は出来ないかもしれないな。まぁイグルと話でもして気長に待つとするか。
そんな事を考えていると、早速イグルが話しかけてきた。
「そういやよユーマ、グレンさんに聞いたんだが、おめえ今日一人でゴルド森林行ってきたんだろ? どうだった成果は?」
「ああ、ざっと200匹程度減らしてきたよ。メルさんもこれだけ減らせば十分って言ってたから、ゴルド森林の駆除は今日で終わりだな」
それを聞いたイグルは驚愕の表情を浮かべながらも、すぐに納得したような表情になり、
「はは! やっぱおめえはとんでもねえな! いやぁさすがはSランク確実っていわれ、しかも将来はギルドを背負って立つ存在になるって噂されてるだけあるなぁ」
おい、ちょっとまて、なんだその噂は。
俺はそんなの聞いたことないぞ。一体誰が。
「なぁイグルゥ、その噂一体誰が流してるのか知らないかぁ?」
少し凄みをきかせイグルに質問する。
イグルは若干びびりながらも、
「あ、ああ。噂を最初に流したのは誰かは分からないけど、最近そう言った噂が増えたのはグレンさんのせいだと思うぜ。あの人、移動中とか大声でユーマの事色々言ってたからな。将来はギルドマスターを継いでもらうのも悪くないなガハハ! なんてこともいってたぜ」
ああ、グレンさんか、なるほどな。
そういやあの人、話し合いの時俺を魔法学園に取られまいと必死だったからなぁ。まぁそこまで俺の事を評価してくれるのは少し嬉しいが、今度あったらあまり言いふらさないように言っておこう。
「そういえばイグル、グレンさんと一緒に行ったってことは、お前もストン森林に行ったんだろ? 成果はどうだった?」
「ああ、大成功だったぜ。こっちも今日だけで100匹以上、数を減らすことができた。まぁまだ普通の時より少し多いからまた明日も行くことになりそうだけどな」
「そうか、うまくいったようでよかったじゃないか」
「ああ、コカトリスはほぼグレンさんが倒してくれたからな。あ、そういやマルブタの野郎がすげえ頑張ってたぜ。前から戦闘はかなりのもんだったけどよ、まさかあいつが味方を庇いながら戦うとは思っていなかったな」
ほう、マルブタもストン森林に戦いに行っていたのか。
しかし、ギルドで俺に絡んできたマルブタが、他人を庇いながら戦うとはな。あいつも成長したということだろう。
「多分だけどさ、外見のせいでひねくれていたマルブタがあそこまで変わったのは、お前のお陰だと思うぜユーマ。移動中に少し話したんだけどさ。兄貴に認められるように頑張ってるって言ってたぜ」
マルブタの野郎、そんなに俺の事を慕ってくれていたのか。
正直今まで俺はマルブタの事なんて、名前を知っている程度の知り合いくらいにしか思っていなかった。しかし今、アニキアニキと俺を慕ってくるマルブタの事が少しだけ可愛く思えてきた。よし、今度マルブタが困っていたら助けてあげよう。
それからストン森林であったことなど色々話をしていると、
「ユーマさんイグルさん、お待たせしました! 今日の夕食です」
そう言って俺たちのテーブルにサリーが料理を置いていく。
うむ、今日も大変美味そうである。
「ありがとうサリー、今日も美味しそうだ」
「はい! 一生懸命作りました! いっぱい食べてくださいね」
そう言い残しサリーは厨房に戻っていく。
まだまだ忙しそうである。
「よっしゃ! じゃあユーマ食べるとするか。さすがに今日はずっと狩りだったから腹減っちまったぜ」
「そうだな。俺も我慢の限界だ。食べるとしよう」
それを合図に俺とイグルはかなりの勢いで料理を食べ始める。相当の量があったはずなのだが、二人ともかなり腹が減っていたようで、数十分後には料理は綺麗になくなっていた。
「うおおぉ、美味かった! やっぱり狩りをした後の飯ってのは最高だぜ」
「ああ、まったくだ」
本当に美味しかった。イグルの言っていた通り、体を動かした後のご飯はいつにもまして美味しく感じる。引きこもってしまっていた前の世界では味わえなかった感動だ。
「ふぅ、腹いっぱい飯食ったら眠くなってきたなぁ。よしユーマ俺はそろそろ部屋に戻るとするぜ」
「そうだな、俺も部屋に戻るとするよ」
そしてイグルは一足先に部屋に戻っていく。
俺も席を立ち、サリーの方を少し見てみるとまだ仕事があるようなので、軽く手だけ振り部屋に戻る。
そしていつものようにベッドに横になり、
「ふぅ、腹いっぱいだ」
たしか食べた後、すぐに横になると体に悪いとか聞いたことがある気がするが、まぁいい。ここは異世界なんだ! そう都合のいい解釈をすることにしよう。そしてベッドの上で一日を振り返る。
「今日も色々あったな。まずギルドでの話し合い。その後はゴルド森林で大量の魔物掃除、そして帰り道で黒狼との遭遇」
あの話し合いは内心かなり緊張したな。
グレンさんはまだしも、いきなり領主様と魔法学園の校長だもんなぁ。緊張するなという方が無理があるだろう。
しかし思っていたよりはずっと話やすい人達だった。特にアルベルトさんとグレンさんは昔からの友人なのだろう。二人で言い争っているところとか、本当に子供の喧嘩のようだったからな。
「はは、今思い出しても少し笑えて来るな」
しかし、思っていたよりちゃんと喋ることができてよかった。あれだけ緊張していたのにうまく喋れたのは、スキルの話術のお陰かな。それか異世界に来て俺も成長してるってことなのかね。
そしてその後は、魔物の掃除に黒狼だ。
そういえばゴルド森林の魔物の掃除は今日だけで十分だってメルさんが言ってたが、明日どうしようか。イグル達に付いて行ってストン森林に行くのも悪くないか。大勢の前で気配遮断を使う気はあまりないが、まぁコカトリス程度普通に戦っても十分だろうからな。
最後に黒狼だが、あいつら残念だけどすぐ終わったからほとんど印象に残ってないんだよなぁ。まぁステータスを見る限り相当強そうだったので、メルさんの言う通り襲われたのが俺でよかったな。
「ふぅ、相変わらず濃い一日送ってるなぁ。引きこもりだった頃と比べ物にならないくらいハードな毎日だな」
しかし、その毎日が驚くほど充実しているのも事実だ。これもサリーやイグル達がいてくれるお陰だろう。感謝しないとな。
そんな事を考えているうちに、俺は眠りに落ちていった……
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