第62話 帰るべき場所
さて、朝だな。
ギルドでの調査次第だが、もしかしたら今日ゴルド森林に行くことになるかもしれない。気合い入れていかないとな。
ベッドから立ち上がり、いつものように体に異常がないか確認する。
そして軽めのストレッチを行い、
「よし! 今日も体調は問題なし」
じゃあ行くとするか。
朝飯をとるため、部屋を出て一階に降りていく。
すると珍しいことにイグルの姿がなかった。まぁこういう日もあるか。
久しぶりに一人でテーブルにいるとサリーが来て、
「あ、ユーマさんおはようございます!」
「ああ、おはようサリー。ところで今日はイグルがいないようだけど」
「イグルさんなら数十分前に出ていきましたよー。 今日もlevel上げるぜって張り切ってました」
なるほど、イグルも大侵攻に備えて頑張っているんだな。
俺も負けていられないなこれは!
「そうか、教えてくれてありがとなサリー」
「いえいえ、じゃあ朝食を持ってくるので少し待っててくださいね」
その後俺はいつものように朝飯を腹に納め、
「ありがとうサリー。今日も最高においしかったよ。これで一日頑張れる」
俺がそういうとサリーは嬉しそうに、
「やった、ユーマさんにそう言ってもらえると凄いうれしいです。今日も一日頑張ってくださいね! 夜ご飯作って待ってますから」
「ああ、楽しみにしてるよ。じゃあ行ってくる」
そう言い俺はジニアから出ていき、ギルドへと向かう。
その後数分でギルドに着き、扉を開け中に入っていく。
すると早速周りから、
「おい、きたぜ首狩りだ。聞いた話じゃ昨日だけでストン森林の上位種を全滅させたってよ」
「本当にすげえな。もう首狩りは戦闘力だけならSランク以上あるんじゃないか?」
「それはさすがに……いや、もしかしたらありえるかもしれないな」
「とにかくだ、首狩りがここまで頑張ってくれているんだ。俺たちも、もしもの時のために少しでも強くなっとかねえとな。この街を守れるように」
ふむ、どうやらギルド内はかなり活気が出てきているようだ。
いい事だ。これなら大侵攻が起きたとしてもある程度は持ちこたえれるかもしれない。まぁ起こす気はないけどな。
俺はゴルド森林調査の結果が出ているかを聞くため、メルさんの元に向かう。
そして、
「こんにちはメルさん。早速ですがゴルド森林の調査の結果は出ましたか?
もし出ているのならすぐにでも出発しますが」
「こんにちはユーマ君。凄いやる気ね。それで調査の結果なんだけど、残念ながらまだ出てないわ。おそらくは明日には出ると思うわ」
ふむ、まだ出ていなかったか。
まあ仕方ない。ゴルド森林の件は明日に持ち越しだな。
俺がそう考えているとメルさんは、
「ユーマ君、ゴルド森林の調査はまだなんだし、今日は一日ゆっくり休んだらどうかしら? ユーマ君がこの街のために一生懸命頑張ってくれているのはみんな分かってるけど、たまには休息も必要よ」
休息か、そういえば最近ゆっくり休んだ記憶がないな。
特にこの二日間はかなりハードだった。
たまにはそういうのも、悪くないか。
「そうですね。分かりました。今日はゆっくり休むとします」
「ふふ、それがいいわ」
「では自分はこれで失礼します。また明日」
そうメルさんに言い残し俺はギルドから出ていく。
さて、いますぐジニアに帰るのもなんかいやだな。
どこか寄ってから帰るか。
うーん、久々に武器屋にでも寄ってみるか。
ゴリトリスの頭を投げたときに思ったのだが、力が伸びた影響だろうか。結構重いゴリトリスの頭を俺は少しの力で投げることができた。
もしかしたらもっと大きい物も投げれるんじゃないか。
たとえば、大剣とか。MPを使わない遠距離攻撃は持っておいて損はないな。
そう思い俺はデーモンリッパーを買ったときの武器屋に向かう。
道は覚えていたようで、ほんの数分で着くことができた。
