第55話 対策
イグルと別れ、ジニアから出てから数分後。
俺は無事にギルドに到着し、扉を開けて中に入っていく。
すると一つの異変に気付く、
なんか、気のせいかもしれないがギルドの空気がいつもより重い気がする。
どうしてだろうか、そう考えていると一つの紙が目に入る。
見たことない紙だな。とりあえず読んでみるとするかね、
{緊急、ギルドより緊急連絡。先日ある情報によりオーガス森林で上位種が複数確認された。これによりギルドはオーガス森林およびストン森林、ゴルド森林の三か所に調査隊を派遣。結果、オーガス森林にさらに複数の上位種が確認された。ストン森林、ゴルド森林は現在調査中。これによりギルドはこの三か所についてしばらくの間ギルドの許可が下りない限り侵入を禁止する事に決定した。}
ほう、どうやらギルドが静かだったのはこれの影響か。
大方この告知を見て大侵攻の前兆だと気づいた者がいたんだろう。
少し聞き耳を立ててみると、
「おい、これって数年前の大侵攻の時と同じじゃねえか!」
「間違いないな。これは近いうちに必ず大侵攻が起きるぞ。オーガス森林だけならまだしも、ストン森林やゴルド森林の魔物まで一斉に攻めてきたらこの街は終わりだ」
「おいおい! 俺は逃げるぞ! 正直この街は気に入ってはいるが命懸けるほどじゃねえ!」
「俺もだ。今この街には最高でもAランクが一人しかいねえんだ。勝てるわけがねえ」
まぁ想像通りだったな。
この街を見捨てて逃げる者も多そうだが、まぁ仕方ないだろう。誰だって自分の命が惜しいんだ。
まぁここで考えていても仕方ないか、とりあえずグレンさんに話を聞こう。
そう思いメルさんに、
「こんにちはメルさん。ギルドマスターに会いに来たんですが今大丈夫でしょうか?」
「ユーマ君こんにちは。ギルドマスターの事なら大丈夫よ。今から案内するから着いてきてね」
そして俺とメルさんはいつもの部屋に向かい歩いていく。
すぐに部屋に着き、
「ギルドマスター、ユーマ君をお連れしました。」
間髪入れずに答えが返ってくる。
「おう、入れ」
俺とメルさんは部屋の中に入っていく。
すると、おそらく今までで一番真剣な顔をしているグレンさんが目にはいる。
自然と俺にも力が入る。
「よく来たユーマ。まぁ楽にしてくれ」
そう言われても、この空気で楽にするのは少しきつい。
「グレンさん。ギルドからの告知を見させてもらいました。やはりあれは大侵攻の前兆だったみたいですね」
「ほう、ユーマはこの街に来て数日だろう? よく大侵攻の事を知っていたな?」
「実はイグルという冒険者に大体の事は聞きました。3つの森から上位種が魔物を率いて攻めてくる事だとか」
「そうか、話が早くて助かるな。それでユーマお前はもし大侵攻が起きたときどうする? ギルドマスターの立場からだと当然残って防衛に加わってほしいが、」
ふむ、おそらくだがこの街に来てまだ数日の俺に街のために命を懸けて戦ってほしいなどは言いにくいのだろう。この人もお人よしだな。
まぁしかし俺の答えはきまっている。
「俺は勿論残りますよ。まだこの街に来てたった数日ですが守りたい人達もできた。その人達を見捨てて一人で逃げる事はしたくないですからね」
グレンさんは俺のその答えに満足しているようだ。
「グレースの言う通りだったな。正直お前に残ってもらえるのはかなり助かる。ありがとな」
そういい俺に向かい頭を下げるグレンさん。
ていうかグレースさんとグレンさんてやっぱり知り合いか。
「じゃあ改めて今の状況を説明するぜ。まず数年前の大侵攻の再現なら上位種が現れてから攻めてくるまで大体1週間前後ってとこだ。その間に防衛のための戦力を整えないといけないわけだが」
1週間前後か、思ったより時間はあるみたいだ。
それくらい余裕があるなら手の打ちようはあるだろう。
「でだ、今グレースが城塞都市ナーシサスに応援を呼びに向かっている。あの街にはAランクのPTやSランクもいるので戦力としては申し分ない。大体戻ってくるまで1週間前後ってとこだろう。まったく、最初にオークキングが出たって聞いたときに警戒してて正解だったぜ」
なるほど、グレースさんが最近ギルドにいなかったのはそういう事か。けどあの人武器ないのに大丈夫なのだろうか。まぁ代わりの武器くらい用意できるか。
「問題はそこまで持つかどうかだが、まぁ攻めてこない事を祈るしかないだろう。もしもの時はいけ好かない奴らだが、魔法学園の連中にも応援を呼びかけないといかんな」
ふむ、じゃあ俺も少しでも大侵攻が起こる可能性を潰しておくとするか。
「グレンさん。オーガスの森で上位種、まぁオークキングか。複数発見されたと告知で見ましたが、実際何体発見されたんですか?」
「ん? ああ、オークキングは全部で6体発見された。腕利きの調査隊より報告された情報だ。おそらく間違いないだろう」
ふむ、6体ね。それくらいなら問題ないな。
「そうですか。それなら、なんとかなりそうですね」
俺がそういうとグレンさんとメルさんは怪訝そうな顔をしている。
「ではグレンさん、俺にオーガスの森に入る許可をください。大侵攻が起きる可能性を少し減らしてきますよ」
俺がそういうとメルさんとグレンさんは俺の言いたい事に気付いたのだろうか、かなりあせった様子で、
「ユーマ! おめえまさか!」
「はい。今現在オーガスの森にいる上位種6体は俺が処分します」
俺の言葉を来たメルさんがものすごい勢いで俺に向かい話かけてくる。
「無茶よユーマ君、たしかにユーマ君は強いわ! それでもオークキング6体なんて自殺行為よ、危なすぎるわ!」
メルさんは今まで見た中で一番必死だ。
おそらく本気で俺を心配してくれているのだろう。
あぁ、やっぱりこの街はなくなっちゃいけない。守らないとな。
「大丈夫ですよメルさん。オークキングは今の俺なら油断でもしない限り負ける相手じゃない。だから心配しないで待っててください」
メルさんはまだ完全には納得してない顔をしているな。
そして今まで口を閉ざしていたグレンさんが、
「ユーマ、本当にできるのか?」
「勿論です。さすがに俺も自分の命は大事なので、できない事はできないって言いますよ」
「そうか、なら俺が言うことは何もねえ。オーガス森林への侵入許可は俺が出しておく。頼んだぞ」
そう言い俺に頭を下げてくるグレンさん。
メルさんも渋々だが納得してくれた様子だ。
「任せておいてください。では俺は早速行ってきます」
そう言い俺は部屋から退出していく。
さて、最初はオーガス森林だ。気合い入れていくか。
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