第54話 3つの森
お、朝か。
昨日、サリーと買い物に行って帰ってきた後、俺は久しぶりにのんびりベッドの中で過ごし、のんびり1日を終えた。
いやぁ、この世界に来てから毎日が戦いの連続だったので、あれだけのんびり過ごしたのは久しぶりだったなぁ~。
飯までベッドで横になり飯を食い、またベッドに横になる。
うーん最高だ。
まぁしかし、いつまでもベッドの中にいるわけにはいかないな。
えーと今日の予定は、昨日のオークキングの事でグレンさんに会いに行くのと、後は久々に依頼でも受けてlevel上げでもするかね。
よし、そうときまれば起きて朝食を食べるとするか!
俺はベッドから体を起こし、かるくストレッチをする。
よし、今日も体調は問題なし、行くか。
朝食をとるために、一階の食堂に向けて歩き出す。
一階に降りてみると、やはり朝早いからだろうか、あまり人の姿は確認できない。しかし、
「よっユーマ! おはようさん」
いつものようにイグルがいた。
こいつはいつも朝早いな、まぁいいか。そう思い俺はイグルの正面の席に腰を下ろす。
「よおイグル、おはよう。いつも思うけどさ、お前って毎日毎日朝早いな」
「お前だって十分朝早いじゃねえかよユーマ! まぁ俺の場合は冒険者っていうのもあるんだろうけど、昔から村の狩りとかで早起きしてたから、そのクセでついつい早起きしちまうんだよ」
「なるほどな」
そんな話をしているうちにサリーが朝食を持ってこちらに向かってくる。気のせいかいつもより顔が赤い。多分だが、昨日の事をまだ引きずっているのだろう。
「イグルさん、ユーマさん! こちら今日の朝食になります! ゆっくりお召し上がりください! でででは私はこれで」
そう言いサリーは料理を置いたら厨房に走り去っていった。
その様子を見ていたイグルが、
「おい、ユーマ。おめえ昨日たしかサリーちゃんとデートだったよな?」
「正確には荷物運びだ」
「まぁそんなことはいいけどよ。いや~おめえがうまくやったようでよかったぜ!この調子でどんどんいっちまえよ!」
「お前が何を言っているかはよくわからんが、朝飯を冷ますのも悪い。そろそろ食べないか?」
「まっそうだな! 食べるとするか!」
数分で朝飯は食べ終わり、
「ああ、うまかった。そういやユーマは今日なにか用事あんの?」
「今日はギルドマスターに呼ばれているのでその用事を済ませた後は、おそらく依頼でも受けるかな。イグルは?」
「俺も今日は依頼だな! 久しぶりにオーガス森林いってオークでも狩ろうかと思ってよ!」
ちなみにオーガス森林というのは、俺がよく行くオークのいる森だ。
しかし今のあの森にイグルが行くのは危険そうだ。
「イグル、いまあの森に行くのはやめておけ」
俺が真面目に忠告しているのがわかったのだろう、イグルも少し真剣な顔になり、
「まぁオーク狩りの専門家のお前がそういうならやめておくことにするぜ!けど一応理由聞いていいか?」
おい、俺はいつからオーク狩りの専門家になったんだよ! まぁたしかにこの世界に来てからオークを狩った数は50を軽く超えるけどさ……
それはともかく、
「実はな、この前あの森で狩りをしていたら、また出たんだよ。オークキングがな。」
俺がそう告げるとイグルは、
「ま、まじかよ。あぶねー、行かなくてよかった」
まぁイグルがオークキングに遭遇してしまったら、まず命はないからな。
「ちなみにギルドでの用事もその事についてだ。だからイグル、しばらくあの森には近づかない方がいい。お前には死んでほしくないからな」
「ああ、まだ死にたくねえからな、絶対近づかねえ事にするぜ。忠告ありがとな!」
そう俺に礼を言った後、イグルは何かを真剣に考え始めた。
なんだろうか、
「どうしたイグル? 何か考えているようだが」
「ああ、少しいやな予感がしてな。俺も詳しくは知らないんだが、昔今と似たような状況があったらしい。上位種が何体も現れて、その結果魔物を率いてこの街に攻めてきたそうだ。一応街は無事だったがかなりの被害を受けたらしい」
「そんな事が……」
「ああ、お前も当然知ってるだろうけどよ、この街の周りには魔物が生息している三つの森があってな」
いや、知らないんだが。まぁ推測するに三つの森の一つはオークのいる森だろう。あと2つはどこだ。
「すまんイグル、一つはオークのいる森だと思うんだが、残り二つの森の事教えてくれ」
「一つはお前も知っているはずだぜ」
俺が、知っている?
「おめえコカトリス討伐の件でストン森林にいったろ?あそこだよ」
ああ、あの森か、すっかり忘れていた。
「なるほど、たしかによく知ってる。でだ、最後のもう一つの森はなんていうんだ?」
「最後はゴルド森林ってとこだ。ちなみにいま言った3つの森の中でここが一番やばい。ここは生息している魔物が平均Cランク以上で、何より以前にここで発見された上位種がやばい」
「どんなやつだったんだ?」
「名前はサイクロプスつってな。図体もめちゃくちゃでかいんだが、やべえのはそいつの力でな。おそらくオークキングが3体いてもサイクロプスには勝てねえ。一応Aランクの魔物なんだが、Sに限りなく近いAランクって呼ばれてる」
「そいつは……やばいな」
「ああ、で、この3つの森の上位種が森の魔物を率いて攻めてきたのが以前にあったのさ。いまでは大侵攻って言われてる事件だ」
なるほどな。そいつは確かに相当危険な事件だ。
おそらくだが、いまこの街に大侵攻に耐える戦力はないだろうな。
「しかしだ、よく前の大侵攻でこの街は壊滅しなかったな。サイクロプスなども攻めてきたんだろう?」
「ああ、魔物が活発になっているってことで注意していたみたいでな。Aランク数名にSランクの冒険者まで来ていたらしい。それでも街はかなり被害を受けたがな」
おいおい、Aランク数名に加えてSランクもいてそれって今回やばいだろ!間違いなくこの街壊滅するぞ!!
「まぁ前回も攻めくるまで相当時間はかかったらしいから、今回もギルドが動くとは思うがな」
「イグル、もしもだ。もしも大侵攻が起きたらお前はどうする?」
俺のその質問にイグルは間髪入れず答えた。
「逃げる! って言いたいとこだけどな。戦うさ。俺はこの街にはもう数年いる。守りたいものもたくさんある。この宿も含めてな。だから逃げるわけにはいかねえ」
「そうか、変な事きいて済まなかったな」
「へっ構わねえよ! でユーマはどうするんだ?逃げるか?戦うか?」
ニヤニヤしながらこいつは質問してくる、答えなど分かっているかのように。
俺もその質問に間髪入れずに答えてやる。
「勿論、戦うさ」
サリーやサリアさんにリサ、それにイグルやグレースさん。
この人達を見捨てることはできない。
それに、大侵攻を事前に防ぐ手段もあるといえばある。
俺のその答えに満足したのか、イグルは笑顔になり
「よっしゃ!じゃあ俺は依頼にでも行ってくるとするぜ。もし大侵攻が起きるとしたらそれまでに少しでも強くなっとかねーとな!」
「俺も出かけるとするよ。またなイグル」
そう言い俺とイグルは別れた。
さて、ギルドに向かうとしよう。
おそらくだが、大侵攻関係の話になるだろうな。
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