そして扉を開け中に入っていく。
中に入ってみると相変わらず綺麗な店だな。
リサの店が少し汚いせいか余計に綺麗に見えてしまう……
すると奥から以前の老人が出てきて、
「いらっしゃい、ん? お前さんたしかデーモンリッパーを買っていった小僧じゃな。無事生きてたようで何よりだわい」
「はは、この武器には世話になってますよ」
「そりゃよかったわい! で? 今日は一体どんな用事できたんじゃ?」
「実は、大剣を大量に買いたいのであるだけ見せてもらってもいいですか?できれば安物を大量に。あ、あと大きめの槍もあるだけお願いします」
俺がそういうと老人は何いってるんだこいつ、みたいな顔で俺を見てくるが、
「ふむ、まぁお前さんがほしいというなら持ってくるが、ちょっとまっとれ」
そして数十分後、俺の前には大量の大剣と槍があった。
「おお、これだけあれば十分ですよ! ありがとうございますおじいさん。全部買わせていただきます」
「一体何に使うのやら、まぁいいわい。これ全部で金貨一枚でどうじゃ?」
安いのか高いのか俺にはいまいちわからないが、ここはこの老人を信用しておくことにしよう。
「はい、それでお願いします」
そして俺は金貨一枚を老人に渡し、無事大量の投擲武器を手に入れた。
とりあえず全部アイテムボックスにしまい込む。
それを見ていた老人は、
「はぁ、本当に魔法というのは便利なもんじゃの」
「そうですね。俺もそう思います。では俺はこれで失礼しますね。ありがとうございました」
そう老人に告げ、俺は武器屋を後にする。
ふむ、いい買い物ができたな。
そろそろジニアに戻るとしますか。
そう思い俺はジニアに向けて歩き出す。
そして数分でジニアに着くことができ、夕食まで時間がまだまだあるということなので俺は部屋に戻り、ベッドでゆったり休んでいた。
やっぱりベッドの中は落ち着きますねぇ。
それから数時間後。
ベッドの中でゆったりしていると、扉をたたく音が聞こえて、
「ユーマさん、起きてますか」
俺の部屋の前にサリーが来ていた。
珍しいと思いつつ、俺はベッドから体を起こし扉を開けにいく。
「どうしたサリー? もう夕食の時間か?」
「いえ、そうじゃないです。今日リサのお店に行ったらユーマさんが大侵攻を止めるために戦ってるって聞いて」
ああ、なるほどね。
たしかにサリーにはあまり心配をかけたくないので言ってなかったな。
「多分私が何を言ってもユーマさんは戦うと思うので、二つだけお願いです。あんまり無茶な事はしないでください。それとちゃんとジニアに帰ってくる事! いいですね」
戦うのを止められると思ったらそうじゃなかった。
しかしサリーが俺を心配してくれているのが物凄く伝わってくる。
ジニアに帰ってくることか。
「ああ、大丈夫だサリー、無茶はしないし、ちゃんとジニアにも帰ってくるよ。ここは俺の家みたいなもんだからな」
俺がそういうとサリーは太陽のような笑顔になり、
「約束ですよ! じゃあ私はいつも通り夕飯の準備してきますのでまた後で」
そう言ってサリーは夕飯の準備に戻っていった。
その後俺はいつも通りにサリーの作った夕食をイグルと楽しく食べ、部屋に戻った。
そしてベッドに横になり、サリーの言葉を思い出す。
誰かにこれだけ心配されたのは初めてかもしれないな。
前の世界じゃ俺の事を心配してくれる人なんて……いや、父さんや母さんは俺の事を心配してくれていたのかもしれない。
それに俺が気づけなかっただけか。
「はぁ、今更後悔しても遅いよな」
せめて、今度こそは後悔しないようにしよう。
サリーや心配してくれている人達を悲しませないように。
絶対に生きてここに帰ってこよう……
そう決心したのだった。
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